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「国立公園Walker」バックナンバー

0352012.03.21UP歩いて楽しむ雪の八幡平

山頂部の樹氷ツアー

山頂付近の樹氷原から岩手山
山頂付近の樹氷原から岩手山

神秘的な様相の八幡平樹氷原
神秘的な様相の八幡平樹氷原

 秋田県と岩手県の県境にある八幡平は、広大なエリアにブナとアオモリトドマツを主体とする自然林が広がり、雪解け水をたたえる湿原や湖沼が点在しています。また、いまでも火山活動が活発なので、噴気、噴湯、泥火山などさまざまな火山現象が見られ、その恩恵で温泉を楽しむことができます。
 春から夏まで、新緑や紅葉そして身近に咲く高山植物を見にたくさんの人が訪れますが、観光道路であるアスピーテラインが冬季閉鎖(11月?4月)になってからは、歩いてしか山頂に行けなくなります。
 山麓にあるスキー場からスキーをはいて3?4時間歩くと、山頂部に広がる樹氷原に着きます。ここは、体力と気力を備えた人だけが見ることのできる銀世界です。
 日本百名山を著した深田久弥は、「蔵王や八幡平の樹氷群の…(中略)…魂を揺さぶるような景観に接することなく一生を終える人こそ不幸なるかな」と述べています。晴れた日に、純白の斜面の中に林立する樹氷を見ることができれば、その神秘的な美しさに感動すること間違いありません。
 樹氷(アイスモンスター)は、日本海を渡って水分を含んだ空気が、山越え時に急激に冷やされ、過冷却となった水分がアオモリトドマツの葉につき、成長してできるもので、日本海側の、標高1,000?1,500mに分布するアオモリトドマツ林帯でしか見られない、地域限定、期間限定の稀少な自然現象です。
 蔵王や八幡平のほか、八甲田山や吾妻山も有名ですが、八幡平の樹氷の特色は、湿原や湖沼など多様な地形に加えて、風の影響によってアオモリトドマツが大小さまざまであることから、非常に変化に富んだ樹氷原となっていることです。
 冬の八幡平は、魅力たっぷりの銀世界ですが、天候が悪いときは白一色の世界になるので、ルート選定に経験が必要です。初めての方は、案内人と一緒に行くことをおすすめします。
 地元の鹿角山岳会で毎年2月下旬に樹氷ツアーを企画しているので、それに参加すれば、初めての方でも樹氷原を見ることができる可能性が高いでしょう。

大沼・後生掛周辺のスノーシューツアー

 体力や装備の面で、山頂まで行くことは無理という方におすすめなのが、山麓の標高1,000m付近にある大沼や、後生掛火山噴気地帯を巡るスノーシューツアーです。
 大沼周辺では、雪の時期にしか歩けない湿原や林のなかを自由に歩くことができ、ブナやキタゴヨウマツの巨木とも出会えます。冬の厳しい寒さを克服する植物たちの越冬の様子や、ウサギやカモシカ、テンなどの動物たちの足跡も見ることができます。さらに、昨秋、クマが冬眠に備えて食い溜めした跡であるクマ棚もたくさん目撃することができ、雪の中での豊かな動植物の営みが体感できます。
 後生掛の火山噴気地帯を巡るコースでは、積雪と地熱が作り出す独特の凹凸地形が見られ、日本一の泥火山も間近に見ることができます。気温が低いこの時期は噴気も活発で、雪と火山活動のせめぎ合いが独特の雰囲気をつくり出しています。運が良ければ、青空の下で綺麗に輝く霧氷【1】が迎えてくれるでしょう。雪の中を歩いてから入る温泉は、さらに心身とも温まります。

雪の林内をスノーシューで歩く
雪の林内をスノーシューで歩く

後生掛の火山噴気地帯にある泥火山
後生掛の火山噴気地帯にある泥火山

 ただし、積雪・噴気地帯では、ルートを外れると危険なので、ルートをわかっている人に案内してもらうことをおすすめします。
 自然公園財団八幡平支部では、1月?3月にスノーシューで歩くガイドウォークを毎週1?2回計画しており、団体での申し込みには随時応じています。コースや日程については、自然公園財団八幡平支部のブログ(アスピーテ日誌)を参照して下さい。

冬季八幡平大沼周辺MAP
冬季八幡平大沼周辺MAP(クリックするとPDFファイルが開きます)

(一財)自然公園財団八幡平支部 所長 岡野 治

脚注

【1】霧氷
 氷点下の環境で、空気中の水分が樹木などに付着して凍結もしくは昇華してできる氷の層のこと。樹木に半透明?白色の氷層が付着してできる樹氷や、強風時に風上側に形成される「エビの尻尾」などが霧氷の代表例。

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  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
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  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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