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「国立公園Walker」バックナンバー

0502013.06.18UP火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原

日本初の国立公園がある地

 鹿児島県にある霧島錦江湾国立公園は、平成24年3月16日に霧島屋久国立公園から屋久島地域が分離独立して今の名前に変更されました。日本で初めての国立公園の一つであり、来年の3月16日に80周年を迎えます。
 高千穂河原はその国立公園の中にある谷間の小平地です。標高970mには高千穂河原ビジターセンターがあり、そこを基地に高千穂の峰への登山、霧島神宮の森や中岳探勝路の散策、昔の霧島神宮の跡地である古宮跡への参拝など、毎年多くの登山者・観光客が訪れています。

新燃岳の噴火

 平成23年3月に新燃岳が300年ぶりの大噴火をしてから、2年4カ月が過ぎようとしています。この時、数日間で軽石や火山灰数千万トンが地上に降りました。もちろん、高千穂河原もその被害を受け、当時は辺り一面に噴出物が6cm以上積りました。そして今もまだ、登山道や森の散策路にはそれらの噴出物が残り、歩く者の行く手を鈍らせ、動植物たちの生活に影響を与えています。

2年前、一面灰色の世界となった高千穂河原
2年前、一面灰色の世界となった高千穂河原

6cmも降り積もった軽石や火山灰
6cmも降り積もった軽石や火山灰


中岳中腹探勝路のミヤマキリシマ
中岳中腹探勝路のミヤマキリシマ

 しかし、そんな環境下でも、たくましく生き続ける植物たち。その中でもちょうど5月の中旬が見頃となったミヤマキリシマに、今回はスポットライトを当ててみました。

中岳中腹探勝路の解放

中岳中腹探勝路入口に立て付けられている看板
中岳中腹探勝路入口に立て付けられている看板

 新燃岳の噴火以降、ずっと立入禁止となっていた中岳には、今年(平成25年)の4月27日から入山できるようになりました。しかし、入れるのは中腹まで。新燃岳の火口から2km以内は今も立ち入りが禁止されています。
 中岳中腹の探勝路周辺では大量の噴石やガス等により樹木が倒れ、登山道が崩壊・埋没しています。その影響はミヤマキリシマも例外ではありません。

中岳中腹解放日の様子
中岳中腹解放日の様子

中岳から望む高千穂の峰
中岳から望む高千穂の峰

ミヤマキリシマとは

 【ミヤマキリシマ】(つつじ科)
 半常緑の低木で、花は淡紅紫色を中心に微妙な色合いの違いがあり、白花もあります。幅5?長さ15?ほどと葉が小さいのが特徴です。葉の先端に3?5個の花を咲かせます。おしべは5本持っています。
 九州の、雲仙や阿蘇や久住や霧島の山々に生息します。どれも1,000m級の高山で、火山礫(溶岩などの破片)に覆われ 、しかも強風にさらされるという厳しい環境下です。しかしミヤマキリシマはそんな住みにくい場所にあえて生育する植物です。むしろ、そうした環境下だからこそ、自分たちの生育スペースを確保し、生き残ってこられたのかもしれません。
(参考:霧島の花ごよみ・霧島の花 南日本新聞社)

御鉢山腹のミヤマキリシマ
御鉢山腹のミヤマキリシマ

綺麗なピンク色である
綺麗なピンク色である

逆境の中でも咲き誇るミヤマキリシマ

 ミヤマキリシマの名言で、『逆境は人も育てるが、名花も育てる』 というものがあります。
 言葉の通り、ミヤマキリシマは噴火による被害も乗り越え、今年、高千穂河原周辺をピンク色に染めてくれました。特に御鉢の山肌に咲き誇ったものは、今までの歴史の中で、今年が一番素晴らしいのではないかと言われています。

駐車場からみた御鉢のミヤマキリシマ
駐車場からみた御鉢のミヤマキリシマ

新燃岳噴火後の、駐車場脇の枯れたミヤマキリシマ
新燃岳噴火後の、駐車場脇の枯れたミヤマキリシマ

 植物は人のように住む場所を変えることはできません。根付いた場所に辛抱強く住み続けるしかないのです。そしてただ一心に綺麗な花を咲かせます。ミヤマキリシマのたくましさを私たちも見習いたいと感じました。

ミヤマキリシマの上の部分は枯れてしまっている
ミヤマキリシマの上の部分は枯れてしまっている

中岳中腹探勝路の様子
中岳中腹探勝路の様子


高千穂河原周辺案内図
高千穂河原周辺案内図

 ですが、やはり噴火による影響で枯れてしまっている部分もあり、噴火前と同じ様な姿、完全復活にはまだ至っていません。

 これから先もミヤマキリシマはどんなふうに逆境を乗り越えていくのか、どんな成長を見せてくれるのか、その様子を見ていくのも楽しみです。それは、他の植生にも言えます。そんな様子を見られるのも噴火の被害にあった高千穂河原だからこそ! 噴火は恐ろしいものですが、貴重なものを私たちに残してくれました。
 来年、再来年と、高千穂河原は今年とはまた違う顔を私たちに見せてくれるでしょう。

ミヤマキリシマと高千穂の峰
ミヤマキリシマと高千穂の峰

(自然公園財団 高千穂河原支部 田村理江)

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  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
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  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
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  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
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  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
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  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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