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「国立公園Walker」バックナンバー

0022009.06.17UP白色に染まる栂平(つがだいら)

いざ浄土平へ!

浄土平と吾妻小富士
浄土平と吾妻小富士

 吾妻小富士がシンボルになっている磐梯朝日国立公園(福島県側)の吾妻山・浄土平は、今なお噴気を上げる一切経山(いっさいきょうざん)を間近に望み、荒涼とした火山風景が見所のひとつとなっています。
 山麓の福島市街から車で1時間ほどの浄土平は標高1580mに位置し、登山の起点として、また観光道路、磐梯吾妻スカイラインの休憩地点として、4月?11月半ばのシーズン中30万人以上の来訪者があり、観光地の賑わいをみせます。ビジターセンターやレストハウス、天文台などがある駐車場から登山道を10分ほど登ると気軽に火口に立てる吾妻小富士をはじめ、ぜひ一度は訪れてほしいエリアですが、ここでは栂平(つがだいら)をご紹介しましょう。

栂平で森林浴体験

可憐な花を咲かせるマイヅルソウ
可憐な花を咲かせるマイヅルソウ

 浄土平から南の桶沼(おけぬま)、土湯峠(つちゆとうげ)方向に約1km進むと、キャンプ場利用者のための兎平(うさぎだいら)駐車場があります。ここが栂平への入口です。鬱蒼としたオオシラビソ林へ一歩足を踏み入れるだけで賑わいと火山荒原の風景が一変し、野鳥の声と針葉樹の芳香に包まれる森林浴体験ができます。6月から7月にかけて、和名が印象的なゴゼンタチバナ、鶴が羽を広げたような葉の形をしているマイヅルソウなど様々な高山植物がいっせいに開花します。その大部分が白い花を咲かせる種であることが興味深い点です。
 足元から視線の高さ、頭上にいたるまで瑞々しい緑と白い花の群落を観賞しながら森の中の登山道をゆるやかに上り、背後に浄土平や吾妻小富士が見えてきたら、ほどなく栂平に到達します。兎平駐車場から片道20分ほどです。
 東吾妻山の東側の裾野に位置する栂平は、木道が整備された湿原と、ベンチと散策路がある園地に分かれます。澄んだ水をたたえる湿原の中の小さな池にはサンショウウオの卵なども見つかります。リスに出会うこともあり、規模は大きくありませんが野生動物の楽園でもあります。クマとの遭遇には十分注意しましょう。

白花の群落を訪ねる

コバイケイソウの大群落
コバイケイソウの大群落

 栂平で特筆すべきは7月初旬、湿原を埋め尽くして開花するコバイケイソウの大群落です。円錐状の大型の花をたくさん咲かせるため、一度いっせいに開花すると、その後数年間は花が少ない休養期間となりますが、湿原一面が白色に染まる光景は忘れられない印象を残すに違いありません。  浄土平周辺の残雪が消え、新緑の森歩きが楽しめるのは5月下旬以降になります。栂平は浄土平の間近にありながら訪れる人も少なく、ゆったりと静かな散策をするには最適な場所です。
 それぞれの花の開花状況には変動がありますので、満開のコバイケイソウが見たい!など、お目当ての植物に出会うためには、事前に浄土平ビジターセンターで確認してから訪問するとよいでしょう。

栂平周辺地図
栂平周辺地図


((財)自然公園財団本部 西村真一)

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バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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