廃校に係わりだしたのは2007年からですが、毎年廃校となる学校が増加していることに少子化を実感しています。ここ数年の廃校発生数(文部科学省データ)をみると平成16年の577校をピークに毎年450から500強の小中高校が廃校となっています。出生率が下がり、国内全体が少子高齢化となっているのだから仕方がないと諦めるのは簡単ですが、それらを要因とする地域社会の歪みは多大です。さらに平成の市町村大合併や地方財政の悪化により学校統合などで廃校が顕著となりました。
「廃校」、何とも悲しい言葉です。学校は住民とともに歴史を刻み生きてきた場所であり、地域アイデンティティの核です。そのため廃校に至るまで、その学校区で様々な葛藤があったことでしょう。
「子どもの声が消え、地区そのものが死んでしまったような感覚がした」
命を削り取られたような“つぶやき”を廃校となった地区で聞きました。しかし、昨今の地方を取り巻く厳しい状況から、身を切る思いで休校・廃校を地域住民が選択しています。
休校や廃校は大切な地域資源ですが、活用しなければ活性化のツールにならないし、コストのみ掛かる無用の長物です。行政とすれば財政が逼迫している状況でもあり、できれば取り壊して土地を転売するほうが得策です。しかし大規模施設を取り壊す財源はありませんし、地域のシンボルで拠り所である学校が消えることは抵抗があります。
地域の活力を削ぐ結果となってまでは強行できないと思いますが、使用するには維持費が掛かりますし、従前のままでの活用も難しく改修しなければなりません。行政は苦渋の選択を迫られ、できるだけ結論を先延ばしし財産も教育財産からいつか一般財産に移行し、塩づけ状態で月日が経つことを祈るわけです。
全国の廃校で建物が現存しているのは約3300校で、その約7割は何らかで活用されています。使用実態は新たな教育施設として生まれ変わったものや地域コミュニティの拠点から、美術館、宿泊機能を有した観光拠点ほか千差万別で実にバラエティに富み、地域個性が反映されています。
文化的歴史的に価値がある木造校舎であれば保存活動も熱心ですが、最近の傾向は築20?30年程度の鉄筋コンクリート造りで、耐震基準に満たない校舎などの遊休化が目立ってきました。
文化財的価値を有せず個性のない校舎でも用途は様々にあります。ユニークさで話題になった栃木県那珂川町の旧町立武茂小でのトラフグ養殖や新潟県の越後妻有(十日町市と津南町)で開催している「大地の芸術祭」における廃校活用などは極端な事例ですが、自然学校やツーリズムの拠点として改修して活用しているところもたくさんあります。とはいうものの地域愛の欠如した感のある活用は運営上で様々な問題が発生するのでご注意願いたい。
廃校をそのまま保存などという卒業生たちのノスタルジーで残すほど、市町村財政に余裕はありません。休校・廃校を地域の未利用資源として捉え、被害者意識の地域エゴでなく、地域の将来像(地域が生き残ること)を住民が考え、共有し、住民が行動し、未利用施設を有効活用することが今問われているのです。そのために廃校自身も運営や財源を含めて自立することが求められます。つまり廃校を活用することは地域への社会貢献となるのです。
できない理由探しをするのではなく、できること探しをしなければ、いつまでたっても利活用はできません。学校へ通う子どもがいなくなったのは社会的要因が大きいのですが、その一因に、子弟を都市へ送り出してしまった親世代の責任もあるのです。
まず大切なことは廃校にしないように子どもを産み育てる環境を整えることです。そして廃校となっているところは、廃校を新たな地域拠点として雇用を発生させ、暮らすことができる環境をつくることです。
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