2017年の京都府山城地域12市町村の観光入り込み客数が伸びています。特に南山城村は3倍以上増えて約87万人となっています。牽引役を果たしているのが、昨年4月に開設し、63万人の来客がある道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」です。
京都府の最南端で三重・滋賀・奈良県の県境に位置する、「京都府唯一の村」である南山城村は、日本創成会議が発表した『消滅可能性都市』の17番目にランクインする不名誉なレッテルを貼られ、むらづくり推進課長の森本健次さんは、村が持続するために何をどうしたら良いか、日夜考え動いていました。
数年前に月ヶ瀬駅近くで線路下をトンネル掘削する国道の改良工事があり、残土処理で埋め立てたところへ道の駅をオープンし、ここを拠点に村の活性化の起爆剤にしたいと村長の一声で道の駅計画が立ち上がりました。
道の駅設置運営準備室に配属された森本さんは、むらづくり活動で築き上げた内外の人材ネットワークを繋げ活用するための丁寧な準備を進めていきました。
とかく全国の道の駅は、地元産だけでなくあらゆる商品を置く傾向があり、ともすると地元のオリジナル商品より他地域やパッケージの地域名を変えただけの土産品が並ぶケースが多々あります。しかし道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」は、“確かにこの土地で産まれたもの”を「土の産(うぶ)」と銘打ち、道の駅は村人が営み続けて産まれたモノやコトを発表する場「村のダイジェスト版」とするコンセプトとしました。
南山城村は、宇治茶の主産地です。京都府内の4分の1に当たる約800トンを生産し、府内第2位の生産量を誇ります。しかし昨今ではペットボトルのお茶が席巻し、急須でのお茶の淹れ方など若者はわからないのですが、森本さんはあえて村内約80戸が生産するお茶をハイパーコンテンツとしました。
とは言うものの、宇治茶を名乗っても村は認知されません。そこで「村茶」と命名し、普通のお茶屋さんでは売らない個性的なお茶や、ここしかないお茶も取り揃えるとともに、商品開発では高知の迫田司氏にデザインのアドバイスを受け、『村茶パウンドケーキ』や『村抹茶ソフトクリーム』、ペットボトル茶『ちゃどころ茶むらちゃ』ほか、様々な関連商品を開発し、現在道の駅の人気商品となっています。
8年前に道の駅設置の特命課長となった森本さんは、モデルとしたい高知県四万十町の「道の駅四万十とおわ」へ研修に出たことで転機が訪れました。かねてより一所懸命立ち上げても公務員は、最後まで責任をまっとうできないと苦慮していましたが、「道の駅四万十とおわ」の畦地履正氏の最初の一言「お前が腹くくるしかないやろ!」が、退路を断つ決断を促しました。村長から翻意され、取りあえず2015年から地域商社『(株)南山城』へ代表取締役として出向。2016年3月に31年間の役所生活を後にしました。この覚悟が役場を始め生産農家ほか住民を一つにまとめる力となり、2017年の開業にこぎ着きました。
役所時代に廃校を使った村キャバ「月世界」など役所としては相当ユニークな取組をしてきた森本さんの「やり抜く力」は格別です。道の駅をモノ・コト・ヒトのプラットフォームとして、村の産業・観光振興を進め、働く場所づくりや移住定住といった波及効果を生み出し、さらに村人の生活に役立つ場とするということを明確で簡潔に指し示してきました。「村茶」をそして「村」そのもののブランド化を図る南山城村。しかし(株)南山城のシンボルマークは村のしがらみを突破する姿勢を表現し、道の駅の従業員も地元の若者が多く働いています。
『村で暮らしつづける』ことを実現できる村という目標を描き、それに沿った行動を誘発する役目を果たす南山城村のリーダーと道の駅の今後に目が離せません。
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