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「地域の健康診断」バックナンバー

0532024.01.16UP夢にチャレンジできるまち、実現できるまち

自称「日本一チャレンジする町」横瀬町

 池袋から特急電車で73分と好アクセスでありながら、大自然に囲まれた横瀬町は埼玉県西部の秩父市の隣にあり、石灰岩を産出する武甲山の登山の玄関口としても知られています。
 人口8,000人弱の小さな町ですが、「日本一歩きたくなる町プロジェクト」を掲げたPRで、美しい景観や街並みの“まちまるごと”を活かしたウォーキングが注目され、観光客が来ています。
 しかし人口減少が止まらない状況があり、それを打開するには官民で危機感を共有し「未来を変えるチャレンジを継続すること」が大切であると考えました。とは言うものの小さな町で未来を変えることは容易ではありません。
 もともと中心がなく、未来を変えうる力を結集させる施策として、町のヘソ(中心)をつくる(=ゼロイチ)という発想から「中心地づくり・賑わいづくり」を積極的に展開しました。
 その取り組みの中核を為すのが横瀬町のフィールドや資産を有効に利用する「よこらぼ」の取り組みで、その成果に着目した他行政から多数の視察が訪れるようになりました。


チャレンジフィールド「よこらぼ」

 「よこらぼ」は2016年10月に、持続可能な地域社会を作るために、関わる全ての人が幸せになるプロジェクトを積極的に採択・応援するため設立されました。
 企業や団体・個人が、新たなチャレンジやプロジェクトを、具体的にソフトランディングさせる“まちづくりの実践や実証試験“を支援する町の目玉政策で、設置以来、多様な人々による多彩なプロジェクトが実行され、数多くの「新しい価値」を生み出し続けています。
 「よこらぼ」がもっとも大切にしていることは、提案者・町民・町の3者それぞれにメリットがあることです。
 町と一緒に何かをしたい、地域を活性化させたいと思う方々と気軽に連携を取ることができるプラットフォームとするため、次の点に留意して採択を行っています。

  • ①行政権限を生かした法的なサポート(特区申請など)
  • ②民間だけではできない公共への協力要請をサポート
  • ③Wi-Fi等が使える、現地オフィスも利用可能
  • ④町民の協力依頼、呼びかけなどの支援
  • ⑤横瀬町公認プロジェクトとして、広報等が可能
  • ⑥町の広報誌やSNS、Webサイトを利用した広報支援

 官民連携プラットフォームとなった「よこらぼ」を通じた申請から具現化した事業は70件を越えるだけでなく、人の繋がりやチャレンジ精神の醸成ができつつあります。
 なお現在はマイナーチェンジを図るため、新規事業の受付は休止しています。


Area898(エリアはちきゅうはち)

 Area898は新しい交流空間が欲しいとする提案が「よこらぼ」に上がり、JA直売所の跡地を活用し、町民と横瀬町に関わる人たちが交わる“交差点”として2019年4月に設置されたコミュニティ・イベントスペースです。
 898はヤクバとの意味を込めて名付けられました。施設は町の直営ですが、フラッと立ち寄って一息ついたり、おしゃべりを楽しんだり、イベントの企画や参加が気軽にできるリアルな空間となっています。
 一部コンクリートがむき出し、電気の配線などむき出しの部分もありますが、改修は町民や企画に賛同した方々による手作り感が満載の施設となっており、最終形態ではありません。
 町にはこの施設ができるまで、リアルに人と人が交わる“場”がなく、「誰もがチャレンジできる場所を提供し、コミュニティが生まれる場所になってほしい」という町の思いは、着実に住民に伝わり、学生から高齢者、訪問者など多様な老若男女が集い、Area898で開催されるイベントなどをきっかけに行動が促され、自由に発信することで共鳴が生まれ、また新たな活動やイベントが生まれる循環が始まっています。
 施設はArea898のほか「横瀬ふれあいプラザ」や(株)LIFULLが運営する宿泊所、一社タテノイトが運営するイベントスペースなどがあり、さらに裏側には子どもに寄り添う新設した「ナゼラボ」、また付近には地元農産物を加工販売する「チャレンジキッチンENgaWa」と増殖が止まりません。
 この小さな町を活かすスピード感、その要は間違いなく今回ご案内いただいた富田能成町長であり、その町長のビジョンを次々と具現化していった、まち経営課の田端将伸さんでしょう。こうした町の未来は明るいと感じた視察でした。


Area898内部1

子どもたちの拠り所「ナゼラボ」


イベントスペース

チャレンジキッチンENgaWa


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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」 -京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」
  55. 055「「食料・農業・農村基本法」の改正は食料安全保障の強化!?」

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