メインコンテンツ ここから

「国立公園Walker」バックナンバー

0012009.06.01UP新緑の上高地-花々との競演-

近代登山発祥の地

ニリンソウ
ニリンソウ

 日本を代表する山々の風景が広がる上高地は、中部山岳国立公園の南部に位置します。
 清流梓川の変化に富んだ流れと穂高連峰を始め急峻な山々に抱かれた景色が最大の魅力です。日本に近代登山を伝えたウォルター・ウェストンが明治時代に訪れ、上高地の素晴らしさを広く伝えたことで、近代登山発祥の地としても知られています。
 長い冬の眠りから覚めた4月の終わり、新緑は川辺から始まり、やがて山あいの平坦部、そして山の斜面を上っていきます。雪解けをまち、何種類もの植物がいっせいに花を咲かせます。一年のうちで最も美しく躍動感に満ちあふれる季節です。ここではケショウヤナギとニリンソウを紹介しましょう。

氷河時代から生き続ける貴重なヤナギ

河童橋とケショウヤナギ新緑
河童橋とケショウヤナギ新緑

 上高地の新緑を代表する木がケショウヤナギです。氷河期には広く分布していた種ですが、現在、日本では北海道の一部と、ここ梓川の流域など限られた地域にしか残っていない珍しい種です。若い木の幹や枝が白くおしろいで化粧をしたように見えることからその名がつきました。大木になると枝の先端で多数枝分かれし、こんもりとした樹形を作ります。上高地では、田代橋(上高地のシンボル河童橋から徒歩20分ほど)から上流に分布し、川辺では成長した群落、中洲では若い群落を見ることができます。
 河童橋の両側にある大木のケショウヤナギは、5月上旬に芽吹き、梓川の碧い流れ、残雪の穂高連峰を望む景観をより美しくしています。新緑の時期、雪解けで水量豊富な梓川の中ほどで孤立した大木のケショウヤナギが、流れにさらされ打ち勝つようすは、まさに氷河期の生き残り、生命力の強さを感じます。

森の白い妖精を見つけに行こう

古池のニリンソウ群落
古池のニリンソウ群落

 河童橋から小梨平キャンプ場を通り明神へ向けて、新緑の林の中を自然と対話しながら歩いてみましょう。ときには立ち止まり耳をかたむけ、ときにはしゃがみこみ、じっくりと見てみると、今まで気がつかなかった発見や出会いがまっているでしょう。
 のんびりと歩くこと60分、ニリンソウの群落に出会います。白色のきれいな花が二輪咲くのでニリンソウです。よく見ると三輪、四輪と花を付けたり、花びら(実はがく片)も5枚や7枚、9枚のものまで、それから、緑色の花も見つかります。明神分岐から徳沢へ向けて、歩くこと30分。見渡す限り一面、どこまで行っても緑と白のじゅうたんを敷きつめたようなニリンソウの大群落! それは、森の白い妖精が舞い降りてきたようです。
 ここ上高地では、5月中旬から6月上旬にかけて、小さく可憐な花々が、新緑の葉に光をさえぎられる前にと競争でもしているように、さまざまな姿で咲き誇ります。
 上高地ビジターセンター(河童橋から徒歩5分)では、今どこで、どんな花が咲いているか一目でわかる開花情報があります。ぜひ、立ち寄って最新の情報交換をしましょう。

上高地案内図
上高地案内図(クリックするとPDFファイルが開きます)


((財)自然公園財団 上高地支部 若林 浩之)

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:4

国立公園Walker

「国立公園Walker」トップページ

エコレポ「国立公園Walker」へリンクの際はぜひこちらのバナーをご利用ください。

リンクURL:
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/go/series/8

バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」-花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

前のページへ戻る