JR埼京線の赤羽駅から歩いて15分、住宅街の中にある「北区立清水坂公園」は、武蔵野台地の崖地を利用して作られた都市公園だ。高低差のある敷地には広大な芝生広場やローラー滑り台、じゃぶじゃぶ池などが整備されており、一年を通して親子連れを中心とした区民の憩いの場となっている。その一角にある三角屋根の建物が、工藤朝子さんの職場「自然ふれあい情報館」である。地元の自然を紹介したパネルが展示されたにぎやかな館内を抜けると、池の周りに木道が整備された自然観察園が広がっていた。公園の喧噪とは対称的な木々に囲まれた静かなこの空間は、多くの生き物が生息できるように環境を整えた場所だという。
「ここは区民の皆さんに地元の自然環境への理解を深めてもらうための施設。情報館の裏にある自然観察園には、昆虫だけで130種類以上が生息しています。こんな街中にも意外と生き物はたくさんいるんですよ」
工藤さんの仕事は、来館者対応や自然観察園のガイド、展示物の企画・作成、環境教室・講座の企画運営、生物調査、自然観察園の管理作業、情報誌の編集と幅広い。
「やりがいを感じるのは自然観察園でのガイドの仕事。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い世代の人たちに生き物の話を伝えられること、そして人々が生き物と楽しそうにふれあう様子を直に見られることがすごく幸せです。私が『教える』のではなく、参加者が『自分で気づく』ようなガイドを心がけています。その方が、一人ひとりの気持ちにしっかり残って吸収しやすいと思うから」
田畑や林の多く残る埼玉県西部の田園地帯で育った工藤さん。
「家族で山登りを楽しんだり、庭に野鳥が巣作りする様子を見守ったり。実家の目の前に圏央道が建設されることになって、どんどん雑木林が切られていく様子を悲しい思いで見ていたこともよく覚えています」
中学の頃から自然に関わる仕事に就きたいと考えるようになり、高校卒業後に東京環境工科専門学校へ。自分と同じように自然に関心を持つ幅広い年代のクラスメートや、卒業後も進路の相談や生き物の質問に親身になってくれる講師陣と出会えた。
「卒業後はNPOやコンサル会社などでのアルバイトを経て現在の会社へ就職しました。仕事をする中で感じることは、いろんな人たちに助けられているということ。こういう仕事をしていると生き物だけを見ていればいい、と思われがちですが、それ以上に人との付き合いを大事にしていかないとだめだなと思います。例えば、情報や意見を交換することで知識を深めることができるし、生き物の種類や生態がわからない時や仕事の進め方で悩んだときも、仕事仲間、専門学校の先生、友人、両親などたくさんの人に助けていただいています。人とのつながりが今の私の支えになっているんだなと仕事に就いてからさらに実感しました」
ガイドをするとき、ペットボトルなどの透明容器に虫を入れて見せることも多い。虫が逃げないだけでなく、虫に触れるのを嫌がる女の子にも間近でじっくり観察してもらえるからだ。
「時々、虫をおもちゃで遊ぶかのように扱う子を見かけます。そういうときには、命の大切さを知ってもらうことから子どもたちに伝えていかなければ、と思います。小さなことかもしれませんが、生き物を大事にしよう、身近な環境を大切にしようという思いがなければ、温暖化など地球を取り巻く大きな問題を考えることのできる人に成長しないと思うんです」
専門学校の頃、夢見ていたのは自然に関わる仕事の中でも「伝える仕事」だった。インタープリターとして働く今、工藤さんはまさにその夢を叶えたことになる。
「街の中にいても『自然を伝える仕事』はできる、と今の職場に来てから日々実感しています。一人でも多くの人に自分の身近にある自然に対する興味を深めてもらうこと。それが未来の地球や自然環境に対して私ができる一番の貢献だと思っています」
ガイドの際に持ち歩く手提げの中には野鳥や昆虫の図鑑、デジカメ、メモ帳、救急用品などが入っている。「昆虫の観察や木の実を使った実験などに使うプラスチック製の容器も欠かせません。コンビニでデザートを選ぶときでも、つい『このプラスチック容器は可愛い形だから展示で使えそう』とか考えちゃうんですよ。職業病ですかね(笑)」
07:00 起床。通勤は電車を利用して約1時間。
08:50 出勤後、まずは館内の清掃&チェックを。「生き物へのエサやりや健康状態の確認、展示物の補修をしたり、開館前にやるべきことも多いんです」
09:30 開館。来館者の対応を優先しながら、報告書の作成や展示物の製作、イベントの企画立案などのデスクワークをこなす。自然観察園のガイドは1日4回(各回20分)。「来館者が多い季節にはガイドと生き物たちの生活を写したビデオの上映を繰り返し、来館者対応だけであっという間に時間がたってしまいます」
16:30 閉館後、残っているデスクワークを仕上げる。
19:30 退社。講座の準備・実施に追われたり、展示物を作っているとあっという間に時間が過ぎてしまい、時には22時頃まで残業する日もあるという。「自分の中で『この時間まで!』と目標を立てて仕事をするようにしています」
20:30 帰宅。
25:00 就寝。
植物や生き物を大事する大切さがとても重要だなと言うことが凄く良く伝わってきました。
これからも頑張って下さい!
(2020.10.29)
半年ほど前に、近くに引っ越しました。
清水坂公園は尾澤氏の監修・設計ですね、
素晴らしいです。
彼は近代造園開祖・伊藤邦衛に師事してますね。
伊藤氏のは作品は
世田谷公園、故郷の浜松中央
公園も有り、この清水坂公園の景観が
何故かしっくりする訳も分かりました。
多くの人達が、憩いを求めて、
ここへ訪れるのは理解出来ます。
(2012.03.21)
そして夢が形になっている姿はとても眩しい!!
人とのつながりを大事にしている気持は、来館する人にも伝わっているでしょうね。
残業も苦じゃないかもしれないけれど、体には気をつけてこれからもお仕事楽しんでがんばってください。
(2010.02.27)
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