地域の健康診断と称して連載していますが、“地域の健康”とはなんでしょう。
私はいつも健康な地域に欠かせない3つの健康要素についてお話しています。1つは自分や家族の心身の健康、2つ目は産業や雇用といった経済的な健康、そして3つ目はコミュニティの健康。それらの重なり合うなかに、住民生活が営まれているのです。ですからこの3つのバランスのどれか1つでも崩れると地域は不健康になるというものです。
心身の健康はもちろんですが、地方では雇用や仕事の減少で、若者が流出しています。農山漁村であれば農林漁業だけでは暮らせなくなってきました。人口が減少すればコミュニティが機能不全に陥ります。災害対応や普段の安心・安全ほか様々な面で支障が出てきます。そして3つの輪全体が縮小していくと過疎高齢化という問題が発生。現代の地域が抱える病巣そのものになっていくわけです。
全国の公立学校の廃校数は2004年から2015年まで毎年400校を越え続けています。2012年度は小学校419校と中学校117校、2013年度には小学校が346校で中学校は104校。この流れは2016年も止まりません。
政府は地方創生の中で、公立小・中学校の適正規模化を明示している一方で、小規模校の活性化や休校した学校の再開支援もするとしています。一見通達との整合性に疑問が生じますが、公共施設をはじめ経済活動の主体を集中させる「小さな拠点づくり」の中の括りであり、実際は小規模な学校の統廃合を推進しているのです。
少子化の進展による児童・生徒数の減少は教育上よろしくないと、各自治体の教育委員会は学校統廃合の旗を振り、PTAはその説明に流されて賛成に回る傾向もあります。
私は、地域の学校が消えることにより地域が疲弊し消えていく各地の姿をつぶさに見てきました。
行政効率や複式学級だけは避けたいとする学校の統廃合は、地域を切り捨て、消滅させる施策でしかないのです。
ある地域で保育園の統合についての話を聞きました。
「今の場所に保育園があるから我が子を預けてパートに行けるが、遠くなれば仕事を辞めないといけない」
「子どもが保育園にいく年齢になったので、自分が生まれ育った環境の良い田舎に引っ越してきた。自分が通った保育園が無くなれば、Uターンした意味が無くなる」
そんな嘆き声です。
政府は2060年に特殊出生率を2.0まで引き上げたいとしていますが、待機児童の解消どころか保育園が近くにあるとうるさいから建設反対という大人たちがいる限り、2.0は無理難題を女性たちに押しつけているとしか思えません。
地方創生は子どもを増やすプランでもあります。帰ることができる地域がある、好きな地域で暮らしたいを実現させることが重要です。ところが肝心の自治体が、帰る魅力を削ぎ、働く環境を悪くしているのでは、どれほど素晴らしい再生計画を立案しても画竜点睛を欠きます。
予算が無いから学校統合するということは、行政効率が悪いから「ここに住むことを止めよう」と言っていることと同様なのです。
これからは子育てや地域の担い手づくりへ予算の重点配分を行い、持続する「ふるさと」としての地域を創ることが、大人たちの役目ではないでしょうか。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.