日光東照宮など二社一寺の北に位置し、女峰山や赤薙山の中腹に広がる霧降高原のキスゲ平(栃木県日光市街北方)は、平成25年4月に新しく生まれ変わりました。冬のスキーと初夏のニッコウキスゲのシーズンに活躍し、長年愛されてきたリフトは、老朽化により平成22年度を最後に取り払われ、代わりに歩いてニッコウキスゲを楽しんでもらおうと「天空回廊」という名の1445段にもなる階段が新たに設置されました。天空回廊のスタート地点にはレストハウスと駐車場が整備され、訪れる人の休憩所兼情報収集の場となっています。
新しいキスゲ平のシンボルとなった天空回廊は、直線距離で約750mあります。というとたいしたことはないようですが、新しいレストハウスがある標高約1,350mから小丸山山頂の1,585mまで伸びていて、標高差はなんと! 約240m。途中2回ほど気温が下がるのを感じるくらいです。また、階段の後半はほぼ直登! 中間付近にある避難小屋から見上げる階段ビューは圧巻!一見の価値があります。もちろん登り甲斐もあります。
晴れれば、眼下の景色も最高です。関東平野が一望できますよ!さらに、空気が澄む冬の日や台風が去った後などは遠く東京スカイツリーや富士山、太平洋が見られます。
上がる方はぜひ、終点の小丸山展望台に貼られた合言葉を覚えてきてください。下のレストハウスのカウンターでスタッフに伝えると登頂記念証を発行してくれます。毎月19日(天空の日)に合言葉と記念証のイラストが変わるので、ぜひ季節を変えて挑戦してみてください。4種類集めた方にはちょっとしたご褒美も準備しています。
それでも階段はちょっと…と思った方はご安心を。階段を中心に遊歩道が整備されています。残念ながら、避難小屋の少し上までしかないのですが、花々を横目に見ながらのんびり散策されたい方にはお勧めです。
散策される際は、忘れずに飲み物をお持ちください。平地に比べて標高が高い分涼しいのですが、木陰が少なく、太陽にも近いため晴れるとジリジリと暑いです。
霧降高原といえば、ニッコウキスゲ。リフトに乗って眼下に眺めた経験のある人は多いのではないでしょうか。これからは、歩きながら間近に見られるわけですが、今年もこのシーズンがやってきました。5月から始まったツツジの開花リレーのバトンを受けて、6月中旬から咲き始めています。6月下旬から7月10日前後にかけて見頃を迎え、キスゲ平を黄色に染めます。詳しい開花状況は、日光市霧降高原キスゲ平園地のHPやFacebookで確認してみてくださいね。期間中の土日は、とても混雑します。 昨年は、キスゲ平に近い駐車場3ヶ所が朝9時頃には満車になるほどでした。平日や時間帯をずらしていらっしゃれれば、ゆっくり自分のペースで見られると思います。
霧降高原のニッコウキスゲは、最盛期には40万株あったと言われています。一時期シカの食害で激減しましたが、現在は24万株まで回復しています。昔に比べるとだいぶ少なくなったという声も聞かれますが、シカ防護柵の設置や地元の方々の定期的な補植により、今でも群生地として訪れる人の目を楽しませています。
ニッコウキスゲ以外の印象をあまり聞かないキスゲ平ですが、今まで話題に上らなかったのが不思議なくらいにたくさんの花々が春から秋にかけて咲き乱れます。ニッコウキスゲと一緒に見られるのは、糸のように繊細な白い花のカラマツソウです。ニッコウキスゲに負けないくらいたくさん咲いています。花以外にも草原性のチョウやアキアカネが花の上を舞う姿が見られます。ニッコウキスゲの見頃過ぎに来てしまってもそのまま帰らずにぜひ園内を散策してみてください。ピンク色のシモツケやシモツケソウ、クガイソウやコバギボウシ、ヨツバヒヨドリなど様々な色の花が咲き始めているはずです。
文:(一財)自然公園財団 本部業務課 田中 愛
写真提供:日光支部(霧降高原) 飯村 孝文
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