例年にない寒波と降雪が続いた大沼国定公園の冬も、雪解けが進み、一気に春めいてきました。
北海道新幹線開業まであと3年を切り、名曲「千の風になって」誕生の地でもある大沼国定公園を、さわやかな風に吹かれながら、ゆっくりと楽しむ、いくつかのポイントをご紹介します。
本州で桜の満開が報道される頃でも、盆地の大沼では一晩に10?20cmほどの降雪も珍しくありません。北海道の雪は、上空の気温が低いため、軽く乾いた雪が多く、春は日中の日差しですぐに融けてしまいます。雪が降ってきたらチャンス、黒っぽい布やコートの袖先を広げ、息を止めて、雪片を受け止めてみて下さい。木の枝の様な樹枝状、六角状、針状等の綺麗な雪の結晶を見ることができます。
また、晴れた夜に大沼公園駅付近を通りかかる時は、灯りが少ない所で空を見上げてみてください。人口が少なく、空気が綺麗に清んでいる大沼では、北斗七星、北極星、カシオペア座など、都会では体験ができない満天の星空が広がります。
春は、動物たちの活動も賑やかになります。3月下旬?4月上旬に、大沼公園駅から約1km北側の踏切を渡り約300mの道道沿いの入り江や小沼の奥などに、アオサギやダイサギなど20羽ほどが集結して、集団お見合い?が行われます。
また、北に帰る途中のオオハクチョウは、鹿部方面に向かう道道両側の牧草地やデントコーン畑で、落穂等をついばみながら5月下旬頃まで滞在することがあり、駒ケ岳を背景に素敵な写真が撮れます。また、5月中旬頃の大沼の水田地帯には、珍しいアマサギもやってきます。
大沼・小沼周辺には、随所にミズバショウの群生地があります。主なポイントは、?大沼公園駅から反時計回りに約4km東大沼キャンプ場方向に行き、池田園から流山温泉間の右側湿地(最も早咲き)、?東大沼キャンプ場の手前からサッカー場方向に右折し約400mの左側湿地、?大沼公園駅から北に約1kmの踏切を渡り国道5号線方向に約500mの左側湿地、?大沼公園駅付近では、駅プラットホーム向かい側の湿地などがあります。また、キタコブシは、約14kmの湖畔一周道路の随所で咲いています(別名コブシ街道)。お勧めは、東大沼キャンプ場の手前約1kmの動物ふれあいランド向かい側にある、木道を渡った湖岸。キタコブシとミズバショウが駒ケ岳に映えます。
全国に20ほどある「駒ケ岳」の名前は、残雪の雪形が馬=駒に似ていることなどに由来するらしいのですが、この北海道駒ケ岳では、私の見たところ、「うし」の文字の雪形が5月連休前後に見えます。
大沼地区は人口約2500人ですが、牛は何と約12000頭以上おり、駒ケ岳が、地域の大切な産業を支える牛に春のエールを送っているようにも見えます。
今年はいつ、北海道駒ケ岳の山麓に「うし」の雪形文字が現れるか楽しみです。
ゴールデンウィーク等にはSL列車が大沼公園を走り抜け、大勢の子どもたちやカメラマンで賑わいます。主な撮影スポットは、?国道5号線のトンネルを出てすぐ右側の歩道橋等で、小沼湖岸を走るSLと駒ケ岳の勇姿、?大沼公園駅すぐの踏み切り付近で、沿線のエゾヤマザクラの花と一緒に、?大沼公園駅から約3km、標高303mの日暮山山頂からの大沼・小沼・駒ケ岳とSLの遠望等です。
どうぞ、ご家族連れでSLに乗り、春の大沼国定公園にいらして下さい。
約14kmの大沼湖畔一周道路には、全て片側に歩道があり、自転車なら約70?90分で一周できます。少ない歩行者に注意すれば、歩道をゆっくり走行するほうが安全です。大沼公園駅から約7kmの中間地点の東大沼キャンプ場には、水場やトイレ、売店兼食堂、大沼国定公園の自然写真を展示したギャラリー等があり、一休みできます。駐輪帯は6箇所あり、それぞれ違った駒ケ岳の勇姿や大沼の様子が眺められます。
貸し自転車店は、大沼公園駅付近等にあり、二人乗りの自転車も人気です(スピードの出しすぎには注意)。
大沼・小沼では、全国的に珍しい50cm超級のヘラブナが釣れ、4月下旬頃からは、全国から釣り人が集まります。春先の水温が低い時期には、ヘラブナは大沼・小沼の湖畔遊歩道沿いの浅い入り江にいるため、公園広場や千の風のモニュメント付近でも早朝から釣り人を見かけることがあります。
また、5月下旬からは、美味しい大沼のカワエビ漁が始まり、独特の風情のある仕掛けが入り江のあちこちで見られます。
大沼公園駅から約7kmの東大沼キャンプ場は、完全無料、水場・トイレ・無料駐車場完備、予約不要であり、付近のボランテアのご厚意で、荷物輸送用手押し車完備、ゴミは毎朝無料分別回収、長期滞在者向けには、2台の無料洗濯機や携帯・パソコン等の無料充電コーナーもあり、全国的に大人気で、4月下旬から10月末まで楽しめます。また、カヌー教室もあり、修学旅行生などで賑わっています。このキャンプ場の維持管理経費のほとんどは、大沼公園駅前の大沼有料駐車場の利用料金で賄われています。
早朝4時頃から早起きして、夜明け前の様子や日の出を、大沼公園駅から北に約1kmの月見橋付近から眺めてみましょう。黄金色に染まる駒ケ岳や空と湖が素敵です。夕日は、小沼の奥や、大沼公園駅から北に約600mの湖月橋付近、東大沼キャンプ場の湖岸などがお勧めです。駒ケ岳や大沼は、時々刻々表情が変わり、特に低気圧通過の前後などは、綺麗なピンク色に染まります。
大沼に来たらまず水道水をそのまま飲んでみてください。山麓の湧き水を水源としており、とても美味しく安く安全で、ミネラルウオーターとしても販売されています。私も毎日、この安くて美味しい水道水を炊事・洗濯・入浴などに使用(取水制限なし)しており、思えば、とても贅沢な暮らしをしていることになります。
また七飯町は、西洋りんご栽培技術の国内発祥の地。知名度が高いとはいえませんが、最近開発された新品種「ななみつき」を始め、七飯町産のりんごは別格でとても美味しいのです。大沼公園駅そばの七飯大沼国際交流プラザでも、いろいろな七飯産の美味しいりんごが販売されていますのでぜひご試食ください。
真っ赤なツツジの花は、5月下旬頃から新緑の公園広場や散策路を彩り、駒ケ岳に映えます。
また、6月中旬には、函館の五稜郭公園とほぼ同時期の約100年前に、行啓を記念して植えられた薄紫色のフジの花が公園広場を飾り、風に揺れています。薄桃色のハマナスの花も咲き始め、大沼国定公園は、さわやかな花の季節を迎えます。
皆様もぜひ、梅雨がない大沼国定公園にいらして、さわやかな風と、可憐な草花と、美味しい大沼の水と、時事刻々変化する素晴らしい景色を堪能して、心と体をリフレッシュして下さい。
(一財)自然公園財団 大沼支部 上野文男
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