交通に不便な山村では、子どもが高校へ通う年代になると街に出て行き、後に残るのは空き屋と遊休農地という傾向が昭和以降から今も続いています。地域の子どもを減らし、担い手を減らして、何を獲得したのでしょうか。
地方自治体は大都市の住民に住みやすい、子育てしやすいから移住しませんかとPRします。ところが顧みれば保育園や学校の閉校と教育や子育て環境を減退させる矛盾した施策をしており、受入側の意識改革が必要です。
「塩の道として栄えたときに各地から移住し、元々の住民も入れ替わった。だからこれからも新しい住民に変わっていけば良い」と長野県小谷村大網集落の住民が呟きました。
持続的社会を念頭に置いたとき、人口増加型パラダイムによる地域発展ではなく人口減少を前提として、あらゆる方向から少子・超高齢化社会に対応する必要な施策を導入することが不可欠となっているのです。
多くの自治体では、自地域の課題を自ら考え行動し解決することが、ますます重要な時代であるにも係わらず、住民・地域・行政のいずれかが、リーダーシップを発揮してくれるだろうと思っており、結果、三すくみの状況が続き、活動の停滞を招いています。
地域で最も重要な資源は『人』です。中でも近年では、「新しい常識への挑戦」ができる集落や地域リーダーが不足していることが浮き彫りになってきました。
地域の負のスパイラルに歯止めをかけ、ワンチームとして勝つためには1人ひとりの意識改革が必要となります。
全国各地のお手伝いをしていると、自分の地域を盛り上げたいと思う方にたくさん出会います。その方々は大概がポジティブで「何か面白いことをやろう、地域を元気にするぞ」と動いています。またそうした地域には、ノウハウや人材が集まり、地元の叡智と繋がり、地域になかった新たなアイデアが生まれ動き出しています。
2008年に「限界集落対策モデル地区」に指定された梶並地区。そんな梶並地区に定年退職してUターンしてきた富阪皓一さんは、地区の1/3が空き家となる状況に愕然としました。何とかしなければ生まれ育ったふるさとが消える。と考えていると、幸か不幸か地区の様々な役職が次々と回ってきたのです。田舎でのんびり暮らしたいと思う方は注意願いたいが、農山漁村は結構忙しい生活が待っているのです。
しかし富阪さんは渡りに船と動き出します。
まず始めたのは、空き家を改修し移住希望者に最長1年間貸し出す「お試し住宅」事業でした。1年間の「お試し」ができる地域は現在でも少なく好評のようで、伺ったときも新たに入った家族をご近所に紹介するため、全員の名前を印刷したティッシュペーパーボックスを用意していました。
前回取り上げた藤井裕也さんは「地元に育ててもらった」と言います。もちろん住民の100%が諸手を上げて歓迎してくれ、面倒をみてくれた訳ではありませんでした。
藤井さんを含め、こうした移住者が頼りにしたのが、受入でボランティアとして、何から何まで徹底的に支援した、梶並活性化推進会会長の富阪さんでした。
「空き家を放置していればマイナス、活かせば宝。その上に遊休農地もある。資源と捉えればうまくいく」という考えを地区住民と共有することで、移住者が梶並で暮らしやすい環境づくりを進めながら、1年を超えて定住したい家族のために新たな空き家を見つけ紹介をしているのです。
美作市に入った地域おこし協力隊の定着率が高いのは、こうした地元リーダーの徹底した面倒見の良さでしょう。
移住定住を推進するには、地方自治体のトップの役目はとても大事です。それは地域の魅力を創ることへの投資です。その投資先は地域の人財育成であり、対象は『暮らす人』です。景観や暮らしやすさなど地域環境や、居住地の魅力的な人に惚れてもらえれば外から地域にやってくるのです。
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