メインコンテンツ ここから

「国立公園Walker」バックナンバー

0432012.11.27UP秋の阿蘇草原

四季折々に変化する阿蘇の草原景観

阿蘇周辺地図
阿蘇周辺地図
(クリックするとPDFファイルが開きます)

 22,000ヘクタールにも及ぶ広大な阿蘇の草原は、長い間、人の手によって維持されてきました。四季折々の自然の変化とともに、地域の人々により採草・放牧・野焼きなど草原を利用・維持管理の営みが続けられることにより、阿蘇ならではの草原の風景が作り出されます。

 3月の野焼きで真っ黒になった山肌は、春から夏は緑のじゅうたんのような草原に、そして秋から冬にかけてラクダ色に変化していきます。その間、春先のキスミレやハルリンドウに始まり、可憐な草花が次々に開花して草原を彩ります。
 一方、野焼き後の原野に草が芽立ち、青々としてくる5月には牛馬の放牧が始まります。秋は、草原を利用する農家の人々にとって大変忙しい季節です。冬場に備えての刈り干し切りや来春の野焼きのための防火帯づくり(輪地切り)など、寒い冬を乗り越え春を迎えるための準備に追われます。

採草(刈り干し切り) ─草原に描かれるパッチワーク

米塚周辺の採草地(採草後の草原)
米塚周辺の採草地(採草後の草原)

採草作業
採草作業

 秋、ススキの穂が風にそよぐ頃になると、草原のあちこちで採草作業(刈り干し切り)が行われます。刈り取った野草は冬の間、畜舎で牛馬を飼うための飼料や敷き料、野草堆肥づくりなどに使われます。採草作業は、かつては大ガマで、その後は刈り払い機の使用が中心でしたが、今は大型機械による採草がほとんどです。また、機械化に伴い草の保存方法も草小積みからロールベイルやコンパクトベイル(以下、「ロールやコンパクト」とする)【*】へと変化してきました。

 秋の草原では、ロールべーラーなど大型機械による採草作業や、草の束を積んだトラックが行き来する様子をよく見かけます。機械で刈った草は数日乾燥してからロールやコンパクトにまとめて車で持ち帰ります。
 この時期、米塚周辺の採草地では、刈った草の畝模様や点々と転がるロールやコンパクト、草を刈った場所と谷など草が残る場所がつくる模様など、一面パッチワークのように美しい草原模様が浮かび上がります。

秋の風物詩 草小積み

 草小積みは、刈り取って束ねた干し草を小高く積み上げたもので、野草を冬場の牛馬のエサなどに利用するための保存方法のひとつです。かつては、秋になると農家総出で草原に出かけ余すことなく草を刈り草小積みが作られていました。秋から冬の草原に草小積みのある風景は阿蘇の風物詩として親しまれてきましたが、大型機械による採草が中心になり、草小積みを作る農家は姿を消しつつあります。
 そのような中、野草利用とともに育まれてきた草原文化、先人の技を引き継いでいこうと、今秋、村山牧野組合(高森町)では、草小積み景観を復活させる活動を行っています。10月中旬に阿蘇地区パークボランティアの会の協力を得ながら作った草小積みは、南阿蘇ビジターセンターや国道265号沿いなどに設置され、訪れる人々の目を楽しませています。

村山牧野の方々による草小積みづくり。10数年ぶりの作業とは思えないワザです。
村山牧野の方々による草小積みづくり。10数年ぶりの作業とは思えないワザです。

南阿蘇ビジターセンター前に5基の草小積み ※阿蘇草原再生募金による支援を受けて活動
南阿蘇ビジターセンター前に5基の草小積み ※阿蘇草原再生募金による支援を受けて活動

野焼きに備えて防火帯づくり ─草原に刻まれる幾何学模様

野焼きに備えて作られた防火帯(夜峰山/南阿蘇村)
野焼きに備えて作られた防火帯(夜峰山/南阿蘇村)

 防火帯づくり(輪地切り)は、来春の野焼きを安全に行うための大事な作業です。森林境など延焼防止の必要がある箇所の草を帯状に刈り取り、さらにそこを焼くこと(輪地焼き)により安全な防火帯が出来上がります。阿蘇地域内の輪地切りの総延長は500km以上と言われ、急斜面で刈り払い機を使う作業は危険を伴う重労働です。地元の人々の高齢化などにより、現在は支援ボランティアの人々も協力して行われています。

 阿蘇谷や南?谷から外輪山や中央火口丘周辺の草原を見渡せば、森林境などに防火帯のラインが確認できます。草原に描かれた幾何学的なラインは春を待つ草原を象徴するもの。雪が降れば防火帯に積もる雪の線がくっきりと見え、野焼き後は黒い大地と茶色く残る防火帯のコントラストが印象的です。

雪が降り積もった防火帯(南阿蘇村)
雪が降り積もった防火帯(南阿蘇村)

野焼き後、防火帯でくっきり分けられた山肌(北外輪山)
野焼き後、防火帯でくっきり分けられた山肌(北外輪山)

(一般財団法人 自然公園財団阿蘇支部 所長 村上 渡)

注釈

【*】ベイル
酪農家が家畜の飼料や敷きワラとして、ワラなどの牧草を保存するために加工したもの。運搬しやすいように四角く固めた「コンパクトベイル」、ロール状に巻いてシートでくるんだ「ロールベイル」などがある。

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:2

国立公園Walker

「国立公園Walker」トップページ

エコレポ「国立公園Walker」へリンクの際はぜひこちらのバナーをご利用ください。

リンクURL:
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/go/series/8

バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

前のページへ戻る