COP27の「気候行動ネットワーク」で日本は「化石賞」を贈られ、COP26からの不名誉な連続受賞となりました。
脱炭素社会の実現には再生可能エネルギーの促進が重要ですが、普及に際して長期安定的な電源とするための取り組みや新たな電力販売に対する系統制約の緩和・調整など、様々な制度の障害を乗り越えるための施策が曖昧で明示されていません。
現状のままではパリ協定の目標達成から大きく後退し、先進国で最低レベルの状況を打開することは不可能です。
ロシアのウクライナ侵攻がもたらしたエネルギーの不安定化に加え、再生可能エネルギーの導入を加速すべきだった日本政府による強力な導入策は、原発再稼働を明言しただけでした。
近年は世界中で地球温暖化の影響と思われる大災害が発生しており、日本でも甚大な災害が起きています。大都市はかなり防災対策ができていますが、財政が逼迫している地方の国民の命であり国防の根幹である農山村が被災するケースが多いことが問題です。
人類は経済発展の旗の下で自然を破壊してきましたが、今はその自然のしっぺ返しに合っているかのようで、国際レベルの取組はもちろん日本でも本気で取り組む必要があります。
こうした状況を打破するには、ただ国の施策を待つのではなく、地域独自の安心・安全や創意工夫による持続可能な活動が求められるところです。
長野県飯田市は、2013年に「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくり条例」を施行しました。これは市民が主体となって区域の自然資源を環境共生的な方法で、再生可能エネルギーとして利用し、持続可能な地域づくりを進めるものです。
本条例を制定した背景は、エネルギー自治で持続可能なまちづくりを推進するため、地域や市民生活に密接な関わりを持つ日光や森林、河川などの自然資源を再生可能エネルギーとして住民自治の力を発揮する場づくりをすると想定しました。
基本は、まちの電気屋さんがソーラーパネルを設置し、自治区と協定を締結。売電収益の一部を自治区がもらい、紐付きでない自由な金として創意工夫を促して地区の課題解決を図るものです。
この条例の基底に置かれている考え方が「地域環境権」です。これは「市民は再生可能エネルギーを利用した調和的な生活環境の下に生存する権利がある」とするもので、市内それぞれの自然環境の特性を活かした地産地消エネルギーを獲得して、環境に貢献しつつ、地域自立を促すものです。市民の創発事業に対して助成する制度ですが、行政が裏からサポートし、本来の自治である「市民が考えて行動する」ことを第一に考えています。
現在、本事業は累計で20を越えて認定済みで、年間7000万円余の経済効果が発生し、その果実がローカルコミュニティの暮らしを向上させる事業に振り向けられています。
この条例の第8号で認定を受けた旭ケ丘中学校生徒会は、地元の「おひさま進歩(株)」と協働し、自然エネルギー普及のため自分たちの中学校に太陽光パネルを設置。売電収益は生徒会が中心となり環境教育や地域との活動のために使用しており、地域づくりに昇華させていることに注目していただければと思います。
荒川日野地区は奥秩父の寺沢川渓流沿いに位置し、周囲を標高1,000m超の急峻な山嶺に囲まれおり、水力発電を行うには好条件の立地でした。
日野地区では遊休農地や荒廃した里山の再生をするため、20数年前に住民総意で発足した「陽野(ひの)ふるさと会」を発足、荒廃し有害鳥獣の生息地と化した里山の再生保全事業をメインに、地域の自然・生活環境の改善や春の道草展や夏の納涼祭、スポーツ広場の造成ほか、都市農村交流を精力的に行ってきました。今後ますます必要とされる活動ですが、会員の高齢化によって実働要員の減少し、安定して継続できる活動が困難となるとの危機感を持ちました。
大規模な水源がなくても発電がおこなえる小水力発電は自然環境への負荷も少なく、さらに低予算で設置できることから、これを地域資源と捉え、後世に引き継ぐ財産の一つと結論付け、2021年に「陽野ふるさと会」を母体に、住民有志が一人20万円を出資した「陽野(ひの)ふるさと電力株式会社」を設立し、様々な規制や課題をクリアして、小水力発電事業を行うに至りました。
渓流は取水口も幅1メートルに満たず、発電所まで800メートルを管で導水することになりましたが、それでも発電出力は24時間稼働で49.9kWと102世帯分を毎日発電しており、環境がビジネスになることを証明しています。
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