十和田湖は、青森県と秋田県の境にある本州最北端の山上湖で、一帯は十和田八幡平国立公園内に含まれます。
夏の楽しみはたくさんありますが、写真や自然現象に興味がある人にとっては、「雲海」と「夕景」がお勧めです。
青森の奥入瀬渓流方面から旧道を通り、瞰湖台(かんこだい)を上り詰めるか、秋田方面から発荷峠(はっかとうげ)を上り詰めると、十和田湖を一望にできます。ところが、5月から7月の朝7時頃に眺める視線の先は、湖一帯を霧が覆って湖面が見えません。この霧が、「雲海」です。
十和田湖は、火山活動で形成されたカルデラ湖なので、湖のまわりが山の尾根に囲まれています。湖面の標高が400メートルなのに対し、外輪山の標高は600?1,000メートル。この標高差により、放射冷却【1】で蒸発した湖の水が外輪山に当たって霧となって溜まり、雲海となります。陽が昇り暖かくなる10時頃には消えてしまう、儚い命の自然現象です。
展望台から眺める雲海は周辺を幻想的に変えてくれますが、湖面に下りると霧の中で何も見えなくなってしまいます。遊覧船運行会社は濃霧の中、船を出そうにも出せず困ってしまいます。船を出したところで、景色が見えないのでは乗る人がいません。
朝のうちに遊覧船に乗って次の目的地に向かおうとする旅行者にとって、雲海は行く手を阻む邪魔者になります。
もうひとつの楽しみ「夕景」は、休屋(やすみや)と宇樽部(うたるべ)の間にある「瞰湖台展望台」がベストです。御倉・中山の2つの半島に囲まれた湖の最深部の「中の湖」を黄金色に染めて、夕陽が外輪山の向こう側に落ちていきます。運がよければ、空も赤や紫に変わっていきます。
十和田湖の帰りに、東北自動車道十和田インターに向かうなら、夕刻の「発荷峠」もチャンスです。空が赤くなりそうなら少し道草して缶コーヒーでも飲みながら待っていれば、茜色から漆黒に変わる湖と空の色彩ショーを楽しむことができます。
あなたが早起き自慢なら、もうひとつのオプション「白雲亭の朝日」があります。発荷峠から小坂に向かう樹海ライン「鉛山峠園地駐車場」から、登山道を徒歩で登っていきます。500メートルほど進むと「鉛山峠」の標柱があり、そこから約30分歩きます。夜明け前なので、懐中電灯またはヘッドライトが必要です。
朝日が昇ると、十和田湖の西湖の上に中山半島、中の湖、御倉半島が重なって、照らされます。「朝焼け」になるかどうかは、もちろんその時の天気とあなたの運次第です。
以上、十和田湖の夏の楽しみを挙げましたが、一回の訪問で叶う訳ではなく、写真愛好家たちは、車中泊しながらシャッターチャンスをものにしようと通い続けています。
皆さんも、ぜひ足を運んでみてください。
通常、十和田湖の夏はクーラーがいりませんが、昨年の夏はこれまでになく長く暑い夏で気温30℃を超える日もあり、日中はクーラーが活躍しました。暑さ対策はしっかり忘れずに、お越しください!
(一般財団法人自然公園財団 十和田支部 工藤政弘)
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