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「地域の健康診断」バックナンバー

0132014.04.01UP上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町

山間地なのに白浜空港が近い。でも鉄路はたいへんです

平井集落の伝統料理うずみ御膳
平井集落の伝統料理うずみ御膳

 和歌山県南東部にある古座川町は、森林率約96%、気候は温暖多雨で樹木の育成に適しており、良質な古座川材の産地として古くから知られていました。昭和31年に1町4村が合併し古座川町となりました。合併当時は人口1万人でしたが、林業の衰退で平成26年には3,077人と大きく減少しました。
 この林業の不振を何とかしたいと山間集落の平井地区の農家2戸が昭和35年代に柚子栽培を始めたことが「古座川ゆず」の始まりとなりました。柚子は他の柑橘類と違い耐寒性に優れていて、病害虫にも強いため、四国4県を中心に九州から栃木県という日本の半分以上で生産されています。「ゆずの里」や「ゆずの町」を標榜する町村も全国にあり、競合産地が多い中での船出でした。

絞りかすがもったいない

 平井地区の農家が始めた柚子栽培は輸入木材が激増した昭和40年代のこと。大阪市場で高値の取引がされたことにより換金作物と注目され、次第に町全域に拡大していきました。元々個々の家で絞っていた柚子も生産が増えたことで、廃校となった小学校の校庭に窄汁工場を共同で建設。柚子栽培技術の向上や販売の共同化を図り、古座川ブランドを確立するために「古座川柚子生産組合」を立ち上げました。
 昭和60年、窄汁量が増えると絞り滓も溜まり、これを何とか活用しようと農家の女性20名で「古座川ゆず婦人部」を結成。特産加工品のなかった町に「ゆずジャム」や「ゆずマーマレード」など柚加工品を開発し、徐々に売上を伸ばしていきました。こうしたことから町も「女性たちを支援することが町の活性化となる」とPRなど後方支援を積極的に行い、ブランドを確立するまでになりました。

旧校舎を活用した「ゆずの里」外観
旧校舎を活用した「ゆずの里」外観

様々な手づくり柚加工品
様々な手づくり柚加工品

集落の危機を法人設立で抜け出す

ゆずの里の新工場内部
ゆずの里の新工場内部

 売上を伸長させてきた「古座川ゆず」は平成8年、柚子の不作により安定供給ができず、取引先の信用を失い大きな痛手を負いました。さらに農家の高齢化や老木化が顕著となり、平成12年から関係者を集めた「ゆず対策協議会」を設置して、六次産業法人の立ち上げに向けた話し合いがもたれ、これらの課題を一気に解決するため、平成16年農事組合法人「古座川ゆず平井の里」が誕生しました。法人化と同時に手狭になった工場に変わる新工場を開設。機械化も進みましたが、柚子の皮むきや刻みなど婦人部がこだわってきた「手づくり製法」はそのまま活かしています。「商品の仕上がりがきれいなことと、雇用確保が法人設立の目的だから」と法人の中核人材の倉岡有美(元役場職員)さんは言います。
 この法人設立の背景にあったのは過疎高齢化という「待ったなし」の問題に、この地に暮らす住民個々が危機感を抱き、徹底的な話し合いによる地域の合意形成でした。特に主体となった平井集落の住民の半数が「柚子」と関係した経済活動の担い手であり、なおかつ限界集落になりつつあったからです。

仏花に期待を込めて

シキミ畑
シキミ畑

 町では林業に代わって遊休地や山林を活用した新たな農業経営を目指しています。中でも柚子と同様に栽培されていた「シキミ」に目を付け、振興することとしました。シキミは漢字で樒あるいは梻と書き、弘法大師の頃より仏前に供えられた常緑木です。
 いわゆる山採り花木でなく、徳島県上勝町が行うような「ツマ物」でもないこと。さらに鹿や猪の食害に遭わないことを条件に検討した結果、「シキミ」と「千両」に決定したのです。
 出荷は関西方面を中心に大幅に伸長しており、町内の栽培者も徐々に増加しました。平井の里でもその売上は絞り柚子の売上より大きく、法人の2大商品となっており、今後の期待は大きなものとなっています。

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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」 -京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」
  55. 055「「食料・農業・農村基本法」の改正は食料安全保障の強化!?」

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