西日本を代表する山「大山(だいせん)」は、大山隠岐国立公園の東部に位置します。最高点の剣ヶ峰は標高1,729m、中国地方の最高峰です。日本海の海岸近くから急激にそびえる独立峰で、北西からは裾野広がりが美しく「伯耆(ほうき)富士」と呼ばれる一方、南壁と北壁は北アルプスを思わせるような荒々しい山容を見せています。
さほど標高の高い山ではない割に、日本海から吹き付ける季節風が厳しい気象環境を作り出します。山頂付近は高山植物の草原やキャラボクの林に覆われ、切り立った稜線が続く地形と相まって、3,000m級の高山を思わせる景観を呈しています。
山頂周辺が一番輝くのは、7月中旬?8月上旬。何種類もの植物が一斉に花を咲かせ、一年のうちでもっとも美しく華やかな季節を迎えます。
今回は、シモツケソウとナンゴククガイソウをご紹介しましょう。
夏の大山山頂周辺のお花畑では、色とりどりの花が咲き乱れ、美の競演が繰り広げられます。
クガイソウ、エゾアジサイの群落がお花畑を紫色に染め、カラマツソウ、エゾノヨロイグサが白く彩り、シモツケソウ、イヨフウロのピンク色が華やかさをそえます。その中でも、「大山の高原の女王」と呼ばれるシモツケソウが群生する景色は格別です。
シモツケソウの名前は、小さなピンクの花がたくさん咲く様子が、バラ科の低木・シモツケの花によく似ているため名付けられたといいます。直径5?6ミリの花が無数に集まった花畑の様子は、ピンクのやわらかい綿のようです。
シモツケソウの群落は、三角点のある弥山(1709m)付近や東側の象ケ鼻(1550m)周辺でも見られますが、何と言ってもユートピア小屋周辺に広がる群落が素晴らしいです。これらの植物は、気象条件の厳しいところに生息していて、変化に弱いものですから、みんなで大切にしたいものです。
山麓の大山寺バス停内にある大山情報館から大山寺を通り大神山神社の石畳をゆっくりと歩くと、やがて「元谷」と呼ばれる地点に到着します。元谷からの眺めは、大山北壁が屏風のように広がり、圧倒されます。登山道はここで「夏山登山道」と「ユートピアコース」に分かれます。お花畑を見るならユートピアコースがお勧めです。
真夏の大山山頂付近は、ダイセンキャラボクの森を取り巻いて、毎年見事なお花畑が形成されますが、特にすばらしいのがユートピアのお花畑の群落です。
ユートピアでひと夏をすごす植物は、高山植物の仲間だけではありません。ナンゴククガイソウのような中低山の草地に生える植物も加わり、大山でしか見ることのできないパノラマの眺めが楽しめます。お花畑の主役はこのナンゴククガイソウ【1】です。山頂の高原に何処からともなく涼風が吹き抜けて、青紫色の穂が波うちます。青い絨毯を一面に敷き詰めたような幻想的な姿を見せます。
大山情報館では、この時期、どこでどんな花が咲いているか一目でわかる開花情報を提供しています。
大山登山マップ
((財)自然公園財団 鳥取支部 三原 勝弘)
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