「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアの大陸本土にある州としては最も小さく、国内ではタスマニア州に次いで二番目に面積が狭いビクトリア州。国土のわずか3%程度に過ぎないエリアながら、温帯の海洋性から地中海性、さらには、乾燥したステップ気候といった、異なる気候が生み出す豊かな環境に恵まれています。
そんな多様な環境と、海へも山へも数時間で行けるコンパクトな地の利を生かして発展したのが、州都メルボルンです。
ビクトリア州は、地形的にもユニークです。ニューサウスウェールズ州と接する北部には、2,000m級の山々が連なる国内で最も高い山脈オーストラリアン・アルプスが横たわり、荒波に削られて複雑に入り組んだ南部の海岸線はおよそ1,800kmにも及びます。
オーストラリアン・アルプスでは、冬場は積雪もあります。ビクトリア州北部には10以上のスノー・リゾートが点在しており、国内最多。スキーやスノーボードといったウインター・スポーツのイメージがほとんどないオーストラリアですが、意外や冬季五輪のメダリストも多数輩出しているのです。
そして北西部は、夏場には40℃にも達する日もあるほど、暑くて雨の少ない荒涼とした乾燥地帯が広がっています。
そのため、州内へは、内陸で暖められた熱い空気が直接流れ込むこともあれば、高山からの冷涼な風が吹き下ろされることもあり、沿岸部へは南極からの冷たい風が吹きつけることもあります。こうした様々な環境で発生した大気がぶつかりあうため、ビクトリア州は、短時間で天気が変わりやすく、「1日のうちに四季がある」と言われています。
ビクトリア州は上記の通り、様々な環境が混在していることから、天気が変わりやすいだけでなく、1年を通して寒暖差が最も激しい州といえます。
しかし、そうした寒暖差のおかげと高山から平原まで様々な地形があること、さらにコンパクトな地理的条件による舗装道路網の発達によって、国内有数の食物生産地となっています。中でも、最も寒暖差の恩恵が受けられる果実は、様々な種類が、それぞれに合った気候や地形の下で生産されています。今やすっかり世界的な地位を獲得したオーストラリア・ワインも、ビクトリア州産が増えています。
また、なだらかな丘陵地帯を利用した放牧も盛ん。牛乳やチーズなどの乳製品の生産に関しては、飼育頭数も製造会社数も国内断トツの規模を誇っています。なんと、州内の乳製品製造会社は4,000以上!世界各地への輸出量も国内随一です。
州内には、メルボルンにある19世紀から続く南半球最大の市場「クイーン・ビクトリア・マーケット」をはじめとするマーケット(市場)がそこかしこにあり、『南半球の台所』と呼ばれる所以になっています。
南極へと続く海には、ペンギンやオットセイ、様々な水鳥など、低水温海域ならではの豊かな生態系が育まれています。世界最小のペンギン「リトル・ペンギン」【1】については、ペンギン・パレードで有名な州内きっての観光地フィリップ島が、国内最大規模の営巣地。ですが、実は、オーストラリア・オットセイの営巣地としても国内最大級。全頭数の4分の1が、フィリップ島周辺に生息しています。
また、州内には冷温帯と温帯の2つのタイプの多雨林が広がり、ユニークな生態系をつくりだしています。森には、様々な野鳥やコアラに代表される有袋類、川には清流を好むカモノハシ【2】も多く生息。ビクトリア州のコアラは、北部のクイーンズランド州で見られるコアラとは形態が若干異なり、寒さにも耐えられるよう体毛が長く、毛色も少し濃いめなのが特徴です。
絶滅が危惧されるアカハラワカバインコ、フクロモモンガダマシ、ブーラミスなどの希少種の生息エリアも、州内のあちこちに点在しています。ビクトリア州では、こうした絶滅危惧種の保護や繁殖についても力をいれており、様々なプロジェクトが進行中です。
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