青森県と秋田県にまたがる十和田湖は、標高400mの山上に深く碧い水をたたえる二重カルデラ湖【注1】です。湖の中央に向かって中山半島と御倉半島が両腕のように伸び、両半島に囲まれた中湖が水深327mの湖の最深部。瞰湖台展望所は、中湖に面した絶壁の上にあります。
この展望台からは、御倉半島の千丈幕(長さ220mにわたる絶壁)や五色岩、屏風岩と中山半島が、湖内の最深部に映え、行き交う白い遊覧船は点のようで、美しい眺めを楽しむことができます。
また新緑の春、紅葉の秋、雪化粧の冬と折々にその美しさの変化も魅力的な所です。
十和田湖畔の宇樽部(うたるべ)から休屋(やすみや)に至る旧国道103号線は、冬の期間、車両通行止めとなるため、スノートレッキングを楽しむ人やカメラマンの格好の穴場となります。
宇樽部から旧国道103号線にちょっと入っただけで、人工の音や生活感のないシーンと静まりかえった世界が広がります。
ここから葉の落ちた樹木の林と、右手に時折姿を見せる湖を眺めながら約3.5?、標高583mの瞰湖台まで1時間30分歩きます。新雪をスノーシュー【注2】で踏みしめた時の「サクサク」という音と、「ハーハー」という自分の吐く息だけが辺りに響き、静寂の時は自分だけのものとなります。
また、この季節には動物の息づかいを間近に感じる事ができます。動物たちの残した足跡は、彼らがどこかに潜んで逆に私たちを観察しているのではないかとさえ思わせてくれます。(または「動物たちの残した足跡を見ていると、逆に彼らがどこかに潜んで私たちを観察しているのではないかとさえ思えてきます。」など。)
そんな自然との対話が心に届くような冬との出会いを楽しめます。
瞰湖台は、標高差もあり、自然の創る思いがけない情景を目にする事ができます。
一歩一歩進んで行くごとに、樹木や岩に着雪してできた雪の造形や霧氷は、「不思議とロマンの世界」を演出してくれます。霧氷は、氷点下の環境で冷やされた水滴が、樹木などにぶつかって、凍結した現象。冬の神秘を感じながら歩くと、とうとう瞰湖台に到着です。自分の足でたどりついた達成感は格別。晴れた日には、目の前に広がる碧い湖と雪化粧した外輪山のコントラストが楽しめます。曇の日には墨絵のようなモノトーンの世界へと一変します。湖面の氷は風と波で、丸いお盆のような「蓮の葉氷」や「氷球」となり、とりわけカメラマンには注目のスポットです。
その時々の気象状況によって、雪の状況は違いますので、天候等は十和田ビジターセンターにお問い合わせください。
瞰湖台展望所案内図
((財)自然公園財団 十和田支部 山田笙子)
【注1】二重カルデラ
火山の数回の噴火と二度の陥没によって、カルデラ湖が二重にできた状態をいう。十和田湖では、十和田山が噴火を繰り返す中、最初の陥没により、第一のカルデラ湖である十和田湖が形成され、その後の噴火・陥没により、十和田湖の中に、第二のカルデラ湖である中湖ができたとされる。
【注2】スノーシュー
雪上を歩くための道具で、靴のまま履く。長さ60センチほどでスキーよりも小回りが利くため、林の中などを歩くのに便利。「西洋かんじき」とも呼ばれる。
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