「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
1月15日土曜日、トンガ諸島の海底火山が噴火しました。約30キロメートルにも及ぶ巨大な噴煙を吹き上げ、近隣国であるオーストラリアやニュージーランドだけでなく、太平洋沿岸の広範囲の国々で、津波や潮位上昇が確認されました。
トンガ諸島は、日本も含まれている「リング・オブ・ファイア」と呼ばれる環太平洋火山帯上にあり、太平洋プレートとインド-オーストラリア・プレートの境界に位置しています。また、オーストラリアにとってトンガという国は、同じ南太平洋にある近隣国であり、豪国内ラグビーチームにもたくさんのトンガ人選手が活躍していますし、一般市民にとっても、パンデミック前は、ポピュラーなホリデー旅行先として、身近な国のひとつです。
シドニーからは、約3,500キロメートル北東方向に位置していますが、トンガとの間には、南太平洋の大海原が広がり、途中に陸地や島は一切ありません。噴火した当日はシドニー北部海沿い地区の自宅にいたのですが、噴火があったとされる時間とかなり近い時間に、爆発音らしきものが聞こえました。まさか、ここまで音が届くとは思いもよらなかったのですが、翌日、9,400キロメートルも離れたアラスカでも聞こえたと知り、あの音がトンガの噴火であったとほぼ確信しました。それにしても、地球は意外と狭いのだなぁと、驚いてしまう出来事でした。
(この体験については、「トンガ海底火山噴火の爆発音がシドニーで聞こえた !?」に書いていますので、よかったらご一読ください。)
トンガの海底火山噴火による被害状況については、まだ明らかになっていませんが、広範囲への降灰と津波による被害が甚大であったことが、衛星画像からわかってきました。この地区では、これまでも頻繁に噴火を繰り返していますが、今回の噴火は、1,000年に一度の大規模なものであったと言われています。
なぜ、このような大規模な噴火に繋がったのでしょうか?
詳細については、今後の調査が待たれますが、オーストラリアの火山学者たちが、現状から考えられる要因を解説していたので、ご紹介します。
今回、噴火したのは「フンガトンガ-フンガハアパイ火山」といい、プレート境界の沈み込み火山として知られています。
メルボルンにあるモナシュ大学が、トンガで2009年に起こった火山噴火を調べたところ、溶岩堆積物の中に強力な爆発成分となる化学物質が含まれていたことがわかったそうです。噴火時に、シャンパンを開ける時に栓がポンと勢いよく飛ぶように、マグマ中の高濃度の加圧水蒸気とガスの圧力が突然解放され、ガスが爆発的に膨張します。これによってマグマや溶岩が吹き飛ばされる際、この化学物質のせいで、より強力な爆発になった可能性が高いといいます。
また、もうひとつの要因として考えられるのが、噴火口が海底にあったことです。クイーンズランド工科大学のチームが、1月6日から今回の大規模噴火の2時間前までの映像を分析したところ、最近、度々小規模噴火を繰り返していた時には、水面上に見えていた噴火口の円錐状の部分がなくなっていたことが確認されました。このことから推測されるのは、大規模噴火の前に起こった小さな噴火が、円錐を吹き飛ばしたのではないかということ。そして、蓋が外れたような状態となった噴火口に、海水が一気に流れ込んだことが、大規模噴火の触媒となったのではないかというのです。これは、マグマの熱に水が接触すると、水が急速に弾けて蒸気化し、爆発的な相互作用が発生するためです。
ただし、調査に入れない段階では、不透明な部分が多く、まだ結論づけることはできません。今後の調査で、徐々に被害の全容や環境への影響など、いろいろなことがわかってくると思いますが、少なくともこれから数年に渡って、地球の天候や気候に影響を与えるのではないかと懸念されるほど、インパクトの大きい火山噴火であったことは間違いありません。
また、リング・オブ・ファイア上には、他にもたくさんの火山がありますが、専門家によると、1つの噴火が他の火山の噴火を促進することはないそうです。とはいえ、現在も活発な火山活動が続いており、過去には、1年強に渡って噴火が続いたこともあるとのことです。近隣国であるオーストラリアも、津波や灰などの影響が心配されるため、しばらくは、注意深く見守っていくことになりそうです。そして、なによりも、トンガの一日も早い復興を願ってやみません。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.