活用すべき資源は山ほど足下にあるにも係わらずバブル期のような旧態依然の箱モノ行政を進めるところがありますが、一方でそうした自治体では若者が転出し、少子高齢化、人口減が止まりません。
歯が一本抜けると隣の歯に影響が出て抜け、体全体の不健康の要因となるように、商店街で一つの店舗がシャッターを下ろすことは、たった一つの店舗でも、街の魅力が落ちて次第に閉店連鎖が始まります。つまり商店街が病気になるのです。
平成25年現在の政府の統計によると、全国の空き家数は820万戸に及びます。また空き店舗や空きビル、廃校も年々増加しており、遊休資産の活用が今後の活性化のポイントとなるでしょう。
この遊休資産を新たなビジネスや公益機能を担う場として、リノベーションしている若者が各地で出現しており、地方の活性化の一助となりつつあります。
重要文化財の大きな古民家の素晴らしい活用もありますが、ここでは地方で普通に残っていた古民家を若者がDIYで改修した最新の例を書きます。
◯Yamairo guesthouse(長野県飯田)
2018年5月にオープンしたゲストハウス+パブ「Yamairo guesthouse」(長野県飯田市)は、松尾町の旧街道沿いにあります。築200年の古民家をリノベーションした施設は、Iターンした男女2名の若者(高橋直也・中村瑞季)が経営しています。ちょい呑み屋は夕方6時から開店していて、普通の家庭料理が味わえるので、宿泊客にとっては家で寛ぐ感覚になります。
その宿泊客はツーリングのバイク愛好家や欧米のバックパッカー、トレッキング愛好家が主で、開店から800人ほどの宿泊者がおり、多くがリピーターとなっています。宿の女将?の中村さんは、暖房対策ができていないことや客の傾向から、冬場の営業をどうするか悩んでいます。
◯NPO法人「暮らすさき」が運営する「暮らしのねっこ」(高知県須崎市)
土佐の伝統工法の「水切り瓦」に「土佐漆喰壁」が残る旧上原邸は、大正期に漁師町の須崎で漁網の店として繁盛していた商家で、近年ではジーンズショップになっていましたが、それも閉店し、空き店舗となっていました。そのため市では商店街の活力を生み出す拠点として、大規模な改修を行い、商家の再生活用することとしました。運営は、移住促進を行うNPO法人「暮らすさき」(事務局長:大崎緑)に任せることとしました。ところが思いの外、改修費が掛かり、市の予算では畳を新しくすることさえできないことが判明。壁塗りワークショップなど自分たちで修復できるところは自ら行うものの、手に負えない部分も多く、外注の資金調達としてクラウドファンディングでお願いして、完成に至りました。
2018年4月「暮らすように滞在する、暮らしに寄り添うものを販売する、暮らしにまつわる交流・体験する」をコンセプトに、宿泊施設とカフェ、焼き菓子店、地元の特産品販売他、会議・セミナー・イベントで利用できる貸しスペースで運営する「暮らしのねっこ」が動き出しました。
観光で有名な函館や横浜、舞鶴の煉瓦倉庫や 国重要伝統的建造物群保存地区内の醤油蔵、酒蔵のリノベーションによる物販や食事処が全国的に多く見聞されます。耐水性と耐火性、調湿性に優れた漆喰技術の粋は「白すぎ城」と揶揄される姫路城に代表され、各地でも漆喰職人の美しい技術を見ることができます。漆喰は「白」のイメージですが、様々なものを混ぜた黒や赤、青、緑など蔵もあります。
字数がありますので、ここでは若者が行う小さな倉庫のリノベーションを取りあげます。
◯SOKO(香川県観音寺市)
2018年11月半ばにオープンしたての「SOKO」(香川県観音寺市)は文字通り、空き倉庫をリノベしたものです。
代表は元々、須崎駅前で理容室をやっていたこともあり、もちろんヘアーカットがメインですが、「沿道はお遍路さんが通る道の中間にあるので、ちょっと休憩してもらう場所にしたかった」とカフェも併設、さらにエステやネールアート、リラクゼーションなど多彩な活用で、単純に複合施設の括りとはできない不思議な空間が生まれています。まだ開業したばかりで、自由な発想でいろいろやりたいとのこと。外から見れば古く何でもない倉庫で、これから何が生まれるか、その完成形も見えませんが、若者世代のサードプレイスになる予感がしました。
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