函館から国道5号線を北へ20数km、峠のトンネルを抜けると静かに水を湛(たた)えた湖と優美に裾野を広げた山、駒ケ岳(標高1,131m)が姿を現します。新日本三景の一つにも数えられる大沼国定公園です。
これまでの火山活動によって形成された美しい姿をもつ活火山の駒ケ岳と、多くの小島と複雑な湖岸をもつ大沼湖・小沼湖・蓴菜沼(じゅんさいぬま)の三つの湖が織りなす景観。雄大な北海道の自然では稀な、箱庭的な造形の自然公園です。
駒ケ岳は、平成10年の小噴火以降、入山が規制されていましたが、今年度、事前の届出などを条件に部分的に解除されました(来年度も引き続き部分解除が行われる予定です)。
ブナやミズナラ、ヤマモミジやイタヤカエデといった広葉樹の紅葉も終わり、最後に残ったカラマツもその黄色の針葉を落とした頃、大沼国定公園に冬がやって来ます。10月の下旬から降っては融けてを繰り返した雪は、12月になると駒ケ岳を白いベールで包み、平地にも根雪(ねゆき)【1】が降り積もります。湖は少しずつ氷に閉ざされ、ワカサギ漁のため行き交っていた舟も陸に上げられます。
北海道の南に位置する大沼国定公園ですが、厳冬期には朝の気温がマイナス20℃近くまで下がります。山々の木々は樹氷におおわれ、湖を閉ざした氷はやがて厚さ30cm以上にもなります。
アカショウビンやオオルリ、キビタキといった夏鳥たちが南の越冬地へと渡っていった頃、遠くシベリアから冬の使者オオハクチョウが飛来します。大沼国定公園で冬を越す「越冬」組がやって来るのは、11月中旬頃からです。
12月中旬、湖が凍ってワカサギ漁が終わった頃、越冬組の鳥たちは「白鳥台セバット【2】」と呼ばれる小沼湖の岸辺に集まります。オオハクチョウのほか、マガモ、キンクロハジロ、ホオジロガモ、オナガガモ、カワアイサなどの水鳥です。
温泉水が流れ込むため冬でも凍らない湖の入り江などでは、雪の中にカワセミの姿を観察することもできます。雪解けの頃には、オオワシやオジロワシも飛来します。
冬の大沼国定公園の風物詩となっているのが、結氷した氷の上でのワカサギ釣りです。湖面に穴を開けて釣り糸を垂れると気分はすっかり太公望。釣竿や暖房具のレンタルも行っているので手ぶらで来ても楽しめます。
スノーシューやテレマークスキーでの日暮山(標高303m)登山もおすすめです。凛とした冷たい空気の中、山頂から眺めるパノラマは最高。冬山には危険がつきものですので、プロのガイドと一緒のツアーをどうぞ。もちろん、近くのスキー場では、ゲレンデスキーも楽しめます。ダケカンバの林の中、パウダースノーを蹴散らしながら滑り降りると爽快です。
12月には函館と大沼国定公園を往復するSL「クリスマスファンタジー号」も運行します。大沼国定公園の自然を満喫した後は、函館山の夜景やライトアップされたハリストス正教会など夜の函館・元町を散策するのもよいでしょう。
((財)自然公園財団 大沼支部 勝田 雄二)
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