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「国立公園Walker」バックナンバー

0392012.07.31UP大沼国定公園のもう一つの魅力

 大沼国定公園は、首都圏からわずか2時間(航空機&バス・JR等)で北海道駒ケ岳の勇姿や、幻想的な大沼・小沼・島々の風景を楽しめるほか、クマゲラ、アカショウビン、エゾリス、キタキツネなどの動物たち、スイレン、ジュンサイ、ヤマユリなどの草花をはじめとした多様な生き物に出会うことができ、国内外からの訪問者で賑わいます。
 今回は、一味違う大沼国定公園の魅力や、その楽しみ方等についてご紹介します。

ONUMA MAP大沼・小沼 湖畔遊歩道
[左]ONUMA MAP [右]大沼・小沼 湖畔遊歩道
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日本での2千年紀最大の大噴火

1640年以前の北海道駒ケ岳の形状(想像図)
1640年以前の北海道駒ケ岳の形状
(想像図)

 現在、大沼側から見る北海道駒ケ岳の形状は、左肩上がりの極めて安定した、絵になる形状ですが、かつては、標高約1,700mで富士山の様な形状であったといわれています。
 2千年紀に起きた日本の火山噴火のうち、最大の大噴火が1640年(寛永17年)にここ北海道駒ケ岳で起きました。富士山の様な山体全体が崩壊し、山体の上部が吹き飛ばされ(雲仙普賢岳の約3倍の噴出量)、伊達・室蘭等に面する噴火湾の沿岸地域に大津波をもたらし、剣が峰・砂原岳・隅田盛からなるほぼ現在の駒ケ岳(標高1,131m)が形成されたといわれています。

流山(ながれやま)の誕生

大沼での流山の分布図
大沼での流山の分布図

 同時に、山麓に流れ出した大量の土石流が川をせき止め、大沼・小沼・ジュンサイ沼、そして126の島々のほか、大沼公園駅から東側の平野部等に100近く点在する、おわんを伏せた様な流山(ながれやま)地形ができました。
 流山地形とは、火山活動による大量の噴出物が土石流などで山麓に流れ出てできた、様々な大きさの小山をいいます。
 このように顕著かつ大規模な流山地形は全国的にも極めて珍しく、鳥海山、磐梯山、雲仙普賢岳とここ北海道駒ケ岳でしか見られません。大沼国定公園は、いわば、北国のジオパーク候補地としての新たな顔も有しています。

流山の利用と保全

水田地帯の流山
水田地帯の流山

オオハクチョウと駒ケ岳と流山
オオハクチョウと駒ケ岳と流山

 平野部が少なく湿地帯が多いこの大沼地区では、かつて、流山地形の一部を切り崩して、農地や施設用地などに活用してきました。
 流山の中には、噴火による巨大な岩がゴロゴロ埋まっており、一部は売却したり、生垣や基礎等に活用されました。
 現在は、美味しいお米「ふっくりんこ」の水田地帯やデントコーン畑、牧草地等の農地の狭間に多く点在しています。豊かで美しい大沼の農村景観を形成する、小高い木々が生えた小丘として大切に保存していきたい火山地形です。
 この田園地帯には、オオハクチョウ、アオサギ、ダイサギ、カワセミ等もやってきて、ねぐらにもなっています。

流山と田園風景の観察ルート

流山と田園風景の観察ルート
流山と田園風景の観察ルート

 流山と田園風景を観察するおすすめのルートは、大沼公園駅から5.3kmの区間。徒歩約1時間、自転車ならのんびり走って30分ほどの田園コースです。公園入口にあるJRの陸橋からは駒ケ岳がきれいに見えます。ここから函館方向に渡り、すぐにUターンすると大沼小学校、大沼神社、美味しいお米「ふっくりんこ」の水田地帯の狭間に、小丘の様な流山の地形があります。教会を過ぎて左折すると、野菜直売店、駒ケ岳が綺麗な軍川(いくさがわ)の橋、かやぶき納屋、一本杉、カーネーションの温室等があり、道路突きあたりに牧場と牛たちと水田と駒ケ岳が見えます。ここを左折すると、牧場と流山、デントコーン畑が広がります。白い校舎に赤い屋根の大沼中学校とシンボルの時計塔が駒ケ岳に映えて綺麗です。さらに進み、踏切を左折すると、市街地を抜けて大沼公園駅に戻ります。

首都圏から約2時間の避暑地

東大沼キャンプ場でのカヌー遊び
東大沼キャンプ場でのカヌー遊び

 大沼国定公園は、今年7月にラムサール条約の世界的に重要な湿地に登録され、今後ますます、豊かな自然環境の適正な保全と賢い利用が望まれます。
 他方、名曲「千の風になって」誕生の地として、四季折々の自然の移ろいや、豊かな自然の潜在力を生かした地域づくりも求められています。
 首都圏からわずか2時間で、様々な自然体験ができる場所は多くはありません。
 国定公園には「東大沼キャンプ場」があり、全国からのキャンパーで賑わいます。完全無料、予約不要、ゴミは毎日無料で分別回収してくれます。カヌー体験や、50cmを超える巨大ヘラブナ釣りのメッカとしても大人気です。

癒しの場

大沼湖水祭りの灯篭流し
大沼湖水祭りの灯篭流し

 7月末の大沼湖水祭りには、来訪者のご先祖や先の大震災被災者のご供養なども行う合同慰霊祭や、夜の灯篭流し等も行われます。
 夏休みや春休みなどの長期休みの期間に、大震災で大変辛い思いをしている福島の子どもたちや家族を招いて実施している「ふくしまきっず」の活動も受け入れています。参加者は皆、ここ大沼の大自然に囲まれて、のびのびと心身をリフレッシュしています。

研究活動・ボランティア活動・環境学習の場

 大沼の水を泳げる水質に改善するために、行政機関はもとより各地の研究者や学生・NGO等が、地域住民とともに様々な水質改善の取組みを行っています。
 また、毎年7?9月には、米・英・仏・中・韓・日など世界中の若者たちが、自費で参加するワークキャンプが開催され、多くの若者たちが、地域住民と一緒に大沼の環境改善活動をしたり、大沼神社のお祭りのお神輿を担ぐなど、地域に溶け込み、大沼のパワーをもらって、世界各国にもどって行きます。

各国の若者たちによる外来植物(オオハンゴンソウ)除去
各国の若者たちによる外来植物(オオハンゴンソウ)除去

各国の若者たちによる大沼神社のお神輿かつぎ
各国の若者たちによる大沼神社のお神輿かつぎ

 皆様もぜひ、厳しい節電・節水と猛暑の都会から離れ、涼しい函館よりも更に約5℃涼しい、大沼国定公園に長期滞在してください。とても安くて美味しい大沼の湧水の水道水を飲み、千の風に吹かれながら、ゆっくりとした時間が過ごせます。

一般財団法人 自然公園財団大沼支部 上野 文男

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  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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