「おーい!向こうから煙があがったぞー!」
「よーし!こっちもそろそろ火ば入れよーか!」
「風が出てきたけんが、もっと上からがいいばい!」
草原を守る人たちの声が山に響き、今年も阿蘇に春を告げる「野焼き」の季節を迎えます。
朝の集合時には寒さで鼻を赤くして少し緊張した面持ちも、無事に野焼きを終えると、髪はバサバサ、頬は熱で赤く焼け、服はススで黒くなり、やれやれといった満足そうな笑顔に変わります。
2月下旬から3月の土日を中心に、阿蘇地域全体で約16,000ヘクタール【1】もの広さの野焼きが行われます。
野焼きはたくさんの人手が必要で、命がけの大変な作業です。炎は斜面を走り、風を起こして勢いを増すと、予想もつかない方向に数十メートルも火柱をあげることがあります。全体の指揮をとる人は、天候や風向きをみながらの臨機応変な判断が必要とされます。火を引く人【2】には、地形を熟知し風を読んで火を操り、火引き人同士の「あうんの呼吸」ができる信頼関係も必要です。誰かが速すぎても遅すぎても事故になりかねません。また焼き込んではいけない山林沿いなどには、火消し棒係りや20キロもの水ポンプを背負うジェットシューター係りが配置され、燃え広がりを防ぎます。
阿蘇の人々は昔から草原を利用し、農畜産を生業としてきました。草が青い季節は牛馬を放牧し、秋になると冬支度の草採りが行われます。冬になると牛馬を里の畜舎に連れて帰り、採った草を敷床や餌として利用します。そして春を迎える前に、枯れた草を焼き払うことで新しい草の芽生えを助け、森林化を抑えています。これが野焼きです。こうして人の手で守り継がれた草原は、農畜産業の場としてはもちろんのこと、生物多様性保全の場として、すばらしい景観として、文化を生み出す場としてなど、たくさんの恵みをもたらしてくれます。阿蘇の人々の営みは、草原とともにあるといえるでしょう。
しかし近年、農畜産業の衰退や生活様式の変化などにより、草原の利用が減り、野焼きも人手不足に悩まされています。このままだと、草原は次第に藪(森林)に変わっていってしまいます。
そこで今、阿蘇の草原を応援したい、守りたいという気持ちで、年間約2,000人ものボランティア【3】が熊本県内をはじめ日本全国から集まり、野焼きや防火帯づくり作業に参加し、活躍してくれています。
阿蘇の景観を代表する美しい草原は、多くの人々の労力をかけて維持されています。そこには農畜産を営む人と牛馬の姿があり、たくさんの動植物の命が育まれ、素晴らしい景観に魅了された人々が毎年数多く訪れています。
生命力あふれる早春の阿蘇を、ぜひ楽しみにいらしてください。
((財)自然公園財団 阿蘇支部 村上 渡)
季節を伝える風物詩なのはわかりますが・・・近所では洗濯干しや布団干しをしないのが常識でもちょっと離れれば天気が良い日は布団を干すのが常識です。
もう少し広く告知していただければありがたいと今回感じました。
(2011.03.13)
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