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「国立公園Walker」バックナンバー

0272011.07.12UP雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖

十和田の自然と景観

 十和田湖は、青森県と秋田県の境にある本州最北端の山上湖で、一帯は十和田八幡平国立公園内に含まれます。
 夏の楽しみはたくさんありますが、写真や自然現象に興味がある人にとっては、「雲海」と「夕景」がお勧めです。

雲海

発荷峠の雲海
発荷峠の雲海

 青森の奥入瀬渓流方面から旧道を通り、瞰湖台(かんこだい)を上り詰めるか、秋田方面から発荷峠(はっかとうげ)を上り詰めると、十和田湖を一望にできます。ところが、5月から7月の朝7時頃に眺める視線の先は、湖一帯を霧が覆って湖面が見えません。この霧が、「雲海」です。
 十和田湖は、火山活動で形成されたカルデラ湖なので、湖のまわりが山の尾根に囲まれています。湖面の標高が400メートルなのに対し、外輪山の標高は600?1,000メートル。この標高差により、放射冷却【1】で蒸発した湖の水が外輪山に当たって霧となって溜まり、雲海となります。陽が昇り暖かくなる10時頃には消えてしまう、儚い命の自然現象です。

 展望台から眺める雲海は周辺を幻想的に変えてくれますが、湖面に下りると霧の中で何も見えなくなってしまいます。遊覧船運行会社は濃霧の中、船を出そうにも出せず困ってしまいます。船を出したところで、景色が見えないのでは乗る人がいません。
 朝のうちに遊覧船に乗って次の目的地に向かおうとする旅行者にとって、雲海は行く手を阻む邪魔者になります。

夕景

 もうひとつの楽しみ「夕景」は、休屋(やすみや)と宇樽部(うたるべ)の間にある「瞰湖台展望台」がベストです。御倉・中山の2つの半島に囲まれた湖の最深部の「中の湖」を黄金色に染めて、夕陽が外輪山の向こう側に落ちていきます。運がよければ、空も赤や紫に変わっていきます。

 十和田湖の帰りに、東北自動車道十和田インターに向かうなら、夕刻の「発荷峠」もチャンスです。空が赤くなりそうなら少し道草して缶コーヒーでも飲みながら待っていれば、茜色から漆黒に変わる湖と空の色彩ショーを楽しむことができます。

瞰湖台の夕日
瞰湖台の夕日

発荷峠展望台から望む夕焼け
発荷峠展望台から望む夕焼け

朝日

白雲亭から望む朝焼け
白雲亭から望む朝焼け

 あなたが早起き自慢なら、もうひとつのオプション「白雲亭の朝日」があります。発荷峠から小坂に向かう樹海ライン「鉛山峠園地駐車場」から、登山道を徒歩で登っていきます。500メートルほど進むと「鉛山峠」の標柱があり、そこから約30分歩きます。夜明け前なので、懐中電灯またはヘッドライトが必要です。
 朝日が昇ると、十和田湖の西湖の上に中山半島、中の湖、御倉半島が重なって、照らされます。「朝焼け」になるかどうかは、もちろんその時の天気とあなたの運次第です。

 以上、十和田湖の夏の楽しみを挙げましたが、一回の訪問で叶う訳ではなく、写真愛好家たちは、車中泊しながらシャッターチャンスをものにしようと通い続けています。
 皆さんも、ぜひ足を運んでみてください。
 通常、十和田湖の夏はクーラーがいりませんが、昨年の夏はこれまでになく長く暑い夏で気温30℃を超える日もあり、日中はクーラーが活躍しました。暑さ対策はしっかり忘れずに、お越しください!

十和田湖と展望台
十和田湖と展望台

(一般財団法人自然公園財団 十和田支部 工藤政弘)

脚注

【1】放射冷却
 日中に太陽熱を受けて上昇した地表温度が、夜間に大気に向けて熱放射して地表面の温度を低下する現象。
 山や丘に囲まれた盆地などでは、低地に冷気が溜まることで放射冷却が強くなる。

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バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
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  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
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  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
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  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
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  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
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  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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