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「国立公園Walker」バックナンバー

0362012.04.24UP春遠し 摩周湖

人寄せつけぬ神秘の湖

雪原の摩周湖
雪原の摩周湖

 北海道川上郡弟子屈町にある摩周湖は、湖面標高351m、周囲は約19.6kmで、最大深度は211mの湖です。「霧」「透明度」「神秘」などでその名が知られていますが、一年を通じて表情は様々に変化します。
 今の季節、4月の摩周湖は氷の上に積雪があり、雪原の風景が広がっています。
 摩周湖は、もともと摩周火山を形成していましたが、今から約7,000年前の激しい大噴火によって噴出した火山灰が根釧原野を広く覆い、摩周カルデラを形成して、摩周岳・カムイシュ島ができ、徐々に水が溜まって現在の姿になりました。湖周辺部は森に囲まれて人為的な影響を受けにくいため、世界でも有数な透明度を誇る湖となりました。
 湖の周囲は標高差130m以上の急峻なカルデラ壁に囲まれ、湖面に至る道もなく、人を寄せつけません。

空気の動きが見えてくる、霧の湖

霧の摩周湖
霧の摩周湖

 150年ほど前に江戸幕府の命を受けた松浦武四郎が摩周湖を訪れていますが、その時「其湖水何れえも落ちる口なして、只千萬古の昔より此の湖に有りて、増しもなさずまた減じもせずかや。実に一奇の名湖と云うべし」と述べています。
 現代の言葉に言い換えると、「湖から出る川もないのに水量は一定であり、実に不思議である」となり、当時から摩周湖の特徴をよく表していたことがわかります。昔の人の観察力に驚かされますが、それほど自然に近い距離間で生活していたことが読み取れます。
 霧はその気象条件によって気まぐれに見えるほどの変化をみせます。霧には「滑昇霧」「移入霧」「放射霧」など種類がありますが、摩周湖展望台は摩周外輪山の尾根にあるため、6?9月には平地より山に向かって空気が上昇する際に発生する滑昇霧の影響を受けます。また、夏の盛りには太平洋高気圧が張り出し釧路沖で冷たい海流に触れて海霧が発して内陸部の摩周湖までたどり着く場合があります。このように霧の様子で空気の動きが視覚化できるのも摩周ならではの楽しみです。

水澄みし湖

 摩周湖の水は透明度が高いことで有名です。国立環境研究所が平成21年度から3年間にわたって、「摩周湖透明度高頻度調査」を行いました。夏場はプランクトン等の影響で透明度が17mほどですが、冬場には30mを超えると記録されています。昭和6年8月に世界最高の透明度41.6mを記録しましたが、現在は25m前後で推移しています。これも自然界の中の許容範囲の変動なのか、それとも人為的な影響に因るものなのかは定かではありません。

全面結氷の湖上にあらわる風紋

霧氷と摩周湖
霧氷と摩周湖

 今年の冬は偏西風が蛇行し、冷たい空気をもたらすオホーツク高気圧が長期間安定的に居座り、結果として4年ぶりの全面結氷が見られました。結氷の過程では、湖岸が凍りはじめて徐々に中央部に向かって氷の面積を広めましたが、北風で氷が全て寄せられたりシャーベット状の氷が融けたり、大きな塊の集団になったりと寒気と水の熱交換の変化が観察できました。2月11日の全面結氷で、はじめは氷の上に雪がうっすらと積もった雪原でしたが、何日かするとその雪が風で飛ばされて透明な氷の上に風紋が姿を現しました。風紋とは風によって氷の上に出来る模様のことで、その時の雪の結晶と風の強さで様々な表情を見せてくれます。透明な氷の上の雪の模様は実に美しいものですが、一年で数日しか見ることができません。
 そして、氷の上に次第に雪が積もって雪原となり、3月は雪原の摩周湖となりました。4月なると日差しはいっそう春めいてきますが湖上は冬の寒さの結晶である氷の世界を残しています。

 摩周湖はこのような成り立ちと地形、外輪山から見る展望、道東特有の気候、何より景観的に人工物がないことが相乗効果として「神秘」という言葉で形容されているように思います。
 摩周湖の一年を見ていると、霧の遊ぶ場所であり、風の変化、緑の香り、極寒の世界へと変化していく様子など、地球規模の自然の変化を体感できる場所であると感じています。

地図
地図

一般財団法人自然公園財団 川湯支部 藤江 晋

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