北海道の空の玄関口、新千歳空港にもっとも近い自然公園は、洞爺湖と支笏湖の2大カルデラ湖からなる支笏洞爺国立公園です。1949年、日本で14番目の国立公園として指定され、今年で60年を迎えました。
支笏湖の特徴はその深さと水質です。水深は日本の湖で2番目の363m。東京タワーがすっぽり入ってしまう深さと貯水量があり、凍らない湖としても知られています。また、高い水質は、毎年行われる環境省の公共用水域調査で1,2位を競っており、青く澄んだ水は「支笏湖ブルー」と呼ばれ親しまれています。
今回は、この美しい湖に注ぎ込む美笛(びふえ)川の支流、モンルウン美笛川にある滝をご紹介します。
湖畔から洞爺湖方面へ車を走らせると、大きく蛇行しながら湖に流れ込む美笛川が見えてきます。美笛とは、アイヌ語のピプイからきており、「小石原にある川」という意味です。その名のとおり河原には小石が散らばり、緩やかな美しい流れが広がっています。
案内板に従って進むと、ほどなく美笛の滝の入り口に到着します。ここから滝壺までは、モンルウン美笛川と平行する遊歩道を歩きます。
歩き始めると小さな木の橋が見えてきます。この橋は、水面からわずか50cmの高さに橋が架けられているため、なだらかな岩の上を滑るように水が流れる光景を、間近に見ることがきます。川の周りを木々が包み込み、わずかな木漏れ日が降りそそぎ、苔むした石がひんやりとした川の美しさを引き立たせています。また、いくつもの湧き水が見られるのも、この滝へ向かう遊歩道ならではの見所です。
渓流沿いに生息するミソサザイやコマドリの美しいさえずりを聞きながら歩くこと20分。途中、木々の間から上流部がわずかに見えますが、滝壺に着くと突如として滝全体がその姿を現します。見上げるほどの高さから流れ落ちる滝は圧巻です。ごつごつとした階段状の岩肌に水がほとばしり、周りは細かなしぶきに包まれています。
静かな山間に音を響かせて流れ落ちる美笛の滝は、このあたりではもっとも落差のある、支笏湖を代表する滝です。
美笛川沿いには、日本でも有数の金鉱山がありました。当時は鉄道も走り、5000人もの人が暮らす町には学校や病院が立ち並び、鉱山の一大都市が広がっていました。しかし、資源の枯渇によって閉山となり、鉱山に暮らす人々もこの地を離れました。
それから20年余り、今は木々が生い茂り当時の面影はほとんどありませんが、目を閉じて耳を澄ますと汽笛の声が聞こえてくるようです。
札幌市内から車で1時間余り、日帰りも可能な距離です。天気のよい日に、ちょっとした山歩きを楽しみながら美しい水に親しんでみてはいかがでしょう。
支笏湖地図
((財)自然公園財団 支笏湖支部 荒内久美子)
道路からの入り口標識がわかりずらかったです。
(数年前のことです)
(2014.06.24)
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