「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアの総面積は、769万2,024平方キロメートル。日本の約20倍もの大きさがあるため、北と南、東と西、また、沿岸部と内陸部では、気候がかなり異なります。
赤道に近い北部沿岸部は、基本的に「雨季」と「乾季」の2シーズンに分かれる熱帯気候となっていますが、ノーザンテリトリー準州の北部に位置する州都ダーウィンの周辺地域は、年間平均気温は25~32°Cで、ほぼ常夏。雨季には湿度が80%を超えることも多くなっています。
ノーザンテリトリー準州の北部は、オーストラリア国内では「トップエンド」と呼ばれ、場所柄、インドやインドネシア方面からの季節風の影響を受けるため、東南アジアの一部の国のようなモンスーン気候の特徴がみられるエリアでもあります。
ダーウィンから車で約1時間のところに、モンスーンの影響を強く受けた豊かな水と森が広がる「リッチフィールド国立公園」があります。公園の面積は約1,500平方キロメートル。ダーウィン市民にとっては、手軽なピクニック先であり、乾季には透明度の高い清らかな水場での遊泳が人気の場所です。
国立公園内には、雨季にもたらされた大量の雨がいくつもの川を作り、大小いくつもの滝が次々と現れます。カスケードと呼ばれる何段も連なる小さな滝や、切り立った断崖から勢いよく流れ落ちるダイナミックな滝がこの公園最大の見どころですが、その周囲に広がる森も見逃せません。水辺には、ほとばしる滝の水で常に霧がかかったように細かなミストが発生しているため、周辺の植物は一年中青々と茂り、美しい熱帯の森を作り上げています。
遥か何千年も昔からこの土地で暮らしてきた先住民の人々は、この森のことを「マンガレドゥッベ Manngarredubbe」と呼び、大切にしてきました。マンガレドゥッベとは、モンスーンが運ぶ水によってつる科の植物が生い茂る森のこと。マンガレドゥッベの森には、食料となる植物と共に、数多くの生きものたちが生息しています。
また、川沿いなどの水辺を中心に広がるマンガレドゥッベの森を囲む岩場には、異なる種類の植物が生い茂る森ができあがっています。先住民の人々は、この森を「マンビニク Manbinik」の森と呼び、マンガレドゥッベの森と共に重要な場所として位置付けてきました。マンビニクの森は、乾季に照り付ける強い日差しを遮る日陰を作り、人間や動物が暮らしやすく、植物が良く育つ環境を提供してくれるからです。先住民の人々は、植物の発芽を促すために下草などを燃やす古来の自然管理技術を利用しますが、マンビニクの森に関しては、雨量や気温などの気象状況や植物の状態をよく見て、燃やさずにそのままに放置するなどの判断をし、2つの異なる植生によって形成された森を管理してきたそうです。
私自身、リッチフィールド国立公園を訪れるのは2回目だったのですが、前回は大勢の人が水遊びを楽しんでいた「ワンギ滝」が、今回はクロコダイルが紛れ込んでいることが確認されたため、クローズされていました。高地となっているワンギ滝の滝つぼまでクロコダイルが上がってくることは稀だそうですが、まったくないことではないため、遊泳の際は必ず確認することが重要だと再認識しました。
こうした野生生物の脅威とも共存しながら、遥か昔から命を繋いできた豊かなモンスーンの森。先住民の人々は、その時々の気象事象をよく観察することで、状況を的確に判断しながら自然と共存し、モンスーンという特徴的な気候がもたらす森の重要さを子々孫々と伝えてきたのです。
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