「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアは、オパールの世界最大の産地として知られ、その産出量は世界の約95%にも及びます。オパールは、光の角度によって様々な色が現れ、虹のような美しさから、文豪シェークスピアは、自身の作品「十二夜」の中で“宝石の女王”と呼び、英ビクトリア女王もオパールをこよなく愛したそうです。
オパールは、宝石の中でも貴石と呼ばれる硬い天然鉱物であるダイヤモンドやサファイヤなどとは異なり、水とケイ素でできたケイ酸鉱物という準鉱物に分類されます。
ケイ素という物質は、海と深い関係があります。海では、植物プランクトンのうちのケイ藻が光合成を行い、この時にケイ素を必要とします。海洋基礎生産の大半に当たる約40%は、このケイ藻の活動によるものだそうで、よって海には大量のケイ素が存在しているということになります。
しかし、オーストラリアのオパール産地はすべて、海からは何百kmも離れた砂漠気候の乾燥した内陸部。年間を通じて降水量が少なく、人間が住むには厳しい環境です。オパールは、主に水とケイ素でできているわけですが、オーストラリアの内陸部に大量のケイ素があったのはなぜなのでしょうか?
その謎を紐解く鍵は、太古のオーストラリア大陸にあったとされる内海です。この内海は、Eromanga Sea(エロマンガ海)と呼ばれ、もともとは外海と繋がっていたものが、大陸の隆起や地殻変動によって外海から隔てられ、内海となったと推測されています。
しかし、その後の地殻と気候の激変により、この内海は陸上から消え去りました。ですが、海水中にあったケイ素は、水分やその他の物質を取り込みながら、地中深くに閉じ込められ、長い年月をかけて石化していき、オパールになったそうです。わずか1cmのオパールができるまでに、なんと約500万年もかかると言われています。
現在のオパール産地がその昔、海であったという証拠に、採掘の際、オパール化したたくさんの貝や海洋生物の化石が見つかっています。
世界最大のオパール産地は、厳しい環境下にある内陸部の町クーバー・ペディです。クーバー・ペディについては、以前、「自然と共存するオーストラリアの住まい」の第6回でもご紹介させていただきましたが、オパール産地として有名である一方で、世界でも稀な地下都市として知られています。
昔からオパール採掘を目当てに人々が集まり、今でもこの町に暮らす人のほとんどが、オパール採掘に携わっています。そのため、そこかしこにオパール採掘の跡が残っているのですが、このオパールを採掘するために地下へと堀り進めたダグアウトと呼ばれる洞穴を住居として使っています。住居以外にも、レストランや書店、教会など、生活にかかわる大半の施設がこうしたダグアウトを利用しており、まるでSF映画にでてくる地底都市のようなユニークな町を形成しています。
こうした地下住居を使うメリットは、厳しい環境をしのげる点にあります。住居内は、気温40℃以上の酷暑もしのげるほど涼しく、また、夜間に急激に下がる気温にも対応でき、想像以上にとても快適。ですが、町自体が、(途中にあるロードハウスだけの小さな町を除き)最も近い隣町まで約550kmという僻地にあるため、電気の供給は、太陽光や風力などの自家発電にほぼ頼っています。
生活していく上で一番困るのは、飲料水です。年間降水量が約140mmと極端に少ないため、雨水タンクに頼ることもほぼ不可能。そのため、地下水を汲み上げて使用しているのですが、この地下水は、残念なことに、人間にはそのままでは飲むことができません。
実は、オーストラリア大陸の地下には、大鑽井盆地(グレートアーテジアン盆地)と呼ばれる大量の水を蓄えた世界最大規模の被圧地下水流域が存在しています。上記でご紹介したエロマンガ海のような太古の内海の存在が、この大鑽井盆地形成に大きく影響していることもあり、ここに蓄えられている水は、海水同様の塩水。そのため、クーバー・ペディのような内陸部の少雨地域で飲料水として利用する場合、汲み上げてから、浄水場で淡水化する必要があるのです。
とはいえ、クーバー・ペディには、人間が文明社会で暮らすための最低限の設備は整っていますので、今日では、非日常的なユニークな体験ができる観光地として、世界中からの観光客を惹きつける魅力のある町となっています。
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