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「地域の健康診断」バックナンバー

0382020.05.12UPコロナ禍後の未来(1)

崩壊させた厄災は「バベルの塔」の再来か

「バベルの塔」(ピーテル・ブリューゲル、ウィーン・美術史美術館蔵)

「バベルの塔」(ピーテル・ブリューゲル、ウィーン・美術史美術館蔵)

 世界はグローバルの名の元に、科学技術の向上でインターネットやサプライチェーンほか様々な関係性で繋がってきました。人々の距離もどんどん近づいていく中で、突然コロナウイルスという一つのウイルスが全世界に拡散し、パンデミックやロックダウンで生活を崩壊され、人々は死の恐怖に怯え、為す術もなく家に籠もらざるを得なくなりました。
 神は天に達する塔を建てようとした人間の行いに「一つの言語を話していることが問題だ」としたように、今般はインターネットという世界共通言語が、神の琴線に触れてしまったのでしょうか。現在、世界各国は国を閉じ、輸出入をストップ。感染を防ぐためマスクで顔を覆い、ソーシャルディスタンスで、密着しないコミュニケーション不全の世界が作り出されており、まさに神になろうとした人間を戒めたバベルの塔の再厄災ではないかと感じてしまいます。


人と人の関係が変わる

 昔、某広告機構のCMで「人は人から育てられる」というキャッチコピーがありました。多くの有識者や地域づくりの先達は「地域づくりは人づくりに尽きる」と語ります。
 人間が人間である限り、人は人との「つながり」を求めています。いくら情報手段が発達しようと生身の人間はリアルな関係性を失うことはできません。
 居酒屋などで肩を寄せ合い、下世話な話から高尚な話でコップを傾け、盛り上がりたいところですが、自粛のためなかなか機会が持てないことから、「オンライン飲み会」が最近の流行です。会えない友人と関係を維持したいという思いが募っているのでしょう。この流れはアフター・コロナでも継続していくでしょう。
 現在の状況では、いつコロナ禍が収束するか不明です。しかし確実に言えることは「世界は変わる」と言うことです。もちろん自分の身辺も大きく変わるでしょう。人に会わなくてもネットを介して生活できる。そうした変化がフェイス・トゥ・フェイスで信頼関係を高めてきた人間関係を希薄にするのではないかと心配しています。人間関係が希薄となれば、人の痛みや苦しみが理解できなくなります。
 しばしば相手とコミュケーションが取れず、愚かな戦争に突入しましたが、人間は言葉を獲得し共感される環境で成長してきました。人と人の接触機会を極力削減しなければならない現状を鑑みると、人間は地球上で全ての生き物と共生していくことができるのでしょうか。

教育は大丈夫か

 学び舎の休校で未来を担う子ども達が心配です。有り余る時間が与えられたものの友達と会うことや外遊びもスポーツできず、ゲームに興じ与えられた宿題をやる受動的な状況です。現在は、勉強は塾で、学校は勉強と言うより子ども達の社会生活の一部です。家庭も行動規範を学ぶところ、そして託児所的な学校に期待していたことが見えてきました。とは言うものの教育の場は付け焼き刃のオンライン授業を模索するも、本当にできているのは僅かで、全国で教育格差が起きており、先が見えないのが現状です。
 人との分断により私が心配するのは、「コミュニケーション障害」や「対人恐怖症」の子どもが増加するのではないか、あるいは他人を非難したり攻撃する、コミュ障にならなくても他人との心の距離が離れて他者を思いやる心が希薄になる、などコロナ禍がトラウマになるのではないかと考えるわけです。聴覚障害の方々は手話だけでなく、口の動きを読むことで相手が何を話しているかを理解します。聴覚障害者に限らず相手の口の形や表情がマスクで見えないと不安になります。顔の表情はコミュニケーションだけでなく相手と共感するための大事な要素なのです。
 子ども達が社会的距離を取り、相手の表情もわからない中で自己肯定感すら育めない、荒んだ未来を想像したくありません。
 この想像を覆すには、親が範を示すことだと思います。自宅に籠もり稼ぎもままならず、外に出れば監視社会化しています。イライラ感から家庭でのコミュニケーション不全となれば、DVなどに発展し、それが子どもに伝染します。
 まずは夫婦が朝晩の挨拶や「ありがとう」の言葉がけの実践です。コミュ障を放置すると20年後30年後、仕事ができない、友人や恋人ができない、そしてうつ病や引きこもりなど精神障害を発症こともあるのです。
 今は自粛、自粛で周りをみて過敏になっています。
 子ども達は未来の希望です。この騒動で様々な経験を子ども達から取り上げないこと、そして将来の夢や未来を奪わないで欲しいと願っています。だから家庭から優しく愛情たっぷりに接して子どもたちを守り、『幸せなコト』を共有できる家族になってほしいと願っています。

コロナ禍後の未来(2)に続く

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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」 -京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」

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