「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
前回のコラムで、豪雨によるオーストラリア南東部の洪水被害についてご紹介しましたが、その後も引き続きオーストラリア各地で豪雨による被害が発生しています。しかし、今年の豪雨被害は、過去のものとは様相が異なります。これまでは、大量に雨が降って被害が出るのは主に大陸の東部に当たる地域の海沿いのエリアばかりでした。しかし、現在、大きな被害が出ているのは内陸部です。
オーストラリアの内陸部は、年間降雨量が平均500mm以下の乾燥した土地。このように、極端に降雨量が少ない砂漠のような地域が面積の大半を占めているため、オーストラリアは「地球上で最も乾燥した大陸」と言われているほどです。その内陸部に大量の雨が降り、町が水没するほどの被害が出ているのです。
通常、オーストラリアにおける降雨は、主に東側を中心とした大陸沿岸部に集中しています。東側に雨が多く降るのは、以前のコラムでご紹介したグレートディバイディング山脈(大分水嶺山脈)と関係しています(002 自然環境を大きく変えるグレートディヴァイディング山脈)。海からやってくる湿った空気は、全長約3,700kmに及ぶこの山脈にぶつかり、雨を降らせます。
ところが、山脈を超えると途端に乾燥した砂漠のような気候に変化します。雨を降らせる湿った空気がこの山脈を超えることができないためです。つまり、海側の地域に雨を降らせてしまった後、内陸部にまで雨を降らせる湿った空気が届かないことが、極端に降雨量が少なくなってしまう一因なのです。
内陸部に大量の雨が降ると、普段は乾燥して干上がっていた湖や川が出現します。さらに、グレートディバイディング山脈の頂上付近を水源とする主要河川に大量の雨水が流れ込むことで、支流の川の水は一気に飽和状態となり、氾濫します。
これが、現在、内陸部で起きている、町が水没するほどの大洪水の一因となっています。一時は、主要道路が冠水して通行不能になるなど、人々の避難もスムーズにできない状況が続きました。
内陸部の広範囲で洪水が発生していることにより、大陸の東部と西部を結ぶ交通網に多大な影響が出ています。現在、最も影響を受けているのが鉄道です。普段は乾燥した土地に大量の雨水が流れ込んだことで線路が冠水、線路そのものの位置がずれたり、枕木が流されるなどの被害が発生しました。その結果、ビクトリア州ジーロング付近では貨物列車の脱線事故が起きるなど深刻な被害が生じて、未だに復旧作業の真っ最中です。
オーストラリアでは東西を結ぶ鉄道は、人々の移動手段として使われるというよりも主に物資の輸送手段となっているため、クリスマス・シーズンを前にスーパーの棚から食品が消えるのではないかと懸念されています。
また、東西を結ぶ唯一の定期列車である「インディアン・パシフィック号」の運行にも影響が出ています。「インディアン・パシフィック号」は、大陸横断鉄道として知られる豪華寝台列車ですが、内陸部で発生した洪水被害により、通常ルート上の線路が使えなくなっており、急遽、ルートを変更して運行するなどの対応に追われているそうです。
「地球上で最も乾燥した大陸」と言われる所以となっている広大な砂漠地帯を抱える内陸部を襲った洪水で、東西が分断される事態となっているオーストラリア。こうした異常気象が、大陸そのものの環境を大きく変えてしまうのかもしれません。
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