メインコンテンツ ここから

「国立公園Walker」バックナンバー

0062009.11.04UP草津白根の秋

紅葉と雲海の芳ケ平

芳ケ平(よしがだいら)写真1

 上信越高原国立公園にある芳ケ平(よしがだいら)は、標高1860?1830m。群馬県西端の山中深くを流れる大沢川と長笹川の源流部に、多くの池が点在する草原(湿原)です。
 毎年、秋になると、草津白根山北斜面から樹氷で知られる横手山を含む千ヘクタールの広大な地域で、紅葉と雲海のドラマがはじまります。
 今年は秋が早かったので、9月下旬から紅葉が見頃になりました。これからは雲海との競演を楽しめる日も多くなり、紅葉シーズンは黄金色の天然カラマツで締めくくられます。

白根山麓からアプローチ

芳ケ平(よしがだいら)写真2

 芳ケ平を回るルートとして、白根山麓からのアプローチをご紹介します。草津白根パークサービスセンターを出発し、ナナカマド、ミネザクラ、コロマメノキの紅葉の中、白根山を東に回り込み北斜面をたどりながら、大小の池と湿原をめぐって来た道をもどります。
 山裾の道は、活火山特有の景色が広がり、軽石や礫(こいし)がごろごろしています。天然カラマツの散在する中、緑色のミネズオウなどの高山植物が目にとまります。このあたりは火山性のガスや火山灰などによって土壌が酸性になっており、植物にとっては過酷ともいえる厳しい環境。その環境に適応したものしか生育できないのです。

 しばらく行くと景色は更に荒涼としてきます。周囲の木々は立ち枯れ、茶褐色や灰色の巨岩があちこちに見られます。明治15年(1882)に起きた大噴火などの影響です。百年以上を経た現在でも、その風景から、当時の噴火のすさまじさが想像できます。

芳ケ平(よしがだいら)写真3

 あたりに強烈な刺激臭が漂ってくると,火山ガスの噴気帯にさしかかります。立ち止まらずに歩きながら観察してみましょう。噴気帯では岩も白く変色し、草も木も何も生えていません。この場所から離れるにしたがってコケ類やコメススキイタドリが見られ、クロマメノキなどの低木が生育してきます。
 目を上げて芳ケ平上部の山を見ると、対照的に豊かな樹林帯が広がっています。何百年という気の遠くなるような歳月をかけて緑が復元してきているのです。

芳ケ平(よしがだいら)写真4

 ここを通りすぎると、一転して穏やかな草原にでます。避難小屋を兼ねた芳ケ平ヒュッテは通年営業ですが、電話で確認するとより安心。また、ここにはテントサイトのみのキャンプ場もあります。素朴なキャンプ生活を楽しみたいなら絶好の場所。キャンプ場の周遊歩道、展望場からは、裏白根や富士山が見えます。

芳ケ平(よしがだいら)写真5

 ヒュッテ前に戻る、その先が目的の芳ケ平湿原です。大小様々な池が点在し、その間を縫うように木道が敷かれています。草紅葉に染まる湿原もまたよいものです。
 秋になると、白根山から芳ケ平にかけては雲海を多く見ることができます。

装備を十分に、気象の変化が激しいコース

 芳ケ平コースの秋から初冬へのバトンタッチは「木枯らし一番」がひとつの目印。
 いつから冬になるのか?という質問に答えるのは難しいのですが、10月中旬から下旬にかけて「木枯らし一番」が吹くとコースはたちまち冬の様相。誰もが予想し得ない自然の神秘、「きらめく霧氷」が辺り一面を飾ります。
 10月、厳しい気象条件に耐えるような装備も携行し、短い秋の一日を楽しんでみてはいかがでしょうか。
 コース自体は歩きやすく、家族で楽しめます。防寒具など準備をしっかりして、安全に快適な散策を満喫してください。

芳ケ平(よしがだいら)地図
芳ケ平(よしがだいら)地図


((財)自然公園財団 草津支部 湯田 六男)

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:2

国立公園Walker

「国立公園Walker」トップページ

エコレポ「国立公園Walker」へリンクの際はぜひこちらのバナーをご利用ください。

リンクURL:
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/go/series/8

バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

前のページへ戻る