「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
世界でも有数のワイン生産国として定着してきたオーストラリア。ワイン好きの人ならもちろん、あまりワインに詳しくないという人でも、オーストラリアのワインを口にしたことがあるのではないでしょうか?
広い大陸であるオーストラリアには、各州に素晴らしいワインの産地が点在しています。中でも、豪国内最古のワイン産地「ハンターバレー」や上質な赤ワインで世界的に評価が高い「バロッサバレー」、「ヤラバレー」などが有名ですが、これら以外にもたくさんのワイン産地があります。その多くは、オーストラリア大陸東側から南東部にかけての州に集中していますが、近年、新たなワイン産地として注目されているのが、首都キャンベラの周辺、「キャンベラ・ディストリクト」と呼ばれるエリアです。
キャンベラは、ご存知の通り、オーストラリアの首都です。首都というと、東京やロンドンのような大都会を想像してしまいがちですが、キャンベラは、何もなかったところに街を造ったため、中心部はかなりコンパクトで周囲は豊かな自然に囲まれています。
何もない辺鄙なところに首都が造られたわけは、1901年に英国から独立し、連邦制が成立した際、シドニーとメルボルンで首都争奪争いがあったためです。結局、どちらも譲らず、平行線を辿っていたことから、その中間地点に新たに首都を造ることで決着しました。そのため、キャンベラは、シドニーとメルボルンを直線で結んだ中間地点あたりに位置しています。
また、キャンベラは「首都特別地域」として、どこの州にも属さない独自行政区となっていますが、周囲はニューサウスウェールズ州に囲まれており、地図で見ると、ニューサウスウェールズ州の中にいきなりポツンとある大きな街のような格好になっています。
ワイン産地「キャンベラ・ディストリクト」のワイナリーは、厳密には、州境を越えたニューサウスウェールズ州側に多く点在しています。その中心となるのは、キャンベラ市街地から車で30分ほどのところに位置するマルンベイトマンという小さな町。この町を中心に、現在、約140のブドウ畑と40を超えるワイナリーがあり、キャンベラから気軽に日帰りできることから人気が高まっています。
キャンベラ周辺がワイン産地として急成長してきた最大の理由は、その気候にあります。このあたりは、シドニーの南西約290kmと海からはだいぶ離れた内陸部に位置するため、夏場はグンと気温が上昇して30度を超える日が多くなり、乾燥していますが、冬場の夜間には0度以下になるほど冷え込みが厳しく、年間を通して朝晩の寒暖差が激しいのが特徴です。この寒暖差が大きいことが、ワイン用のブドウ生産に向いているのです。
また、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の州境に位置するオーストラリアン・アルプス山脈にも近く、高低差のある地形と清らかな水が豊富なことも、良質なワイン作りに欠かせない要素となっています。
このエリアでは、1840年代にはブドウ栽培が始まっていたそうですが、その後、衰退し、20世紀初頭まで放置されてきました。1970年代に入り、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の科学者たちが、このエリアの気候や自然環境に再着目し、土地の改良や栽培品種などが見直され、ワイン生産を念頭に本格的なテコ入れをした結果、ブドウ畑が復活し、その後の約50年間で良質なワインを生産できるまでになったそうです。
気軽に行ける近場のワイン産地であることに加え、世界各国の大使館が集中する首都キャンベラは、食のレベルも高く、中心部の高級レストランのワインリストにもローカル産ワインが増えてきていることから、さらに注目が集まっているようです。
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