2017年の訪日外国人旅行者数が約2,869万人となり、韓国や中国などアジアを中心に5年連続で過去最高を更新しました。
訪日観光客の中心をなす中国人観光客の「爆買い」は終息しましたが、相変わらず増加の一途を辿っており、日本政府観光局(JNTO)によると、2018年1月の訪日外国人数も前年同月比9.0%増の250万2,000人と、1月として過去最高を記録しました。この右肩上がりの状況に政府は、2020年開催の東京五輪・パラリンピックの開催という追い風もあり、2020年の訪日客4,000万人とする目標を掲げました。
アベノミクスの成功事例として訪日外国人観光客の消費が伸びている一方で、在日中国人がツアー全てを取り仕切り、違法な送迎や民泊、食事、買い物などコントロールする「同胞食い」が横行し、日本に来ながら日本の経済効果をもたらさず、逆に日本に悪印象をもって帰るという悲しい現実もあります。
こうしたことから観光業界の一部関係者は、縛買いなどを例に、爆発的に増加するだろうが急に客足が途絶えてしまう可能性もあると危惧しています。
急激に伸長する訪日観光客の影響で、大都市部ではホテル等の客室数不足や宿泊費の高騰など深刻な状況となっており、2020年の東京五輪・パラリンピックでは東京や大阪などを中心に約4.4万室の不足が懸念されています。そのため政府は、「住宅宿泊事業法」(民泊新法)を昨年6月に成立させ2018年6月に施行となりました。
同法の施行を急いだのは、訪日観光客の増加に伴う客室不足を軽減する策として自宅やマンションの空き部屋を有償で貸し出す「旅館業法」の規制緩和を行いつつ、近年のマンションなどの「ヤミ民泊」の横行によるゴミや騒音などの近隣トラブルや事故・事件などの問題事案の解決を図り、訪日観光客の増加を狙ったものです。
伸長する訪日客数に比べ、宿泊客数が伸びないという統計ギャップ(消えた訪日客)が生まれており、空港やバスで仮眠するほか、クルーズ船やラブホテルに泊まっていることがわかってきました。民泊仲介業者もそのギャップを部分的に埋めていると言います。
ところがフロント(玄関帳場)を設置しなくとも営業許可が得られるよう規制緩和したにもかかわらず、47都道府県、20政令市、東京23区の約4割にあたる35自治体において現在も条例でフロント設置を義務付けていることが判明し、営業許可を出す自治体に必要な条例改正などを促す模様です。
これまでの訪日観光客は、東京・京都・大阪・福岡といった有名な都市、そして奈良・金沢・岐阜高山、沖縄に偏っていましたが、最近の訪日外国人観光客は個性ある地方都市やディープな農村に足を向けはじめました。
農林水産省ではインバウンドなど農業と観光の新たな連携ニーズへの対応として、農泊を重要な柱として位置づけ、農協観光も民間業者と連携し業務提携をするなど、農泊の推進を進めています。
しかしこの動きはどうだろう?
旅の巨人宮本常一は著書『旅と観光』の中で、「観光のために地元が荒らされてはいけない」と論じていました。
農村が観光地となり、インバウンドによる外貨獲得の経済活動の場となるのではなく、命の生産現場であるという本来の意義や日本の教育再生と捉え、「農家の教育力」を発揮してもらうことに注力することが肝要です。
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