支笏洞爺国立公園にある支笏湖は、火山活動が創り出した美しい景観が魅力の湖です。約4万年前、支笏火山が噴火をしてできたカルデラ湖で、周囲には風不死岳(ふっぷしだけ)、恵庭岳(えにわだけ)、樽前山(たるまえさん)の三つの活火山がそびえています。周囲は約40km、これは東京の山の手線の周囲にほぼ相当し、国内第8番目の大きさです。水深363mは、秋田県田沢湖に次いで国内第2位の深さを誇ります。そのため貯水量は、日本一大きな琵琶湖の4分の3をたたえているといわれています。
快晴の日に湖畔に立てば、急なカルデラ壁に密生する豊かな森林に囲まれた深い青色の支笏湖を見ることができます。足元の湖水は湖底を遠くまで見渡せるほど透明で、見ていると清涼な気分になります。
環境省が行う水質調査【*】で何度も日本一の座に輝いている支笏湖。氷点下の日が続くようになると、その清涼な水で作られた芸術作品を湖岸で見つけることができます。
秋から、湖上に強風の吹き荒れる日が増えてきます。その風によって湖は海のようにしけ、湖岸には湖水が飛び散るようになります。そして冬になると、氷点下の空気が水しぶきをたちまち凍らせ、水しぶきがあたった湖畔のあらゆるものが、氷の世界に閉じ込められるのです。この芸術作品こそ、「しぶき氷」です。
湖岸にある岩や枝、枯れ草、手すり、ベンチが氷におおわれます。湖岸のあらゆるものが凍りつく姿は、時が止まったかのように見え、幻想的です。日が当たれば、氷が淡い青色に着色されたように見えます。清らかな湖水で作られたしぶき氷は、支笏湖の美しさを象徴しているようです。しぶき氷が何層にも重なってつくられた巨大な氷塊は迫力があり、支笏湖の冬の荒々しさを象徴しているように感じられます。湖岸を歩くだけで支笏湖の魅力を存分に楽しめるのです。
風の強い日に散策される方は、耳がスッポリ隠れるような帽子をかぶり、首もしっかりマフラーで覆ってのスタイルがお勧めです。滑らないように足元にもご注意ください。
さて、「しぶき氷」のおまつりといってもよいかもしれません。「2013千歳・支笏湖氷濤まつり」が平成25年1月25日(金)?2月17日(日)まで、支笏湖温泉で開催されます。
大小30基ほどの氷像が湖畔に立ち並びます。丸太や鉄管をくみ上げて漁網を貼り、支笏湖の湖水をくみ上げて、スプリンクラーで吹き付けて凍らせたもので、原理はしぶき氷と一緒です。
11月下旬から準備が始まり、まつり実行委員の皆さんが昼夜を問わず氷像作りをしています。凍てつく空のもとで作られた氷像は、天然のしぶき氷と同じくらい美しく、ダイナミックな迫力に満ちた、人と湖水のコラボレーションです。
この冬、支笏湖の自然美を存分にお楽しみください。
(一財)自然公園財団 支笏湖支部 吉田 香織
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