MaaS(Mobility as a Service)とは、あらゆる交通手段を統合し、ワンストップで予約・決済・利用できるようにする移動サービスの概念です。
国土交通省の「新モビリティサービス推進事業」がスタートしたこともあり、大都市から中山間地など様々な地域で実証実験が花盛りです。いずれは電車やバスなどの公共交通機関から、タクシーやライドシェア、シェアサイクルほか大都市だろうと山間地だろうと全ての移動手段がスマホアプリ一つで行うことができ、しかも駐車場やガソリンスタンド(その頃はガソリンスタンドでなくEVスタンドかもしれません)ともアプリ一つで連携するシステムを想定しています。
現在、都市部ではタクシーの配車や、カーシェア、サイクルシェアなどで単独の予約・決済システムが稼働していますが、これが全ての移動手段に統合されるというイメージでしょう。
ただし国交省が定義するMaaSは、5G通信やキャッスレスなどの環境整備が不可欠であり、中山間地域にはとてもハードルが高いといえます。もちろんそうしたハード整備を行う国の支援事業は存在しますし、大手の通信会社や自動車メーカー、運輸・交通事業者も提案してくれます。
過疎地では赤字が常態化している路線バスのデマンド化が進んでいますが、自治体が運営補填を現在のように続けて、存続させて行くには限界があります。
苦しい運営を強いられている第三セクター鉄道や廃線が囁かれるローカル鉄道もMaaSの取り組みに入れ、地域の足を守ることも重要です。公共交通そのものを維持することは、移動の足を持たない住民の命の守る大切なインフラです。
現在はコロナ禍ということもあり、MaaS促進のスピードが緩んでいますが、Withコロナでは観光や産業、暮らしの再生で不可欠な要素となると見ています。
昨年、香川県三豊市の山下市長に、三豊市MaaS構想の取り組みの一端を伺う機会をいただきました。
全国でも珍しい7町の対等合併により誕生した三豊市は、瀬戸内海に突き出た荘内半島や島嶼部と三豊平野が拡がる山・海・川・島で構成されています。
コンパクトな市ですが、観光では2次3次交通や移動手段のない高齢者の課題、既存交通の活性化など全国の地方と同様の課題を有していました。三豊市ではこの旧7町の歴史を大事にしながら、「多極分散型ネットワークのまちづくり」をビジョンとして掲げ、「MITOYO MaaS PROJECT」構想のもと、様々な形でMaaSの取り組みが進められています。
一つは隣接する琴平町と連携し、モネ・テクノロジーズが開発した次世代移動サービスを活用して、観光地や市役所、商業施設などを経由する観光客を対象とした「うどん空港シャトル」を運行しています。スマートフォンやパソコンで車両の位置情報やダイヤなどが確認できるなど広域で進めています。さらに観光客向けのサービスとして、将来的には病院などの乗降地点の追加やオンデマンドバスの運行を見据え、日常生活の中で便利な交通手段として活用できるよう検討しています。
市長は昨年、「キャッシュレスで市民が乗降することで、移動データを取得し、次の一手に活用でき、地域交通システムの改善に繋がると考えています」と話します。
もう一つが「福祉介護型MaaS」です。昨年10月にダイハツ工業と連携協定を締結し、福祉介護事業が持続できる環境の構築を目指しています。
この事業では、福祉事業者のバス運行が朝晩に多く日中は空いている(市長)として、その遊んでいるバスを高齢者の生活移動支援などの新たなサービスに使用することで、事業者負担を減らし、地域の移動需要を最適化しようとするものです。
さらに「グリーンスローモビリティ」では、ヤマハ発動機と組んで、半島や島嶼部の移動に「超小型モビリティ」(自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人?2人乗り程度の車両)を導入し、観光客誘致や狭いエリアでの買い物難民対策として、住民の足に活用しようとするものです。
このように観光だけの狭い領域でなく、地域交通の総合戦略にMaaSを据えることで、住民生活を向上させ、豊かな暮らしを維持する大切な施策になると感じました。
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