標高が約1400mもある奥日光・戦場ヶ原では、ゴールデンウィークが終わる頃ようやく春の訪れを感じられるようになります。それまでは落葉して殺風景だった風景の中に、芽吹いたばかりのカラマツの緑が目立つようになり、少しピンクがかったオオヤマザクラが咲きはじめます。6月が近づいてくると、遊歩道沿いに並ぶズミのピンク色の蕾が膨らみはじめ、戦場ヶ原は少しずつにぎやかな季節になってきます。
奥日光は、春夏秋冬で四季折々に素晴らしい魅力がありますが、やはり生き物たちが活発に活動を始めるこの季節は散策していても自然とワクワクする気持ちが湧いてくるものです。そこで今回は、気分も軽やかになる新緑の戦場ヶ原の見どころを紹介させていただきます。
新緑の中を歩くだけでも気持ち良いものですが、じつはこの時期の戦場ヶ原はほかの季節よりもちょっとお得な体験ができます。何がお得なのかというと…「いつもより観察できる野鳥の種類が多い」のです。
日本三大探鳥地の一つに数えられている戦場ヶ原ですが、この時期は、これから旅立つ冬鳥とやっと到着したばかりの夏鳥をどちらも楽しむことができます。代表的な冬鳥としては、キレンジャク・ヒレンジャクなどが挙げられます。彼らは群れでいることが多く、集団で枝にとまって一生懸命に木の実を食べている様子がなんとも愛らしいものです。
また、南方から渡ってくる夏鳥としては、オオジシギ・キビタキ・オオルリ
などが挙げられます。特に、オオジシギは一度見たら忘れられないくらい印象に残る鳥です。別名である『雷シギ』の名のとおり、鳴きながら飛びまわり「バリバリバリ」と大きな音を立てながら急降下するディスプレイフライトをする姿は一見の価値があります。
暖かくなると、水辺の生き物たちも活発に動き始めます。
その中で戦場ヶ原の春の風物詩としてはずすことができないのが、アズマヒキガエルたちの『ガマ合戦』です。湿原の中にできた池には、どこからともなく集まってきたヒキガエルたちがひしめき合います。最盛期には、踏んでしまいそうなくらいのヒキガエルたちが、パートナーを探し、交尾を行います。普段は静かな湿原が、短期間にとてもにぎやかになり、「合戦」と呼ぶのにふさわしい光景を見せてくれます。「戦場」ヶ原でのヒキガエルたちの「合戦」も、この時期にしか出会うことができません。
さて、新緑の奥日光・戦場ヶ原の見どころを紹介してきましたが、最後に私(みつ)のオススメする散策プランをご紹介させていただきます。
清少納言の『枕草子』の冒頭に「春はあけぼの?」とありますが、新緑が芽吹き、春めいてきた奥日光を散策する際も、日の出頃からの行動がオススメです。頑張って早起きをしたら、戦場ヶ原・赤沼入口を出発し、自然研究路を抜けて、泉門池を目指します。散策コースとしてはスタンダードな自然研究路ですが、早朝に歩くとひんやりとした空気の中、霜柱が立っていたり、日によっては朝霧が薄くかかっていたりして日中とは違う雰囲気を楽しむことができます。また、早朝は鳥たちも活発に行動する時間帯なので、野鳥観察にも最適ですね。
泉門池でひと休みしたら、湯川沿いに湯滝へ進み、湯ノ湖を横目に湯元温泉まで歩きます。
所要時間は、自然散策をしながらゆっくり歩いて5時間ほど。朝6時に出発すると、ちょうどお昼前に到着できる計算になります。
たくさん歩いたあと、風にあたりながら湯ノ湖の湖畔ベンチでお弁当を食べるのはとても気持ち良いでしょう。そのあと、歩いてすぐの日光湯元ビジターセンターへ立ち寄っていただければ、途中で出会った生き物たちのことを復習できますし、カウンターではスタッフから生き物に関する面白い話が聞けるかもしれません!?
ぜひ、『今だけ』にたくさん出会える新緑の奥日光・戦場ヶ原へ遊びに来てくださいね。
(一財)自然公園財団 日光支部 「みつ」こと、緒方 光明
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