「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアのちょうど真ん中の部分に位置するのが、ノーザンテリトリー【1】です。オーストラリアの連邦制のうち、ノーザンテリトリーだけが州ではなく、州に準じた独立自治権を持つ「準州」となっています。
「準州」なのは、人口が少なく、州としての基準を満たしていないためです。142万平方キロという、国内第3位の広大な面積がありながら、エリア内すべてを合わせても約25万人しか住んでいません。この人口数は、国内最下位となっています。
ノーザンテリトリーの北部は、「トップエンド」と呼ばれ、雨季と乾季にはっきりとわかれる熱帯性気候。雨季に当たる夏場には、ときおりサイクロンが接近することもありますが、年間を通じ、気温が30℃以上で湿度も高めなため、トロピカルな南国を思わせる陽気です。
トップエンドは、海に面し、湿潤な気候が育んだ熱帯雨林の森や滔々と流れ落ちる滝、水たたえたビラボン【2】、湿原など、水辺と緑豊かな自然が広がっていますが、そのほとんどは原野のままです。以前ご紹介した世界遺産であり、ユネスコのラムサール条約にも登録されている広大な湿原地帯「カカドゥ国立公園」は、このエリアにあります(オーストラリアの野生動物保護(第4回)「動物たちを守るために保護区にする」)。
ノーザンテリトリーは、北から南へと移動するに従って、気候が驚くほど変わっていきます。南部は、オーストラリア大陸のほぼ中央に当たり、年間を通じ、少雨で乾燥した砂漠気候となります。この砂漠地帯は、「レッドセンター」と呼ばれ、オーストラリアらしい鉄分を含んだ赤土の大地が広がっています。砂漠気候の特徴ともいえる朝夕の気温差が激しく、夏場はとくにカラカラに乾燥し、40℃を超える日も珍しくありません。
オーストラリアの世界遺産の中でも有名な「ウルル(エアーズロック)」は、このレッドセンターにあります。この世界最大級の一枚岩が赤く見えるのは、鉄分を多く含んでいるためです。
ノーザンテリトリーは、主に州都に当たる北部のダーウィンと南部のアリススプリングスの2つの街に人口が集中しています。これは、上述のように、エリア内のほとんどの場所が、極端で厳しい自然環境下にあるため、人間が住むのに向いていないためです。
南北に位置するこの2都市を結ぶ主要道路は、スチュアート・ハイウェイ1本のみ。途中にいくつか小さな町がありますが、ひとつの町を超えたら、次の町らしい町まで百キロ以上が当たり前…。北から南へ移動すればするほど、人の気配はなくなり、夜間になれば人工的な灯りはほぼ皆無です。
夜間に車を走らせていて、ようやく灯りが見えてきたと思っても、ロードハウスと呼ばれるガソリンスタンドと食堂、簡易宿泊施設がひとつになった建物があるだけ、ということも少なくありません。
また、ノーザンテリトリーは、昔から同じ場所で暮らしてきた先住民族アボリジニの人々が多いのも特徴のひとつです。
ノーザンテリトリーの経済を支えているのは、鉱業です。ボーキサイトや鉄鉱石の採掘をはじめ、カカドゥ国立公園の近くには、ウラン鉱山もあります。中でもウラン採掘による環境破壊は、しばしば問題になっており、野生動物をはじめとする生態系にも大きな影響がでていることは、以前ご紹介した通りです(オーストラリアの野生動物保護(第4回)「動物たちを守るために保護区にする」)。
南部の砂漠地帯は気候的に農業には向いていませんが、赤道に近い北部では熱帯性の気候を生かして、マンゴーやバナナなどのトロピカル・フルーツが生産されているほか、広大な敷地を生かした放牧による肉牛の飼育も行われています。この牛の放牧により、大量のハエが発生…。とくに夏場になると、ハエは凄まじい勢いで増え、人間の目や口の水分を求めて、大群で襲い掛かってくる厄介ものとして知られています。
ノーザンテリトリー北部の湿地帯はとくに、鳥類や爬虫類を含む野生動物の楽園。中でも巨大な「クロコダイル(ワニ)」、砂漠地帯ではユニークな姿の「モロクトカゲ」、そして、日本でも一世を風靡した「エリマキトカゲ」など、固有の爬虫類に遭遇するチャンスが多いため、爬虫類ファンに人気の旅先となっていますが、一方で、「クロコダイル注意」の看板を無視して水辺に近づき、襲われて命を落とすケースが後を絶ちません。
また、北部の湿地帯では、19世紀に西洋人が開拓のためにアジアから連れてきた水牛が野生化し、砂漠地帯では、同じく開拓時に運搬用として連れてきたラクダが野生化しており、どちらも本来の生態系に影響を与えると問題になっています。
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