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「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー

0212021.10.05UPコロナ禍の観光客減によるグレート・バリア・リーフへの影響-地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-

 昨年から1年半以上に渡って続いている新型コロナウイルスによる世界的パンデミックにより、オーストラリアは昨年3月以降、海外からの渡航者を制限し、一般観光客の入国ができない状態にあります。
 観光は、オーストラリアにとって重要な経済基盤であり、なかでも海外からの観光客に人気であった観光地は、とくに苦戦を強いられています。コロナ禍の現状は、観光業界にとって計り知れないダメージがあると思いますが、その一方で、観光客が減ったことで自然が回復した…といったような報告が世界各地から聞こえてきます。

 そんななか、オーストラリアを代表する世界遺産であり、世界中から大勢の観光客が訪れていた世界最大のサンゴ礁「グレート・バリア・リーフ」は、今、どうなっているでしょうか?

モア・リーフはケアンズから日帰り可能なアウター・リーフのひとつ ©Masahiro Hirano / TTNQ

モア・リーフはケアンズから日帰り可能なアウター・リーフのひとつ ©Masahiro Hirano / TTNQ

カラフルなサンゴがストレスを受けると白化現象を起こす ©Tourism and Events Queensland

カラフルなサンゴがストレスを受けると白化現象を起こす ©Tourism and Events Queensland


グレート・バリア・リーフの観光は今どうなっている?

 国境が閉鎖された状態のため、これまでのように海外からの観光客が大勢訪れるような状況ではないものの、オーストラリア国内の観光客が訪れており、便数は減っていますが、リーフへのクルーズ船も毎日運航されています。今年の5月にグレート・バリア・リーフを再訪しましたが、想像していた以上に賑わっていました。(現在は、シドニーとメルボルンといった二大都市がロックダウン中のため、訪問者数は減少していると思います)

 クルーズ船の運航便数が減り、訪問者が少なくなることで、環境への好影響は少なからずあるのではないかと思いますが、陸地からかなり離れたリーフにも小さなプラスチックやビニールの破片が漂ったりしているのを見てしまうと、わずか1年半くらいで状況が劇的に変わるものではないのだと実感せざるを得ませんでした。

ケアンズから出航するアウター・リーフ・クルーズ ©Masahiro Hirano / TTNQ

ケアンズから出航するアウター・リーフ・クルーズ ©Masahiro Hirano / TTNQ

アウター・リーフではポンツーンと呼ばれる人口浮島に船を横づけする ©Masahiro Hirano / TTNQ

アウター・リーフではポンツーンと呼ばれる人口浮島に船を横づけする ©Masahiro Hirano / TTNQ

ランチはポンツーンでとり、すべてのゴミは陸地へ持ち帰る ©Masahiro Hirano / TTNQ

ランチはポンツーンでとり、すべてのゴミは陸地へ持ち帰る ©Masahiro Hirano / TTNQ


世界最大のサンゴ礁の白化現象は深刻なのか?

グレート・バリア・リーフ南部のサンゴ礁群 ©Tourism and Events Queensland

グレート・バリア・リーフ南部のサンゴ礁群 ©Tourism and Events Queensland

 世界遺産でもあるグレート・バリア・リーフですが、近年、広域に渡って白化現象が進んでいると懸念されています。世界中のメディアも「2016年と2017年にグレート・バリア・リーフで大規模な広域白化現象が起き、サンゴ礁は死にかけている」といった内容の報道をし、「危機に面している遺産」として登録するべきだという声があがっています。
 これに対し、オーストラリア政府は、保護と管理を徹底しているとして反対しているため、今のところ「危機に面している遺産」への登録は避けられていますが、実際のところ、サンゴ礁の状態はどうなのでしょうか?

 クルーズ船のサンゴ礁をガイドする半潜水艇船長によると、白化現象はこれまでも定期的に起こっているので、危機的状況かといえば、そうでもないというのです。サンゴは生き物であるため、環境からのストレスによって白化します。白化現象が長く続くとサンゴは死んでしまいますが、環境がまた元のような状態に戻ると、サンゴは回復するのだそうです。

 今回、ケアンズ沖のモア・リーフの半潜水艇に乗船し、2016年に大規模な白化現象を起こしたというサンゴ群を観察したところ、白化した状態がまだ残るサンゴの一群の中に色が戻りつつあるサンゴも見られ、そのことを自分の目で確かめることができました。

 こうした話は、同じく大規模な白化現象が起きたグレート・バリア・リーフの南端にあるレディエリオット島からも聞こえてきます。島の責任者ピーターさんによると、1月(夏)に白化現象が起きたサンゴ群を観察、調査し続けていたところ、絶望的とさえ思えた時点から1ヶ月と経たないうちに、信じられないほど回復し、2ヶ月後にはどこで白化現象が起きていたのかわからないほどになっていたそうです。


ポンツーンから出航する半潜水艇 ©Masahiro Hirano / TTNQ

ポンツーンから出航する半潜水艇 ©Masahiro Hirano / TTNQ

レディエリオット島はウミガメの産卵地としても知られる ©Tourism and Events Queensland

レディエリオット島はウミガメの産卵地としても知られる
©Tourism and Events Queensland


観光と環境保護のあり方を再認識する

 観光客が大勢訪れることは、サンゴにとってストレスであるから、観光を止めて保護に徹するべきであるという意見が一部にあります。たしかに、それがサンゴ礁の保護にとって一番いいことのように思えますが、そうとも言い切れない側面もあります。それは、保護活動の資金を観光客がもたらしてくれるからです。

 レディエリオット島のピーターさん曰く、「観光がグレート・バリア・リーフの保護に役立つ。観光から得る財源がなければ、我々の保護活動は続けられない。人々はお金を払って環境保護に貢献していることになるのです」。

 レディエリオット島は、周囲のサンゴ礁を守るために、島に木を植え、森をつくってきました。これは、森にやってくる鳥やそこに棲む生き物たちの排泄物が土壌に染み込み、海へと流れだすことでサンゴの養分となることを目的としています。
 島では、コロナ禍で観光客が来られなくなった一時期を利用して、環境に配慮したエコキャビンの建設を進めるとともに、森の状態をさらによくするために、植林に力を入れたそうです。島の周囲に20年前よりもはるかに多くの魚が生息しているのは、観光客からの収入によって、サンゴ礁の保護や島の生態系を維持するための緑化ができたおかげなのだと、ピーターさんは言います。
 こうしたレディエリオット島の活動は、海で起きている出来事を『海』だけのことととらえずに、陸地から海へと繋がる地球上の生態系のバランスを考えることの重要性を再認識させてくれるものです。

 気候変動はもちろん、人為的な活動の影響から、サンゴ礁がストレスを受けていることは疑いようのない事実ですが、自然の力は想像を超えていました。私たちはもう一度、地球上の生態系の繋がりを認識し、維持していくために、何ができるかを考えていく必要がありそうです。

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バックナンバー

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  2. 002「自然環境を大きく変えるグレートディヴァイディング山脈」 -ニューサウスウェールズ州-
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