上信越高原国立公園にある芳ケ平(よしがだいら)は、標高1860?1830m。群馬県西端の山中深くを流れる大沢川と長笹川の源流部に、多くの池が点在する草原(湿原)です。
毎年、秋になると、草津白根山北斜面から樹氷で知られる横手山を含む千ヘクタールの広大な地域で、紅葉と雲海のドラマがはじまります。
今年は秋が早かったので、9月下旬から紅葉が見頃になりました。これからは雲海との競演を楽しめる日も多くなり、紅葉シーズンは黄金色の天然カラマツで締めくくられます。
芳ケ平を回るルートとして、白根山麓からのアプローチをご紹介します。草津白根パークサービスセンターを出発し、ナナカマド、ミネザクラ、コロマメノキの紅葉の中、白根山を東に回り込み北斜面をたどりながら、大小の池と湿原をめぐって来た道をもどります。
山裾の道は、活火山特有の景色が広がり、軽石や礫(こいし)がごろごろしています。天然カラマツの散在する中、緑色のミネズオウなどの高山植物が目にとまります。このあたりは火山性のガスや火山灰などによって土壌が酸性になっており、植物にとっては過酷ともいえる厳しい環境。その環境に適応したものしか生育できないのです。
しばらく行くと景色は更に荒涼としてきます。周囲の木々は立ち枯れ、茶褐色や灰色の巨岩があちこちに見られます。明治15年(1882)に起きた大噴火などの影響です。百年以上を経た現在でも、その風景から、当時の噴火のすさまじさが想像できます。
あたりに強烈な刺激臭が漂ってくると,火山ガスの噴気帯にさしかかります。立ち止まらずに歩きながら観察してみましょう。噴気帯では岩も白く変色し、草も木も何も生えていません。この場所から離れるにしたがってコケ類やコメススキイタドリが見られ、クロマメノキなどの低木が生育してきます。
目を上げて芳ケ平上部の山を見ると、対照的に豊かな樹林帯が広がっています。何百年という気の遠くなるような歳月をかけて緑が復元してきているのです。
ここを通りすぎると、一転して穏やかな草原にでます。避難小屋を兼ねた芳ケ平ヒュッテは通年営業ですが、電話で確認するとより安心。また、ここにはテントサイトのみのキャンプ場もあります。素朴なキャンプ生活を楽しみたいなら絶好の場所。キャンプ場の周遊歩道、展望場からは、裏白根や富士山が見えます。
ヒュッテ前に戻る、その先が目的の芳ケ平湿原です。大小様々な池が点在し、その間を縫うように木道が敷かれています。草紅葉に染まる湿原もまたよいものです。
秋になると、白根山から芳ケ平にかけては雲海を多く見ることができます。
芳ケ平コースの秋から初冬へのバトンタッチは「木枯らし一番」がひとつの目印。
いつから冬になるのか?という質問に答えるのは難しいのですが、10月中旬から下旬にかけて「木枯らし一番」が吹くとコースはたちまち冬の様相。誰もが予想し得ない自然の神秘、「きらめく霧氷」が辺り一面を飾ります。
10月、厳しい気象条件に耐えるような装備も携行し、短い秋の一日を楽しんでみてはいかがでしょうか。
コース自体は歩きやすく、家族で楽しめます。防寒具など準備をしっかりして、安全に快適な散策を満喫してください。
芳ケ平(よしがだいら)地図
((財)自然公園財団 草津支部 湯田 六男)
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