「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアは昨年9月から続く森林火災が年末にかけて悪化。オーストラリア史上最悪の森林火災となっています。大晦日から2日にかけては、数万人規模の住民や観光客らに避難勧告が出され、こちらもオーストラリア史上最大規模の避難が行われました。
現時点(2020/1/5)で、オーストラリア全体の森林火災面積は、関東地方(32,424 km2)の2.5倍近い約79,800 km2、25人が死亡、ニューサウスウェールズ州だけで5 億もの生き物たちが焼死したのではないかと言われています【1】。
現在、火災が起きていない州はノーザンテリトリー準州のみで、スコット・モリソン豪首相は2020年1月5日、国内各地で起こっている森林火災は、今後、数ヶ月は続く可能性があると発表。火災エリアは拡大する一方で、延焼していくうちにいくつかの火災が合併し、巨大な火災エリアとなって、手が付けられないほど猛威を振るっているのが現状です。
被害が深刻化する最大の原因は、少雨と乾燥です。オーストラリアはもともと『人が住んでいる場所としては、世界で最も乾燥した大陸』と言われますが、昨年は例年に比べても約半分の降水量となり、ここ19年間で最も雨が降らなかった年になりました。
シドニーでは、2018年の終わり頃から5月にかけて、ほとんど雨が降らない状態が続き、とくに4月と5月の2ヶ月間に1ミリ以上の雨が降った日は、わずか5日間のみで、平年の10分の1程度でした。ダムの貯水量は下がる一方で、ついに2018年6月1日から一般家庭の「水の使用制限」が始まり、現在、水の使用制限のレベルはさらに引き上げられています。
オーストラリアの植物には固有種が多く、中でもユーカリやマートル、ティーツリーと呼ばれるメラリューカ(メラレウカ)は種類が豊富で、森を形成する樹木類のかなりの部分を占めています。ユーカリやティーツリーと聞いて、ピンとくる人も多いと思いますが、どちらも「精油」で有名な樹木です。
ユーカリは、葉で揮発性の高い油分を生成し、空気中にそれらを含んだ気体を放出します。また、葉を大量に落とし、幹や枝の表皮が定期的に剥がれ落ちて根元に積もることで、菌類による分解を防いでいます。
ティーツリーは、精油がとれるだけでなく、幹の部分が紙のように剥がれ落ちる表皮になっていることから「ペーパー・バーク」とも呼ばれています。その昔、先住民アボリジニの人々は、この表皮を火おこしに使ったというほど、燃えやすい特性があります。
つまり、森林を形成する多くの木が、油分を多く含み、燃えやすい表皮に覆われていることもあり、一旦火が点くと、木から木へと火が飛び移ってしまうのです。また、ユーカリのように地面に落とした表皮や葉は、下からやってくる火の着火剤にもなりえます。
しかし、こうしたオーストラリア固有の植物は、発芽するのに火が必要な種が多いのも事実です。火災になっても表皮のみが焼けるだけで内部までは延焼しないため、木そのものが死んでしまうことはほとんどありません。むしろ、火がないと新しい芽が出ず、森が生長しなくなってしまうという一面もあるのです。
少雨で乾燥しているだけでなく、今夏(北半球の冬に当たる)は、例年に比べて気温も高く推移しています。2019年中には、平均気温も最高気温も過去最高を記録しました。また、シドニーでも2020年1月4日に、過去の最高気温記録が塗り替えられ、西部の町ペンリスで48.9℃を記録。それまでの最高記録47.3℃を1.6℃も上回りました。
ユーカリの油分(精油)には、テルペンという揮発性の高い引火性物質が含まれていますが、気温が高くなると、このテルペンの量が増え、濃度が上昇します。火が起きているところでこのような状態になると、まさに火に油を注ぐ格好となり、火災が拡大してしまう一因になっているのです【2】。
ただし、落雷や摩擦などによってユーカリが自然発火することはあるものの、近年の火災原因は人為的なものがほとんどとなっていて、過去の調査では、落雷による自然発火はわずか13%。残りの87%(うち40%が放火)が人間の活動に由来する=人為的という報告もあります。
とても役に立った
(2022.10.25)
助かりました!
学校の宿題もばっちりです!
(2021.08.27)
分かりやすくて勉強になりました
(2021.08.02)
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