「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
クイーンズランド州の州都ブリスベンの北東、約250kmの沖合に浮かぶフレーザー島。全長約123km、横幅は最も広いところで約22kmと南北に細長く、総面積は、約1,840km2と、大阪府(約1,901km2)より少し小さい程度の大きさですが、なんと島自体が砂でできています。
砂でできた島としては、もちろん世界最大! しかも、島内には豊かな森が広がり、様々な生き物たちの楽園となっています。そんな類まれなる自然から、1992年に世界遺産に登録されました。
フレーザー島に最初に人類が定住したのは、約4万年前と考えられています。先住民アボリジニの言葉で、「楽園」を意味する「クガリ(K'gari)」と呼ばれ、人口は平均300?400人程度、多い時で約2千人は住んでいたのではないかという形跡が残っているそうです。先住民アボリジニの人々がこの島に定住していた頃は既に、豊かな緑の森、美しい白砂のビーチ、驚くほど澄んだ淡水を湛えた湖など、現在みられるような自然が広がっていたと推測されています。
この島が、地球上で『貴重』な場所とされる理由は、上記のような素晴らしい自然が広がっていることはもちろんですが、何よりも研究者らを驚かせたのは、通常、砂地には育たないはずの亜熱帯雨林が島を覆いつくしていることでした。
亜熱帯雨林の大木が根付く大地は、真っ白なシリカ・サンド(石英の粒でできた白砂)がそのほとんど(約98%)を占めています。手に取ればサラサラとこぼれてしまう砂ですので、こうした大木が根を張って、その体を支えていること自体が奇跡ともいえます。
さらに驚くのは、この亜熱帯雨林の森が、ユーカリやバンクシアといったオーストラリア固有の樹木をはじめ、ナンヨウスギやカウリマツ、シダ植物など、驚くほど様々な植物で構成されていることです。海岸沿いにはマングローブの森も形成されています。
また、豊かな森が育まれた島内には、いくつもの小川が流れ、目を見張るほど透明度の高く、夢のように美しい淡水湖「マッケンジー湖」をはじめ、大小100を超える湖が点在しています。
※今年3月、海外研修でフレーザー島を訪れていた日本の高校生2人が、マッケンジー湖で溺死するという痛ましい事故が起きました(関連リンク参照)。この湖は、白砂のビーチに透き通った青い水を湛え、ついつい海辺のビーチに来たかのような錯覚を起こしてしまいがちですが、あくまでも淡水なので、海水のように浮力がつきません。また、上記でも説明した通り、サラサラの砂地のため、湖底に足がとられやすい傾向がありますので、水に入る際は注意を怠りなく。
砂の島に育まれた常識では考えられない豊かな森と生命。では、島を構成する大量の砂は、一体どこから来たのでしょうか?
これまで、「オーストラリア大陸本土から流れ出た土砂が堆積した」という見方が一般的でしたが、近年では、「南極とオーストラリアがまだ地続きだった頃より、オーストラリアの南東沖から運ばれてきたもので、そのほとんどは、何千キロも離れた南極大陸から、何十万年もの時間をかけて運ばれた」という説が有力となっています。
その説によると、約7億年前にあったとされる南極大陸の巨大な山脈(現在のヒマラヤ山脈に匹敵するといわれている)が侵食されて土砂となり、その砂が海流に乗って運ばれ、大陸棚に溜まり、70万年以上の歳月をかけて、現在のフレーザー島付近に堆積していった…ということですが、今も砂は動き続けており、現在も研究途上だそうです。
こうした自然界のいくつもの偶然が重なってできた奇跡の島・フレーザー島。先住民アボリジニが名付けた名称通り、類まれなる自然が育まれている「楽園」といえそうです。
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