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「地域の健康診断」バックナンバー

0292018.03.06UP農泊を再考する

訪日外国人の滞在傾向が地方に分散

 2017年の訪日外国人旅行者数が約2,869万人となり、韓国や中国などアジアを中心に5年連続で過去最高を更新しました。
 訪日観光客の中心をなす中国人観光客の「爆買い」は終息しましたが、相変わらず増加の一途を辿っており、日本政府観光局(JNTO)によると、2018年1月の訪日外国人数も前年同月比9.0%増の250万2,000人と、1月として過去最高を記録しました。この右肩上がりの状況に政府は、2020年開催の東京五輪・パラリンピックの開催という追い風もあり、2020年の訪日客4,000万人とする目標を掲げました。
 アベノミクスの成功事例として訪日外国人観光客の消費が伸びている一方で、在日中国人がツアー全てを取り仕切り、違法な送迎や民泊、食事、買い物などコントロールする「同胞食い」が横行し、日本に来ながら日本の経済効果をもたらさず、逆に日本に悪印象をもって帰るという悲しい現実もあります。
 こうしたことから観光業界の一部関係者は、縛買いなどを例に、爆発的に増加するだろうが急に客足が途絶えてしまう可能性もあると危惧しています。

課題の民泊

 急激に伸長する訪日観光客の影響で、大都市部ではホテル等の客室数不足や宿泊費の高騰など深刻な状況となっており、2020年の東京五輪・パラリンピックでは東京や大阪などを中心に約4.4万室の不足が懸念されています。そのため政府は、「住宅宿泊事業法」(民泊新法)を昨年6月に成立させ2018年6月に施行となりました。
 同法の施行を急いだのは、訪日観光客の増加に伴う客室不足を軽減する策として自宅やマンションの空き部屋を有償で貸し出す「旅館業法」の規制緩和を行いつつ、近年のマンションなどの「ヤミ民泊」の横行によるゴミや騒音などの近隣トラブルや事故・事件などの問題事案の解決を図り、訪日観光客の増加を狙ったものです。
 伸長する訪日客数に比べ、宿泊客数が伸びないという統計ギャップ(消えた訪日客)が生まれており、空港やバスで仮眠するほか、クルーズ船やラブホテルに泊まっていることがわかってきました。民泊仲介業者もそのギャップを部分的に埋めていると言います。
 ところがフロント(玄関帳場)を設置しなくとも営業許可が得られるよう規制緩和したにもかかわらず、47都道府県、20政令市、東京23区の約4割にあたる35自治体において現在も条例でフロント設置を義務付けていることが判明し、営業許可を出す自治体に必要な条例改正などを促す模様です。

農家民泊は観光でなく、教育の場

 これまでの訪日観光客は、東京・京都・大阪・福岡といった有名な都市、そして奈良・金沢・岐阜高山、沖縄に偏っていましたが、最近の訪日外国人観光客は個性ある地方都市やディープな農村に足を向けはじめました。
 農林水産省ではインバウンドなど農業と観光の新たな連携ニーズへの対応として、農泊を重要な柱として位置づけ、農協観光も民間業者と連携し業務提携をするなど、農泊の推進を進めています。
 しかしこの動きはどうだろう?
 旅の巨人宮本常一は著書『旅と観光』の中で、「観光のために地元が荒らされてはいけない」と論じていました。
 農村が観光地となり、インバウンドによる外貨獲得の経済活動の場となるのではなく、命の生産現場であるという本来の意義や日本の教育再生と捉え、「農家の教育力」を発揮してもらうことに注力することが肝要です。

教育の場として活用されている農家民泊


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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」 -京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」
  55. 055「「食料・農業・農村基本法」の改正は食料安全保障の強化!?」

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