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「国立公園Walker」バックナンバー

0412012.09.18UPジオパークを目指す箱根

地球科学的に見て重要な自然を含む地域としてのジオパーク

大観山からの展望
大観山からの展望

 ジオパークとは、地域の地質と、その上に成り立つ自然や文化を、主な見所とする自然の中の公園のことで、ユネスコの支援により世界各地で推進されています。
 現在、日本には20地域のジオパークがあり、そのうち5地域が世界ジオパークとして認定されています。
 箱根火山は、世界的にみてもたいへん有名な火山です。豊かな自然と、古くからの歴史を物語る文化遺産もあることから、まさにジオパークにふさわしい地域と言えます。

箱根ジオパークの特徴と見所

仙石原湿原
仙石原湿原

大涌谷
大涌谷

芦ノ湖
芦ノ湖

 箱根ジオパーク周辺では、太平洋・北アメリカ・ユーラシア・フィリピン海と名付けられた4つのプレートがひしめき合い、その境界面で火山や地震など様々な地学現象を起こしています。
 65万年前に始まった活発な火山活動の結果、多様な火山地形、火山堆積物、火山岩が見られる「火山の博物館」となりました。そして、海岸線から箱根最高峰の神山まで、標高差1,400mの間に、山・湖・川・渓谷・湿原・草原など変化に富んだ自然環境が作り出され、気候も温暖で雨量も多いため、様々な動植物が生息しています。
 また、豊富な湯量と、多様な泉質を誇る由緒ある温泉、特色ある地域文化、産業など様々な魅力を持っています。

 ここでは、箱根ジオパークの魅力を実感できる、代表的な見所(ジオサイト)を紹介します。
 (1)仙石原湿原……湿原に生える様々な植物を観察することができる。かつてこの地にあった湖が、火山活動により埋め立てられて誕生した。
 (2)大涌谷……約三千年前に、神山で起きた山体崩壊によって誕生。現在も、熱い水蒸気や火山ガス(おもに硫化水素や二酸化硫黄)の噴気が見られる。
 (3)芦ノ湖……約三千年前の神山の山体崩壊で、早川の一部が堰きとめられた結果誕生したカルデラ湖。
 (4)箱根関所(国指定史跡)……1619年に徳川二代将軍秀忠が諸大名の謀反に備えるため、芦ノ湖と屏風山の迫る要衝の地に設置(平成19年春に完全復元)。
 (5)旧街道石畳(国指定史跡)……東海道の箱根越えを改善するため、江戸時代に幕府により整備された。一部に往時の石畳が保存されている。

箱根関所
箱根関所

旧街道石畳
旧街道石畳

ジオツアーを楽しむ

 ここでは、箱根ジオパークの魅力を実感できる代表的なハイキングコース(ジオツアー)「箱根火山の生い立ちと植物観察のみち」を紹介します。

【コース概要】
 芦ノ湖─(10分)─箱根ビジターセンター─(60分)─大涌谷─(60分)─神山─(60分)─駒ケ岳山頂駅─(駒ケ岳ロープウェイ7分)─箱根園駅/所要時間:徒歩3時間10分

神山からの展望
神山からの展望

駒ヶ岳からの展望
駒ヶ岳からの展望

 現在も火山活動を続ける大涌谷硫気地帯を経て、原生林の雰囲気を味わいながら神山に登り、駒ケ岳へ縦走するコースです。
 先ずは、芦ノ湖に程近い箱根ビジターセンターに立ち寄って、自然情報や登山道状況を確認しましょう。
 ビジターセンターから歩き出すと、スギやヒノキの森、ブナやミズナラの繁る箱根の豊かな森を経て、今も水蒸気や火山ガスが噴き出す噴煙地へと、景色はダイナミックに変化します。コース上に点在する大きな岩山は、神山の水蒸気爆発の際に崩れた山体の一部で「流れ山」と呼ばれています。
 大涌谷からの登りはきつく感じられますが、春から夏にはアカバナヒメイワカガミやトウゴクミツバツツジなどの花々が、秋にはコミネカエデやオオイタヤメイゲツなどの紅葉が、美しい姿を見せ疲れを癒してくれます。
 箱根火山の最後に出来たという冠ヶ岳にもぜひ足を延ばしましょう。箱根最高峰の神山山頂はブナの森の中にある静かなピークで、その周辺は箱根で最も美しい森といわれています。
 神山から駒ケ岳へ、景色は林から草原へと変化します。なだらかな山頂の草原は、強い南西の風によって作り出された風衝植物群落と呼ばれ、サンショウバラ、ハコネギク、ハコネコメツツジ、ハコネトリカブト等、箱根特有の植物を楽しむことができます。
 駒ケ岳で、360度の大展望を楽しんだ後は、ロープウェイでのんびり下山します。

 箱根ジオパークの魅力を実感できるハイキングコース(ジオツアー)は、他にも外輪山の内側に広がるカルデラの草原を楽しむコースや、東海道一の難所であった箱根旧街道など、まだまだ沢山あります。コースの詳細は、箱根ビジターセンター(0460-84-9981)までお問い合わせください。
 みなさんも是非一度、箱根ジオパークを訪れて大地の息吹を体感して下さい。

長尾峠からの展望
長尾峠からの展望

ハコネギク
ハコネギク

(自然公園財団箱根支部 石原和美)

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バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史?自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

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