2027年開通予定のリニア新幹線の駅ができる長野県飯田市。長野県内への経済効果は約1兆円と2014年2月に県が発表しました。?田駅の乗降客数も一日5,300人と試算していますが、果たしてどうでしょうか。人口10万ちょっとの中規模地方都市で、有名観光地や大企業は皆無です。立派な駅ができても乗降する必然性がなければ客は降りません。
こうした状況下で、ひとつの市民団体がリニア新幹線の開通に向かって新たな試みを始めました。飯田の市民は昔から「自ら考え行動する」自立心旺盛な気風があり、様々な活動を展開しています。2001年に設立した市民グループ「IIDAWEVE」(代表:伊藤茂雄さん)もその一つ。求心力が失われた中心市街地を市民の楽しみや期待が集積される「まち」にしようと、音楽コンテスト(Music Wave)や自主映画上映(Cinema Wave)、走る(Ranners Wave)、歩く(Walking Wave)、有機野菜を繋げる(やさいWave)、自転車(Cycling Wave)など様々な取り組みで市街地の活性化に貢献しています。
代表の伊藤さんは「生まれ育ったところなのに知らないことが多すぎる」との思いから、2014年4月に今までになかった新しい活動として「ワカモノビズウェイブ」の参加を募りました。
「ワカモノビズウェイブ」は、未来を担う若者と共に“しごと”を楽しく“考え”“話し”“準備する”プロジェクト。具体的な事業構想プロジェクトを進めると共に、地域内外の若者との繋がりを意識したプラットフォームづくりを進めることを考えたのです。
若者を対象に「地元をもっと知ろう」と呼びかけ、勉強会を重ねる中で、2014年12月には具体的な8つのプロジェクト(夢プラン)を発表するまでに至りました。
そして早速に動き出したのがプラチナのように輝く「城下町いいだ」を再生しようという「城下町再生プロジェクト」でした。
コトの起こりは浅草で人力車夫をやっていた佐藤歩さんが、?田にIターンしていたこと。以前から?田で人力車をやりたいと考えていた佐藤さんと城下町を勉強して昔は人力車が走っていたことを知ったプロジェクトメンバーの出会いが触媒となって、「人力車事業」があっという間に具現化したのです。
12月下旬には、伊藤代表が佐藤さんの友人である浅草の「東京力車」に赴き、?田で人力車をやりたいという熱い思いを語りました。
その思いが東京力車の共感を得て、3台の人力車を譲り受けたのに加えて、引き方からお客さんへの気遣いまで細かな指導をしてもらえることになりました。
2015年に入って、人力車を走らせたいと思うものの営業ベースに乗せることの難しさから懸念を示していた佐藤さんを伊藤代表が口説き落として、若者3名を車夫として確保し、有志の出資による「?田龍車」(佐藤歩代表)を発足しました。
1月下旬には株式会社プラネス東京力車の代表取締役 前川博之さんを?田に招いて、モデルの3コースの下見を兼ねた実地指導を受けて、2015年3月末の営業開始に向けた準備が着々と進んでいます。
IIDAWEVEの伊藤代表は、人力車は人と人のふれあいができる良さがあると言います。
「ですから、この事業には地元の人が?田を知る「地域人力車」という面と、観光客に?田の良さを感じてもらう「観光人力車」という2つの面があって、それらを両輪にした事業として進めていきたいのです。東京力車から譲っていただいた3台の車両に加えて、地元の鉄工所でもオリジナルの人力車を試作しているところです。将来は?田で人力車を製造したり、電動アシスト人力車を導入して坂の街をアピールしたり、女性車夫も入れたりしたいのです」
今後、リニア沿線の駅全てに人力車を配置して、互いに連携できれば、ハイスピードのリニアと人力車という面白い取り合わせの移動が可能になります。自然景観と人力車のおもてなしは、世界中から訪れる観光客を視野にPRができると夢と語ってくれました。
ちなみに、佐藤歩さんの親は将棋名人なのだそうです。だから「歩」という名前を付けたのではないかと伊藤さんは言います。
「歩(ふ)が竜飛へと成り上がるように、佐藤さんが?田で人力車をやるのは必然なのですよ」
伊藤さんはにこやかに話してくれました。
リニア以降の未来に向けて、天龍川から取ったという会社名のように昇竜のごとく大空へと夢が広がっていきます。
ただいま車夫も募集中です。
IIDAWAVE http://www.iidawave.com/index.html
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