池袋から特急電車で73分と好アクセスでありながら、大自然に囲まれた横瀬町は埼玉県西部の秩父市の隣にあり、石灰岩を産出する武甲山の登山の玄関口としても知られています。
人口8,000人弱の小さな町ですが、「日本一歩きたくなる町プロジェクト」を掲げたPRで、美しい景観や街並みの“まちまるごと”を活かしたウォーキングが注目され、観光客が来ています。
しかし人口減少が止まらない状況があり、それを打開するには官民で危機感を共有し「未来を変えるチャレンジを継続すること」が大切であると考えました。とは言うものの小さな町で未来を変えることは容易ではありません。
もともと中心がなく、未来を変えうる力を結集させる施策として、町のヘソ(中心)をつくる(=ゼロイチ)という発想から「中心地づくり・賑わいづくり」を積極的に展開しました。
その取り組みの中核を為すのが横瀬町のフィールドや資産を有効に利用する「よこらぼ」の取り組みで、その成果に着目した他行政から多数の視察が訪れるようになりました。
「よこらぼ」は2016年10月に、持続可能な地域社会を作るために、関わる全ての人が幸せになるプロジェクトを積極的に採択・応援するため設立されました。
企業や団体・個人が、新たなチャレンジやプロジェクトを、具体的にソフトランディングさせる“まちづくりの実践や実証試験“を支援する町の目玉政策で、設置以来、多様な人々による多彩なプロジェクトが実行され、数多くの「新しい価値」を生み出し続けています。
「よこらぼ」がもっとも大切にしていることは、提案者・町民・町の3者それぞれにメリットがあることです。
町と一緒に何かをしたい、地域を活性化させたいと思う方々と気軽に連携を取ることができるプラットフォームとするため、次の点に留意して採択を行っています。
官民連携プラットフォームとなった「よこらぼ」を通じた申請から具現化した事業は70件を越えるだけでなく、人の繋がりやチャレンジ精神の醸成ができつつあります。
なお現在はマイナーチェンジを図るため、新規事業の受付は休止しています。
Area898は新しい交流空間が欲しいとする提案が「よこらぼ」に上がり、JA直売所の跡地を活用し、町民と横瀬町に関わる人たちが交わる“交差点”として2019年4月に設置されたコミュニティ・イベントスペースです。
898はヤクバとの意味を込めて名付けられました。施設は町の直営ですが、フラッと立ち寄って一息ついたり、おしゃべりを楽しんだり、イベントの企画や参加が気軽にできるリアルな空間となっています。
一部コンクリートがむき出し、電気の配線などむき出しの部分もありますが、改修は町民や企画に賛同した方々による手作り感が満載の施設となっており、最終形態ではありません。
町にはこの施設ができるまで、リアルに人と人が交わる“場”がなく、「誰もがチャレンジできる場所を提供し、コミュニティが生まれる場所になってほしい」という町の思いは、着実に住民に伝わり、学生から高齢者、訪問者など多様な老若男女が集い、Area898で開催されるイベントなどをきっかけに行動が促され、自由に発信することで共鳴が生まれ、また新たな活動やイベントが生まれる循環が始まっています。
施設はArea898のほか「横瀬ふれあいプラザ」や(株)LIFULLが運営する宿泊所、一社タテノイトが運営するイベントスペースなどがあり、さらに裏側には子どもに寄り添う新設した「ナゼラボ」、また付近には地元農産物を加工販売する「チャレンジキッチンENgaWa」と増殖が止まりません。
この小さな町を活かすスピード感、その要は間違いなく今回ご案内いただいた富田能成町長であり、その町長のビジョンを次々と具現化していった、まち経営課の田端将伸さんでしょう。こうした町の未来は明るいと感じた視察でした。
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