「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
1968年と1974年に、オーストラリア内陸部で、4万年以上前の先住民アボリジニの遺骨が発見されました。また、2005年には、同じ地域内で約2万年前のものと見られる人類の足跡が大量に発見され、世界を驚かせました。
オーストラリア及び人類の歴史上、極めて重要なこれらの発見があったのは、ニュー・サウス・ウェールズ州西部のマンゴ国立公園。4万年以上前の遺骨は、女性と男性であったことから、この地名を取って、それぞれ、『マンゴ・レディー』『マンゴ・マン』と呼ばれています。
マンゴ・レディーは、火葬された人類最古の女性として、マンゴ・マンには、岩石を原料とする顔料のオカーなどを使って丁重に葬られた様子が残っており、人類史上、最初期の洗練された埋葬儀式を見ることができる貴重な発見となったといわれています。
このマンゴ国立公園は、『ウィランドラ湖群地域』という名称で、世界遺産の一部として登録されています。しかし、このエリアには、湖どころか、川や沼のように水を湛えた場所は一切なく、現在は、乾燥した砂漠地帯…。『湖群』と名の付くほどの湖は、すっかり消え去ってしまいました。
しかし、この消えた湖が、オーストラリア最古とみられる現生人類の化石や、その後、発見された約2万年前の人類の足跡を良好な状態で保存していた鍵となったのです。
ニュー・サウス・ウェールズ州西部にあるマンゴ国立公園は、シドニーの西約850kmのところに位置し、周囲は乾燥した砂漠地帯です。
この辺り一帯は、その昔、豊かな水を湛える湖が点在していました。湖の周りには、緑が広がり、様々な生き物たちが生息し、食料も確保しやすかったため、人類もまた、こうした豊かな水の恩恵にあずかろうと、この地へやってきたのでしょう。
しかし、その後、オーストラリアの内陸部は、気候変動によって豊かな水は蒸発し、どんどんと乾燥化していきました。現在のマンゴ国立公園は、太古の湖の湖底が剥き出しになった状態を目の当たりにしているのだそうです。
このエリアでは、遺骨や足跡のほかに、大型有袋類の化石なども発見されていますが、最も興味深いのは、これらの化石と共に、人類がオーストラリア大陸で生活し始めた4万5000年?6万年前の太古の時代を知る上で、貴重な手がかりがいくつも見つかっていることです。
中でも、オーストラリア最古とされる足跡の化石は、その数457個にものぼり、1ヶ所から見つかったものとしては最多かつ世界最大規模。足跡は、子どもと見られる13cm程度のものから、大きなものでは靴のサイズにすると30cmくらいのものまであり、推定身長約2mの人が時速20km程度で走ったとみられる形跡がくっきりと残っているそうです。他にも、エミューやカンガルーの足跡、やりが突き刺さった跡なども残っており、当時の狩猟生活の様子がうかがえる貴重な化石となっています。
現地の地盤は、もともと湖だったところが干上がって砂漠化した土地です。実際にマンゴ国立公園に行ってみると、33kmにも渡って、砂丘のように大量の砂が積もっていることに気が付きます。これは、乾燥して風化した地面や岩などが削られて砂となり、その昔、湖であった窪んだ場所に堆積したため。
この地で暮らした先住民の足跡がつけられた当時は、粘土質のぬかるみも多かったとみられ、炭酸カルシウムを含んだ粘土質の地盤に残された足跡が、ちょうど足型をとったように固く乾燥し、その上から砂が堆積して覆い隠してしまったため、極めて良好な保存状態で残っていたのだそうです。
今となっては、民家など一軒もない乾燥した砂漠地帯が、その昔は、豊かな水と緑のある最適な生活環境であったということを示すマンゴ国立公園。地球の環境が変わってしまうことにより、人や動物の暮らしは、これほどまでにあっけなく、激変してしまうのだということを実感できる場所でもあります。
今から40年近く前にシドニーに駐在していました。
1980年のChristmas休暇に、家族でAdelaideまで行きましたが20号線ですからMilduraを通りました。 その時には、マンゴ公園のことは全く存じませんでした。 知っていれば、是非とも訪れたかったですね。 NSWには他にも、十数年前からの大量の化石が出土する地域もあり、できればもう一度車でOutbackを車で移動してみたいと思いますが・・・。
数年前には定年となり、ようやくシドニーに行くことができました。 ただ、車の運転はもう難しいと思いますので、残念ですが都市部だけになりますかね。
(2020.10.30)
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