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「国立公園Walker」バックナンバー

0532013.09.10UP上高地、色彩の秋から初冬へ

小梨平からの穂高
小梨平からの穂高

 短い夏が過ぎ、上高地では早くも秋の気配が漂い始めています。
 9月も末になると朝の気温は2℃くらいまで下がります。稜線からは初雪の便りが届き始め、紅葉は涸沢や槍沢を通過していよいよ上高地の谷へと下ってきます。ビジターセンター周辺ではオコジョが白い冬毛に変わり、ヒメネズミたちはせわしなく貯食を始めます。
 そんな秋の上高地で、冬の眠りにつく前の自然が見せてくれる色彩の輝きをいくつかご紹介します。

「最後の花たち」

アケボノソウ
アケボノソウ

 秋風の吹く上高地では、シーズン最後の花となるサラシナショウマやノコンギクが遊歩道を飾ります。生命力に満ちてさざめきあう春の花々に対して、これら秋の花は厳しい冬が近づいていることをまるで悟っているかのような静かな佇まいです。この花たちもほどなく結実して小さな種へと変身をとげ、あるものは風にのって飛び、あるものは弾け、またあるものは動物の毛に絡みついて次第に散らばり消えてゆきます。

サラシナショウマ
サラシナショウマ

ノコンギク
ノコンギク

夕暮れの河童橋

夕焼けの河童橋と焼岳
夕焼けの河童橋と焼岳

 すっかり日も短くなった秋のたそがれ時、夕焼けに染まる穂高を眺めに、ひとり、ふたりとどこからともなく河童橋へやってくる人影があります。期待していたような色が出ないまま幕が下りてしまう日もあれば、躍動する雲を真っ赤に染める台風の置き土産を、思いがけず目の当たりにすることもあります。
 夕暮れの上高地は日中の喧騒が嘘のよう。梓川と静かな時間だけが、ただゆっくりと流れてゆきます。

「カラマツの黄葉」

カラマツの黄葉
カラマツの黄葉

 紅く色づく葉の少ない上高地の秋は、紅葉というよりも“黄葉”と表現されます。そのクライマックスともいうべきカラマツの黄葉は、10月の下旬、河童橋周辺で楽しむことができます。色の出方は年によって少しずつ異なりますが、六百山から昇る朝日に照らされた瞬間の黄金色に輝くカラマツは、思わず息をのむほどの眩さです。
 最高の色が見られるのは、わずか1日か2日と言われます。幸運にもたまたまその日の朝に訪れた人だけが目にすることのできる光景です。

「霜の降りた朝」

枯草に咲く氷の花
枯草に咲く氷の花

 氷点下の朝、全てが凍りついた上高地では、氷の花が咲きます。更に?5℃まで下がった無風状態の朝には、枯れたコウシンヤマハッカの根元に不思議な形をした薄氷の羽が付きます。もう見るものは無いと思われがちな季節ですが、白い息を吐きながらゆっくりと歩いてみれば、路傍は夏以上の驚きと感動に満ちています。

凍るヒメゴヨウイチゴ
凍るヒメゴヨウイチゴ

コウシンヤマハッカの“シモバシラ”
コウシンヤマハッカの“シモバシラ”

「穂高の冠雪・冬の訪れ」

奥穂高の冠雪
奥穂高の冠雪

 黄葉の見頃を迎えた上高地に秋の雨が降る時、3000mの稜線はみぞれや雪になっています。そして迎える快晴の翌朝、新雪を頂いた穂高は青空を背に神さびて、昨日までとは全く別の表情を見せます。夏の間その懐に花を咲かせ登山者を遊ばせていた穂高が、容易には人を寄せ付けない冷たい岩の塊に変貌します。
 この穂高を眺めつつ、上高地では閉山に向けての準備が着々と進められます。
 11月15日、河童橋で閉山式を終えると、上高地は来春まで、5か月間の長い眠りにつきます。

初冬の大正池と穂高連峰
初冬の大正池と穂高連峰

上高地マップ
上高地マップ


(自然公園財団上高地支部 元川里美)

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このレポートへの感想

今までに3回ほど訪問しました。どの季節もその季節ならではの上高地を味わうことができてすてきです。
インフォメーションセンターやビジターセンターの人が丁寧に教えてくれて、よかったです。ガイドの案内などもあり、楽しめました。
(2013.09.11)

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バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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