国立公園雲仙は、火山活動でできた長崎県島原半島の中央部に位置しています。約12,800haの公園区域には、海抜1,000m級の普賢岳、国見岳、妙見岳、九千部(くせんぶ)岳、野岳の山々や、周辺の温泉街、湖沼があり、四季折々、美しい自然を見せてくれます。とりわけ秋の雲仙は、草花や紅葉などが美しく、山々を巡り、森を散策するのが楽しくなる季節です。
9月の半ば、雲仙の山々を巡る自然歩道沿いには、秋を知らせる草花たちが次々と咲き始めます。温泉街周辺の歩道では、キッコウハグマやミヤマウズラ、ツルリンドウが、標高の幾分高い「池の原」に行くと、白いウメバチソウやアキノタムラソウ、キンミズヒキ、オオバショウマなど様々な花が楽しめます。
温泉地・地獄地帯に隣接する矢岳歩道沿いではツルニンジンの風変わりな花が見られ、仁田峠から野岳歩道への道沿いにはゲンノショウコやガンクビソウ、ツクシアザミ、ミズヒキなどが開花。仁田峠からアザミ谷への自然歩道沿いにはヒヨドリバナや、アキノキリンソウ、ヤマシロギク、オオバショウマ、ミツバグサ、アキチョウジ、コフウロなどの草花がにぎやかに咲いています。あざみ谷から普賢岳へは約1時間。森のなかには、オオバショウマやモミジガサ、ウンゼントリカブト、ダイモンジソウ、花期を終えたホソバシュロソウも見られます。山頂には、ダイモンジソウやフクオウソウ、またツクシミカエリソウの群落が厳しい環境の中で開花します。
雲仙には、秋の草花を楽しみにたくさんの人が登山や自然散策に訪れ、この季節、「お山の情報館」にはカメラ等を持ち込んで、草花の名前を尋ねる来館者が多くなります。
標高1,359mの普賢岳や周辺の国見岳(1,347m)、妙見岳(1,330m)一帯の落葉広葉樹林帯(夏緑樹林)の紅葉は見事で、例年、多くの公園利用者を楽しませてくれます。この一帯は、優れた紅葉景観として国の天然記念物「普賢岳紅葉樹林」に指定されています。
植生の主体はコハウチワカエデ?ケクロモジ群落、コハウチワカエデ、コミネカエデ、イタヤカエデ、イロハモミジ、ウリハダカエデ、オニモミジ、アズキナシ、シロドウダンなどで、10月下旬から11月初めにかけて山全域が紅葉します。
雲仙の紅葉の特徴は、真っ赤なシロドウダンや黄色のカエデ類が織りなす紅葉が山腹に点在する常緑樹ヤマグルマの深緑と相まって、山肌を染めあげていく色彩豊かな景観です。
おすすめの紅葉探勝ルートは、「池の原」から周囲の紅葉を楽しんで仁田峠に向かい、さらに妙見岳の急な斜面を紅葉と眼下の風景を楽しみながら登るルートです。仁田からロープウェイを使って一気に妙見岳まで上ることもできます。ロープウェイから眺める眼下の紅葉は絶景です。
妙見岳から尾根伝いに妙見カルデラを進み、吹越への分岐、国見岳への分岐をやり過ごし、歩道を下ると、国見岳直下の山腹から鬼人谷(きじんだに)にかけての見事な紅葉を楽しむことができます。鬼人谷を見渡す谷から紅葉茶屋一帯は、その昔から紅葉狩りが楽しまれていた場所です。
紅葉茶屋からあざみ谷を経て仁田峠までは、紅葉した森の中を歩く心落ち着く区間で、所要時間は約50分です。
もうひとつ紅葉探勝のおすすめは、温泉街にほど近い「白雲の池」です。温泉街から自然歩道を歩いて約15分。11月初旬、池の周辺の樹々が色づきはじめ、紅葉した樹々と湖面に映る紅葉、遠くに妙見岳や普賢岳、平成新山を望む風景は格別で、雲仙を訪れる人々の散策コースとして親しまれており、スケッチや写真撮影の人気スポットでもあります。
国立公園雲仙の秋は、9月半ばの草花の開花に始まり、紅葉しはじめた山々が日ごとに標高を下げていき、11月初旬に温泉街周辺の森が紅葉する頃まで続きます。
((財)自然公園財団 雲仙支部 所長 君野昌二)
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