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「地域の健康診断」バックナンバー

0312018.08.28UP一人の覚悟で村が変わる-京都府唯一の村、南山城村-

道の駅全景
道の駅全景

 2017年の京都府山城地域12市町村の観光入り込み客数が伸びています。特に南山城村は3倍以上増えて約87万人となっています。牽引役を果たしているのが、昨年4月に開設し、63万人の来客がある道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」です。
 京都府の最南端で三重・滋賀・奈良県の県境に位置する、「京都府唯一の村」である南山城村は、日本創成会議が発表した『消滅可能性都市』の17番目にランクインする不名誉なレッテルを貼られ、むらづくり推進課長の森本健次さんは、村が持続するために何をどうしたら良いか、日夜考え動いていました。
 数年前に月ヶ瀬駅近くで線路下をトンネル掘削する国道の改良工事があり、残土処理で埋め立てたところへ道の駅をオープンし、ここを拠点に村の活性化の起爆剤にしたいと村長の一声で道の駅計画が立ち上がりました。

村で採れたものを村で売る

シンボルマーク
シンボルマーク

 道の駅設置運営準備室に配属された森本さんは、むらづくり活動で築き上げた内外の人材ネットワークを繋げ活用するための丁寧な準備を進めていきました。
 とかく全国の道の駅は、地元産だけでなくあらゆる商品を置く傾向があり、ともすると地元のオリジナル商品より他地域やパッケージの地域名を変えただけの土産品が並ぶケースが多々あります。しかし道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」は、“確かにこの土地で産まれたもの”を「土の産(うぶ)」と銘打ち、道の駅は村人が営み続けて産まれたモノやコトを発表する場「村のダイジェスト版」とするコンセプトとしました。
 南山城村は、宇治茶の主産地です。京都府内の4分の1に当たる約800トンを生産し、府内第2位の生産量を誇ります。しかし昨今ではペットボトルのお茶が席巻し、急須でのお茶の淹れ方など若者はわからないのですが、森本さんはあえて村内約80戸が生産するお茶をハイパーコンテンツとしました。
 とは言うものの、宇治茶を名乗っても村は認知されません。そこで「村茶」と命名し、普通のお茶屋さんでは売らない個性的なお茶や、ここしかないお茶も取り揃えるとともに、商品開発では高知の迫田司氏にデザインのアドバイスを受け、『村茶パウンドケーキ』や『村抹茶ソフトクリーム』、ペットボトル茶『ちゃどころ茶むらちゃ』ほか、様々な関連商品を開発し、現在道の駅の人気商品となっています。

道の駅の内装と商品レイアウト
道の駅の内装と商品レイアウト

道の駅の内装と商品レイアウト

腹をくくれ!

 8年前に道の駅設置の特命課長となった森本さんは、モデルとしたい高知県四万十町の「道の駅四万十とおわ」へ研修に出たことで転機が訪れました。かねてより一所懸命立ち上げても公務員は、最後まで責任をまっとうできないと苦慮していましたが、「道の駅四万十とおわ」の畦地履正氏の最初の一言「お前が腹くくるしかないやろ!」が、退路を断つ決断を促しました。村長から翻意され、取りあえず2015年から地域商社『(株)南山城』へ代表取締役として出向。2016年3月に31年間の役所生活を後にしました。この覚悟が役場を始め生産農家ほか住民を一つにまとめる力となり、2017年の開業にこぎ着きました。
 役所時代に廃校を使った村キャバ「月世界」など役所としては相当ユニークな取組をしてきた森本さんの「やり抜く力」は格別です。道の駅をモノ・コト・ヒトのプラットフォームとして、村の産業・観光振興を進め、働く場所づくりや移住定住といった波及効果を生み出し、さらに村人の生活に役立つ場とするということを明確で簡潔に指し示してきました。「村茶」をそして「村」そのもののブランド化を図る南山城村。しかし(株)南山城のシンボルマークは村のしがらみを突破する姿勢を表現し、道の駅の従業員も地元の若者が多く働いています。
 『村で暮らしつづける』ことを実現できる村という目標を描き、それに沿った行動を誘発する役目を果たす南山城村のリーダーと道の駅の今後に目が離せません。

村の茶園風景
村の茶園風景

退路を断った森本健次さん
退路を断った森本健次さん


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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」-京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」

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