十和田八幡平国立公園の南部に位置する八幡平(はちまんたい)は、秋田県と岩手県の県境にあります。八幡平地域は、奥羽山脈に連なる3つの秀峰 ―八幡平、岩手山、秋田駒ケ岳― を含む広範なエリアで、「ブナとアオモリトドマツの森」、「湿原と高山植物」、「火山景観」を特徴としています。
この地域の魅力は、3秀峰の山麓に温泉地が点在し、そこを拠点として、湯浴をしながら、ハイキングから本格的な登山までさまざまな自然体験を楽しめることです。今回は八幡平地域北部・八幡平山麓周辺での自然探勝、温泉リゾートをご紹介します。
八幡平は「日本のイエローストーン(注)」と形容されることもあり、さまざまな火山現象が見所のひとつです。現在活動中の火山だけでなく、過去の活動で形成された火口湖など、ふと目にする景色・地形が火山活動と関係しています。
標高約1000mにある後生掛(ごしょがけ)温泉の南には、「後生掛自然研究路」がありますが、歩いていると「泥火山」とよばれる泥の高まりが見えてきます。火山といっても、マグマが噴出するわけではなく、噴気によって泥がボコッボコッと吹きあがり、円錐形に積み上げられたものです。吹き出し口の温度は90度近くの高温、周囲には硫黄の独特な香りが漂っており、地球が生きていることを実感させられます。しかし、そのたたずまいはミニチュアの火山模型のようで、迫力があるというよりもユーモラスです。
泥火山現象は各地の温泉地で見られる現象ですが、八幡平の泥火山は国内随一の規模といわれているので、是非一度ご覧ください。後生掛温泉には源泉に含まれる鉱泥を湯船の底に沈殿させた「泥湯」もあります。泥を肌に塗ると美肌効果があるといわれているので、あわせて体験してみるのもよいかもしれません。
八幡平山麓の温泉浴で特徴的なのは、地熱を利用したオンドル式温浴です。オンドルは地熱であたためられた地面にムシロやゴザを敷いて寝そべって湯治する蒸し風呂の一種。横になって数分もすると、大地の熱で体全体が暖かさに包まれます。入浴とは異なる暖かさ、温浴後の体の軽さは一度体験してみないとわからない心地よさです。八幡平では、後生掛温泉、大深温泉、銭川温泉などいくつかの温泉でオンドル宿舎に泊まることができます。また、強酸性の湯で知られる玉川温泉では露天オンドル(岩盤浴)を日帰りで体験することができます。
玉川温泉に隣接する大噴気孔原。火山性ガスが噴き出す自然研究路を歩くと全国から集まった岩盤浴ファンがところ狭しと寝転がっている光景が目に入ってきます。10人ほどが入る屋根付テント、ゴツゴツした岩盤、お湯が流れる川原のような場所、すべてが誰でも自由に利用できる岩盤浴スペースで、それぞれ湿度や温度が異なります。人気の場所は混み合うので、マナー・順番を守りながら気に入った場所を探してみてください。一回の温浴時間は長くて30?40分、長すぎると体に負担がかかるようです。豊かなブナの森が生み出す新鮮な空気に癒されながら、大地の熱を体感してみてください。
((財)自然公園財団八幡平支部 馬越 尚夫)
(注)イエローストーン
アメリカ合衆国の国立公園。北アメリカ大陸最大の火山地帯にあり、間欠泉や温泉、さまざまな火山現象が見られる。世界最古の国立公園としても知られている。
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