8月のお盆休みを過ぎると、奥日光は早々と朝晩の気温が10度以下に下がる日もあり、セーターやジャンパーが欲しくなります。特に今年は、8月前半に雨の多い日が続いたせいか、16日の送り盆の頃にはすでに戦場ケ原や周辺の森では秋の気配が漂いはじめました。
今回は、一足早くこの秋を体感できる奥日光の人気スポット“小田代原(おだしろがはら)の草紅葉”を紹介しましょう。
小田代原(海抜1480m)は、周囲をシラカバやカラマツの森林に囲まれた南北1km、東西0.8kmほどの小さな湿原で、中にはたくさんの湿原植物が生育し、いかにも“清楚な高原の湿原”という感じです。平成17年には、同じ日光の戦場ケ原や湯ノ湖とともに、渡り鳥の保護を目的としたラムサール条約の登録湿地に指定されました。
初夏のアヤメの開花から始まってノハナショウブ、ノアザミ、ハクサンフウロ、ホザキシモツケと次々に咲く湿原の花々の移ろいは、奥日光でもなかなか見ることができないスポットで、春から夏、秋までたくさんのハイカーで賑わっています。
中でも、湿原の中央部に一本だけ立つ“貴婦人”と呼ばれるシラカンバは特に人気が高く、小田代原の人気も、この一本のシラカンバに負うところが大きいと言っても過言ではないかもしれません。写真家・宮嶋康彦さんの『一本の木』という本は、この“貴婦人"に魅了されて書かれたものです。
小田代原に行かれたら、ぜひ、この”貴婦人“を探してみてください。
9月も上旬になり気温が下がり始めると、小田代原は、ホザキシモツケやトダシバ、アヤメなどの湿地性植物が、いっせいに赤やオレンジ、黄色などのモザイク状に紅葉をはじめ、さながらセピア系の絨毯のようになります。草紅葉(くさもみじ)と呼ばれるこの景観が、小田代原のもうひとつの魅力となっています。それは、湿原を取り囲む、未だ蒼い森の緑色との絶妙なコントラストとなり、いっそう刺激的に見えます。湿原は、概して気温が低く、また、昼と夜の温度変化が激しいため、周囲の森林と比べて紅葉が早く進むといわれています。この草紅葉も年によってはビックリするくらい鮮やかだったり、そうでもなかったりと当たり外れはあります。天候不順の今年、果たしてどんな草紅葉が見られるでしょうか。皆さんも、ぜひ、訪れてみてください。
小田代原の湿原植物も一時は、増えすぎたシカの食害に遭い、絶滅の危機に晒されたことがありました。栃木県が平成9年度に周囲3kmを電気柵で囲い、シカが入れないようにしたため、最近は、ノアザミやクガイソウ、イブキトラノオなどがたくさん見られるようになっています。
シカの増加は、奥日光の植生をすっかり変えてしまうほどの勢いがあります。平成13年度には環境省が戦場ケ原一帯を柵で囲ってみましたが、依然として柵の外側にはシカが多く、被害は周辺に広がっています。これらシカの増加は、一説には地球温暖化による積雪の減少が原因との話もあり、何ともやり切れない気持ちがしています。
小田代原に行くには、三つのルートがあります。一番手軽な方法は、赤沼からスタートしている低公害バスを利用する経路。赤沼から所要時間約10分(バス料金1回300円)で到達できますのでお年寄りやお子さん達にもお勧めです。歩いて行く場合は、2コースあり、ひとつは赤沼から森の中を歩くコース。もうひとつは湯滝、又は光徳入口から泉門池を通って小田代原に至るコース。両方ともおよそ2.5kmです。
詳しくは、赤沼にある自然情報センターか湯の湖湖畔の日光湯元ビジターセンターに問い合わせるとよいでしょう。
10月に入ると奥日光は、連日、紅葉見物の観光客で賑わうようになりますが、それまでの間、小田代原の草紅葉を楽しまれてはいかがでしょうか。
((財)自然公園財団 日光支部 森 秀夫)
何年か前に小田代が原の草紅葉を観に行きました。
その時はちょうど前日に霜がおりてしまい、期待していた鮮やかな紅葉ではなく、少し茶褐色になってしまいましたが、それでもとても見事なもので心が洗われました。
当たり外れがあってもかまわないので…というより、当たり外れがあるのが当然でかまわないので、その年の見頃の予想時期などもレポートに加えていただくと嬉しいです。
(2014.09.07)
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