栃木県日光市馬返から中禅寺湖畔まで48のカーブがつづら折りに連なる「いろは坂」(国道120号線)をのぼって、竜頭ノ滝や戦場ヶ原を越えた奥の奥、標高約1,485mの高原に奥日光湯元はあります。湯元の冬というと、紅葉が終わった後一気に冷え込み、日光白根山からの「ふっかけ」【1】で気温は日中でもマイナスが当たり前、路面は凍結…と、楽しむには厳しい状況なのでは? と思いがちですが、そんな湯元が一番熱くなる季節が「冬」なのです! 特に雪が降り積もった後は、湯元では様々な冬の楽しみ方が待っています。
奥日光の冬で特徴的なのがなんといっても、さらさらのパウダースノー(粉雪)。その柔らかさは雪合戦をしようとしても、投げている途中で雪玉が壊れてしまうほど。気温が低く、空気が乾燥している環境だからこそ体感できるものなのです。
そんな中で、この時期おすすめなのがスノーシューハイキング【2】。膝上まで埋まってしまう雪も、スノーシューがあれば大丈夫。歩いたり、走ったり、飛び跳ねたり、滑ったり…。スノーシューを履けば雪の上でも自由自在に野外活動を楽しめます。転んでもパウダースノーの上では痛くありません。森の中ではしんしんと降る雪や風で揺れる木々がふだんは耳にすることのない新鮮な音を響かせます。他の季節とはまた違った情景や体験ができ、ちょっとした冒険に来た気分に浸れます。
また、凍った上に薄く雪がかかって真っ白になる湯ノ湖の情景も見られます。凍った湖の上を歩くカモの姿や、雪が積もってまるで花が咲いているように見える樹氷など、歩いている中でちょっと不思議な光景も見つかりますよ。
鮮やかな花々、鳥のさえずり、虫の音など、多くの生きものたちで賑やかだった夏とは打って変わって、雪が降ると生きものたちの多くは休息時期に入ります。しかし、よく見ると雪上に残る動物たちの足跡や木の実の食べ痕(食痕:しょっこん)など多くの痕跡から、夏にはわからなかった生きものたちの生活や行動を知ることができます。そんな冬ならではの生きものたちの観察方法・冬の自然散策の楽しみ方が、アニマル・トラッキングです!
雪が降ると、他の季節には残りにくい痕跡が鮮明に残ります。足跡の方向を見て辿っていくと、冬の森で生きものたちがどんな生活や行動をしているかがわかります。
湯元周辺でアニマル・トラッキングをするのにおすすめの場所は湯元温泉街の一番端から少し先にある「金精の森」。ここでは毎年、ウサギやテン、キツネ、タヌキ、リス、そしてヤマドリ…など様々な生きものの足跡が見られます。針葉樹に囲まれた森の中で足跡だけでなく、リスが隠した木の実や糞などもよく探すと発見できます。アップダウンも急ではなく、緩やかな坂道ですから、雪の中をゆったり活動したい方にはおすすめです。途中の道では植物の冬芽やセッケイカワゲラ【3】等、冬特有の自然に出会えることもあります。
奥日光湯元では、12月1日?平成25年3月31日まで雪まつりを開催しています。雪まつりの夜景は、2011年に日本夜景遺産【4】に認定されました。1月には氷の彫刻、2月には小さなかまくらが並ぶ中に灯りがともる「雪灯里」、期間を通して実施される湯元温泉湯巡りスタンプラリーなど、様々なイベントが催されています。 詳しくは奥日光湯元温泉旅館協同組合をご覧ください。
スノーシューハイキングで身体を動かして熱くなった後は、ゆっくり温泉に入るのもよし、雪で作られた夜景を楽しむのもよし。ぜひ奥日光湯元の「雪」を五感を使って楽しんで下さい。
(自然公園財団日光支部 石井綾)
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