「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリア南東部では、今年の2月から平年を遥かに超える雨量となるほど、雨が多く降っています。夏の終わりから局所的な豪雨にも見舞われ、各地で洪水が発生し、約50万人に避難指示が出されました。この豪雨は「1,000年に一度」ともいわれるほどの大量の雨を降らせ、3月初旬までで少なくとも17人が死亡するなど、大きな被害が発生しましたが、その後もほぼ同規模の豪雨が何度も襲ってきています。
シドニー西部に位置するホークスベリー川周辺の地域では、この1年半の間に4回もの洪水に見舞われ、家屋浸水の片付けが終了したと思ったら、また浸水して一からやり直し…という悲惨な状況になっています。この地域では、7月の洪水の際には、牛や羊などの家畜やペットなどの動物用の避難所も用意されたほどです。
【動画】今年2月のニューサウスウェールズ州北部の町リズモアを襲った洪水被害の様子。
【動画】1年半で4回もの洪水被害に見舞われたシドニー西部
不安定な天候はまだ続いていますが、夏の終わり頃から地面が乾くことがないほど、雨が断続的に降り続いている状況のため、水害地域の泥水・汚水に由来する様々な感染症が懸念されています。
例えば、まだ気温が高い時期には、水溜まりが蚊の大量発生の根源となり、蚊が媒介する「日本脳炎」が発生。南東部の地域にある73の養豚場で日本脳炎ウイルスが確認され、35人以上が感染し、ビクトリア州やニューサウスウェールズ州では3人が死亡しました。
また、7月に入ってからは、ペットや人間に感染すると死に至ることもある「レプトスピラ症」が発生。このレプトスピラ症は、ネズミ類が感染源となることが多い感染症で、雨続きのジメジメとした天候によるネズミの大繁殖が一因なのだそうです。ニューサウスウェールズ州やキャンベラ首都特別地域では、すでに数匹の犬が感染後に死亡。ネズミが繁殖している場所にできた水溜まりなどの汚水を散歩中の犬が飲んでしまうことで感染の危険性が高まるため、獣医師は飼い主に注意するよう呼びかけています。
既に半年近くという長い期間、度々洪水被害に見舞われているため、様々な食料に影響がでています。とくにニューサウスウェールズ州で洪水被害が甚大だった地域は、レタスなどの葉物野菜の生産地でもあったため、南東部地域のレタスの価格が高騰。一時は、1個あたり日本円にして1,000円程度にまで上昇。ハンバーガーやサンドウィッチにレタスを使用するファーストフード店では、価格高騰で供給不足からキャベツを混ぜて提供するほどまでになっていました。また、ちょうど収穫時期を迎えていたインゲンにも大きな被害が出てしまい、価格が急上昇しました。
豪雨による被害は、農地がある陸上だけにはとどまりません。河川に流れ込んだ大量の水は、そのまま海へと流れ込みます。なかでも大きな被害を受けているのが、河口で行われている牡蠣の養殖です。シドニー西部で甚大な被害を受けたホークスベリー川は、シドニーに最も近い牡蠣の養殖場として知られていますが、昨年末から増水が続き、6月半ばまで収穫ができずにいたそうです。また、ニューサウスウェールズ州北部の牡蠣養殖が盛んな地域では、泥水が流れ込み、養殖していた牡蠣に被害がでているため、価格高騰が懸念されています。
2019年から2020年初頭に起こった大規模森林火災は、それまで何年にも渡って続いていた少雨と干ばつが原因でしたが、それが過ぎ去った後、豪雨で恐怖を感じるほどの大量の降雨となっているオーストラリア。『気候変動』が叫ばれて久しいですが、極端化する気候は今後も様々な被害をもたらしそうです。
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