地域の健康とは「個人や家族の健康」と「コミュニティの健康」「経済・雇用の健康」のバランスで成り立っており、住民生活はその重なり合うなかに住民生活が営まれています。
しかし現在はあらゆる場面での分断が進み、いつ自分に降りかかるかもしれないコロナ禍に利己的になり、地域は疑心暗鬼で信頼関係が薄らいできています。
最前線で命を賭して戦う医療関係者への差別や感染者捜し、背に腹を変えられず開けている店舗を誹謗中傷するなどヒステリックな現象が増加しました。
支え合ってきたコミュニティでさえ、分断も始まりコミュニティが危機を迎えています。
もしかすると今後はアフター・コロナでなく、ウィズ・コロナ(コロナとの共生)の時代かもしれません。こうした問題に気づいた人が、自らグループを作り、利他の精神の元に、医療現場や福祉ほか様々な場面で活動し始めました。
人もモノもエリアの移動さえ止まった日本。人材や良い資源に恵まれていても、共感・共有のないバラバラな取組では、地域の暮らしや経済の再生はできません。
コミュニティ再生の初動では、自然・文化・教育・経済・生命・健康など極めて多様な観点からの総合的な探求が必要であり、そうした中で、10、20年後も暮らしたい地域としての経営を考える時期がきています。
お米は収穫するまでに1万℃の累積温度が必要です。コミュニティが熟成するにも長い年月が不可欠ですから、時間をかけて癒やすしか方法はありません。
この厄災で皆さんが気づいたことは、自分や家族の命、暮らしを守るのは自分しかいないということでしょう。
旧来の日常生活はアフター・コロナで戻ってきません。さらにセカンド、サードインパクトが訪れるかもしれないのです。そのときにまったく新しい世界が出現するでしょう。
そのときまでに疲弊した地域を住民と共に再生させるツールとして、自前で稼ぎつつ地域貢献をする「稼ぐ役所」の創設が急がれます。
これからはコロナ禍のクラスターでなく、地域の絆クラスターが必要なのです。
組織は地域に埋没したニーズやウォンツを掘り起こしつつ地域経営の理念を共有し、再生の基盤づくりを進めるため、住民と産・官・学・金を結びつけ地域の「共創の場」を構築していく扇の要になることです。
産業・福祉・教育や暮らしなどに潜む、様々な地域課題を解決する組織として、多様な主体の参画を促し、横断的・総合的に調整しプロデュースする役割を担うことが大切となるでしょう。特に地域に不足する人材、知識、デザイン、マネジメント、資金調達ほか、複数のリソースを補填することを目指さなければなりません。
行政への依存体質から抜け出し自立することが生き残る道です。
ドイツには志を同じくする7人以上の構成員で設立できるフェアアインという団体(法人)が認められています。いわゆる住民が全員参加を義務づけられるような活動はではなく、自らの想いを叶える自由参加型の活動団体で、営利・非営利に限らず何でもありの活動です。
これからはマネーファーストからヒューマンファーストに地域自ら変貌しなければなりません。地域エゴでなく「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識で、住民が考え、共有し、自ら行動するためのサードセクターの構築が持続する地域の条件となります。
目先の戦い方に巻き込まれることなく、多様な主体による小さなサイクルを創り出して行きましょう。
中国のことわざに『入りを量りて、出ずるを制する』とあります。つまりリーケージ(漏れる)を減らし、域内自給率を向上させることが、地域再生の大事な点なのです。
そのために自地域において総合的なアプローチから“人・物・金を地域内循環させるシステム”を構築していくことが重要です。
まずは地域内での買い支えをするバイ・ローカル運動を進めましょう。コロナ禍で地域に根ざした飲食店や商店が消えてしまうことは、自分の暮らしが不便になるだけでなく買い物弱者を増加させることになります。
明日の地域を支え合うため、今は買い物や食事、テイクアウトで支援の輪を拡げてください。
そしてアフター・コロナに向かうため、地産地消や域内調達率を高めましょう。
まずは行政が先導して学校給食、公立病院、福祉施設などの公共施設から域内調達率を高める。その調達配送システムを確立する中で、域内の店舗、旅館、民宿の域内調達率を高め、域内流通を活発にする。これで地元の生産者から流通・小売り業者などを支えることができるはずです。
さらに食品だけでなく広域の同一経済圏で工業製品の原材料の域内調達率を高めたり、周辺の業種との連携強化を図ったりして、手を取り合い支えあう経済関係づくりを緊密にすることで、ノウハウや人材の域内環流ができれば仕事も増加するでしょう。またそうした地域に魅力を感じた企業や人材もやってくるはずです。
地域エコノミストの藻谷浩介氏は、儲けた金が地元で廻るには地元本社の企業が増えること。地域内の決裁権限が増えることが最終的なゴール。農業は自分で決められる。この地元で決められることが大切であり、「地域に根差した本物が生き残る時代」になったと言います。
ローカルこそ最もエコで持続的社会の基礎です。環境保全やエコロジーが叫ばれる現代で、地産地消が進めば、遠方まで物資を運ぶ必要もなく流通におけるCO2削減にもなり、地域内循環で資産の環流が進み、地域活性化に繋がります。
政府が旗を振った「働き方改革」やダイバーシティの取組は、現場での浸透力が今ひとつで実際の進捗度に相当なギャップがあり、コロナ禍で慌ててテレワークやWeb会議、オンライン授業へシフトしています。ところが過去の常識で生活し仕事をしてきた国民は右往左往するのみで、業務は休業中が実態です。
昭和に確立した年功序列で出世とか生涯一企業などはあり得なくなります。毎日同じように満員電車で通勤する形も変わるでしょう。好まなくても新しい世界や働き方と向き合わざるを得なくなりました。自分の常識(しがらみ)を打ち破る重要な転換点が訪れたのです。「実績がない。どこもやっていない」という考えでは、社会変革についていけなくなります。因習や前例踏襲を残したままで、新しいことを考え行動しようとしても、自ら「壁」を作っていては、なかなか良い考えが出ないし、良いアイデアも足を引っ張られ、イノベーションは起きないのです。
小松左京氏の小説「復活の日」では、南極大陸だけ感染を免れ人類は生き残りました。極端な話、「ポツンと一軒家」が人類の唯一の救いとなるというあらぬ空想してしまいます。
コロナ禍で「移動減少社会」が顕在化してきました。ゆえに地域の仕掛けで大切なのは補助金依存やイベントで人を集めることでなく、コトに共感し助けてくれる新たな互助の価値創造です。
アフター・コロナには今までの常識は通用しません。今までのような定式化したモデルはありませんが、ヒントや選択肢は目の前にあります。
3.11東日本大震災以降、顕著となった「エシカル消費(応援消費)」はその一つであることは、現在の飲食店テイクアウトでもわかります。住民と直結する市町村に「ふるさと納税」も一つの方向でしょう。
AIでは日々の営みの中で、地域を保全している住民の苦労はわからないし、本物の笑顔は作れません。人は噂で動きます。美味しい店に人が押し寄せるように、「あのまちは人が親切だよ」とか「あそこの食事が旨かった」と耳に入れば、良い噂に敏感な旅人がいずれ訪問してくれる可能性が高まります。
ゆえに地域の特性や環境をベースにした新たな仕組みを作り、自らの資源価値を創造すれば、内外の人々が共感し成長を助けてくれると信じています。
今回のコロナ禍が、コミュニティにシナジー効果を継続的に与えられる「利他ビジネス」を創発し、循環する社会を構築するきっかけになることを願います。
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